ワクワクドッキングライフ【聖なる俗っぽさ】141005
2014年10月05日 イロリムラプチホール (65分)
空間を魅せるという点ではとても興味深い作品。
一人の悲しき男の心の中に潜り込んで、そこにあった確かな想いを感じるような作品か。
叶うことの無かった男の想いに捧げる追悼歌のような悲しみと共に、そこから生み出される明日に希望を込めるような感じかな。
暗闇の中、懐中電灯を片手に人を探す少女。
暗闇から現れた女は、エロを求めて、逆に少女に救いを求める。
自分が購入した女子高生AVのDVD。見つけた母は、父が購入したものと、父を責める。かばってくれた父。でも、母は自分にエロが無いからなのかと逆上して父を刺し殺す。その後、収容された母も刑務所で自殺。エロさえあれば、あんなことには。
少女は、その時に降り立ち、母にエロを授けようとするが、力不足。
だって、私は、いや俺は男だから。と言っても、体は女。中学生の時には既に俺だった。小学生の時は、私だったような気も。
少女は小学生時代を回想する。悶々スターとかいう遊びで捕まり・・・
よく分からないうちに二幕が始まる。既に、ちょっと話についていけず唖然として、拒絶反応が起こり始めているが、30分後には、これまでの30分の謎が明かされると言ってるので、それを信じる。
舞台は戦場。
戦場料理人とやらいう男が、こんな状況だからこそか食料自給率の危機を熱く語る。
戦場で必要なスパイス。それは殺意と憎しみ。でも、師匠は愛だと言う。信じられないから暴行した上、殺して旅に出る。
途中、犬に出会ってバトルを繰り広げる。その肉を、なぜか生き返っている師匠と、生まれてきた娘に与える。
この子は、自分が愛無しに育てる。殺意と憎しみが生み出した死者の肉を喰らわせながら。やがて、言葉を覚え始めても、愛は言葉としても語らせない。代わりに哀川翔だけを覚えさせる。
それから10年後、再び出会う犬と対決。しかし、娘はその犬から愛らしきものを感じ始める。男は犬を殺し、娘を責め立てる。娘は逃げ出し、行方をくらます。
それからさらに数年後、戦場の中で泥水を飲み、苦しみながら死の迎えがやって来た男が夢を見ている。
娘は、犬との間に子をもうける。その姿は師匠だ。男にとっては初孫であり、その孫の弟子になる。
そんな起こりえなかった夢の中、男は命尽きる。
ラストの10分で、この繋がりそうも無い話を、何か分からないけどまとめて終える。
孫の女が暗闇で現れたエロを求める女。その生まれなかった妹。この妹が冒頭の少女になるみたい。
最後に、起こりえなかった夢の続き、全ては虚構の妄想世界で、少女が私から俺へと変わる瞬間を映し出す。
戦場。食らって生き抜くために、殺意と憎しみを肯定し、愛を否定する男。
でも、その先にはこの世界の危機が消えて、平穏な日々が訪れることへの想いも感じられる。
愛を否定しながら、愛に執着し、愛を渇望しながら生きた悲しい男の物語か。
全ては無かった世界の虚構であり、彼が生み出すことの出来なかった世界を、その死の哀悼のように映し出す。
そこには、自分の意志で、自分の道を切り開くことが出来る、そして、それを受け入れる人たちがいる愛ある世界。
戦場に息づく命。一瞬の輝きを見せて、彷徨うように消えていく光。
息を潜めたその呼吸は、やがて世界の中に拡がっていく。
照明に役者さん方が自分で持つ懐中電灯を使い、白い壁に映し出される影は、コンテンポラリーダンスを見ているかのような独特の空間を生み出す。
ただ、その懐中電灯を好きなように振り回すので、光が目に入り、ちょっと酔って気分が悪くなる。
あと、一人の役者さんが、舞台中央に座りこんで陣取り照明役をされる。美しい照明効果を生み出すのは分かるのだが、舞台を観る点では、完全に邪魔。同一の高さになる桟敷席などでは、その後ろが完全にデッドスペースになることも考慮しての演出なのだろうか。
薄暗さの中に渦巻く人の感情が空間として感じられる興味深い作品ではあったが、それを観る人がいるということへの考えは足りないように感じた。
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