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2014年10月 5日 (日)

プラスチック爆弾とシュレディンガーの猫【オリゴ党】141004

2014年10月04日 カフェ+ギャラリー can tutku (40分、40分、休憩10分、40分)

あるカフェでお茶をする男女の話を聞きながらの、3つのオムニバス。
難解です。
何かはよく分かりませんが、相反する感情を共存させて持つ人の姿が描かれているように感じます。
その姿は恐怖を伴う不気味さを感じさせ、自分とは遠い世界にも思えますが、実は、自分にもそんな感覚はあることも突き付けられる感じです。
不安を煽りながらも、なぜか最後はそんな人の怖いところを認めてしまうような不思議な感覚の作品でした。

<以下、若干ネタバレしますが、許容範囲と判断して、白字にはしていませんのでご注意願います。公演は本日、日曜日まで>

たまに芝居なんかもしているちょっとシャレたカフェにやって来た男女2人。
付き合っているような付き合っていないような。互いに男女として好き同士のような、まあ性別関係なしの友達のような。
公演名から何となく浮かぶキーワードは可塑性と不確かな確率みたいな感じか。
これから、ここで語られる二人の会話と過ごす時間が、このあいまいな二人の関係に何らかの答えを生み出してくれるのだろう。
そんなことを思いながら、観始める。
この劇団が難解なのは、これまでの経験からよく知っているので、また私を苦しめるのだろうと鼻からちょっと斜に構えている自分。
このカフェは最近、よく観劇に訪れており、場所に難はあるものの、居心地の良さはお気に入り。でも、今日は、そんなこともあって、何か重苦しい。
何も分からなかったらどうしよう。試験前の緊張にも似た感覚。そして、その予感は、この後に現実のものとなる。

芝居が話題にになったためか、この近くに住む女性作家の話。

<髪を切った姉妹は無意識のように恐ろしい>
机とパソコン、プリンターぐらいしか無い寂しい部屋で脚本を執筆する女性。
電話が鳴るが、取るとすぐ切れる。しばらく、続いているらしい。
スランプなのか、不機嫌そうにタバコに火をつける。
とりあえずプリンターで打ち出した脚本は、今の女性の姿そのものが描かれている。
妹が戻って来る。読まされるが、いまひとつの様子。
月に監禁された女の話。これから宇宙人も登場するのだとか。
二人は、そんな会話をしながら・・・

妹が電話の犯人ということなのかな。
何があったのかは分からないが、姉妹は憎しみ合っている様子。
見かけは、ごく普通の姉妹。どちらかと言うと仲良し姉妹って感じだろう。でも、そこに憎悪が存在する。
地球の傍にはいつも月がある。その月の満ち欠けや映し出される兎の模様などは、これまでずっと人の心に癒しに似た感情を抱かせてきたように思う。
地球と月は仲良し。でも、月はいつも地球に片側しか見せていない。その裏側では地球を滅ぼしてやるぐらいの憎悪に満ちたことが実は行われていたら。でも、そんなことは分からない。見えないから。
もし、宇宙人がいて、そんな事実を地球の人に伝えられたらどうなるだろう。
知らない方がいいこともある。それで関係は成立しているのだから。
姉妹が仲良しなのか憎しみ合っているのか。そんなことが、姉の脚本化された話で明確に結論づけられてしまいそうな気がする。登場する宇宙人がそんな結果を導き出しそう。だからなのか、妹は宇宙人は登場させない方がいいと言い残してその場を去る。
二人の心の中を、今、開けてしまう必要は無い。それはこれからの二人の時間の中で変化することだし、友好と憎悪が共存した関係でも人間関係は成立しているから。

このカフェの上階は空きスペースになっており、芝居の稽古場になっているらしい。
そんな稽古場で起こった話。

<革命の昼と夜と真夜中>
昼。稽古場と偽って、カフェの3階の空きスペースで例会を開く貴族。
と言っても、賃貸に住んだり、元カレは西成で肉体労働をしていたりと、プライドだけの名ばかりみたいだが。
空母のプラモデルに夢中のコノエは、貴族社会への革命を熱く、ちょっとウザく語る。
それに同意するクジョウは、新たな同士として、タカツカサを連れて来る。
夜。戦艦
のプラモデルを購入して戻って来るコノエ。部屋にはシブサワという女性がいる。
タカツカサが部屋にナイフを片手に侵入してきて、コノエを狙うが、シブサワが止めに入る。
タカツカサの目指す革命は、共産主義で二人とは異にしている。
しかし、もう革命は成就されていると宣言するシブサワ。
真夜中。空母のプラモデルは感性に近づく。偽物を作り上げようとしているコノエ。
その姿は、もはや本当の言葉で語り合えなくなった妻であるクジョウとの接し方にも通じているよう。
シブサワはクジョウを刺す。クジョウは傷ついた体で、空母のプラモデルのひとかけらを手にして部屋を去る。
部屋に戻って来たコノエはその無くなったかけらを必死に探している・・・

とりあえず、記憶に残っている限りの起こったことを書き留めてみました。
五摂家の名前が出てきていることぐらいは分かるが、何かその歴史的な事実を知らないとダメなのかなあ。ちょっと漫画ネタも入っているようだったが、よく分からず。
友好と憎悪みたいに、本物と偽物が共存した世界を表現しているのでしょうか。
何かのメタファーかなあ。コノエ:建設、タカツカサ:破壊、クジョウ:現実、シブサワ:理想みたいにとらえると、何となく、改革のために今の社会を破壊しようとしているタカツカサが、無意味なものを作ろうとしているコノエに対して、これから理想の社会へと進み何もかも変わると信じるシブサワが、今の変わらぬ現実を見詰めるクジョウに対して敵対行動を示した事実だけは理解出来るような気がします。
そんなことが一人の人間の頭の中として描かれているような感じもします。
ただ、はっきりしているのは、結局、何も生み出しはしていない。
その本物の姿は分からないが、それでも、心に描いた偽物をプラモデルとして作ろうとしても、それすら、ひとかけら無いだけでパニックになっている。本物はどうなのかは分からないのだから、どうでもよさそうだが、自分の描いた本物に囚われてしまうのかなあ。

おなかがすいてきた。パンでも食べるか。山奥にある有名なパン屋の話。

<おじさんのジャム>
ある山奥のパン屋。
そのパン屋に、先輩の紹介でバイトとして働いた女性が振り返るように語る。
そこでは、一人の男が経営者兼プランジェとして働いている。車イスの妻、先輩、ちょっと風変わりの今風の若い女性。
男はパン作りに熱意など到底なさそうないい加減そうな風貌だが、なぜかその作るパンはおいしく、人を虜にする。
こねるパン生地に練り込められる男のエキス、男の認められたいという執着した想いと共に煮詰められるジャム。
男を我がものにしたいという女性たちの嫉妬が渦巻く中、いつしか、男は女たちの独占欲を満たすために共有して支配されるだけの存在に・・・

何か世紀末で、子孫繁栄のため、種を搾り取るだけの道具になった男と、それに群がる女の恐しさが浮き上がる話。
ラストはバイトの子の手に残るジャム瓶。彼女は、バイト中はパンもジャムも食さず、あの女たちの仲間になることはありませんでしたが、そのジャム瓶を手にした今、その誘惑に勝てるのでしょうか。男を支配するかのようで、何かに支配されてしまっているような状態。
どうなるかは、そのジャム瓶を開けなくては分からない。
気味悪い話です。

そんな3つの話を女性から聞き終えて、男はカフェを去る。席に残った女性の手には男への誕生日プレゼントが・・・

ほんわかしたラストのようにも感じられるのですが、何で渡さなかったのかも気になるところです。
女性はけっこう威勢よく、明るく冗談交じりに渡せそうな感じであったのですが、その表向きの姿とは別に繊細な一面があったということでしょうか。
自分にも裏の顔があって、その顔の目はいつもあなたを見ているんだけどみたいなことを、漠然と分からすためにこんな話をしたのかなあ。
キュンとしてしまいそうな感じですが、どうも、3つの話を聞いた後ではその感覚はあまりありません。
むしろ、裏って怖い。見えないし、その裏が見えて初めて分かるし、それだったら裏の存在を知りながらも、見えているところだけを見ていたいような気がします。
どうも、こうして感想を書いていて思ったのですが、共通して女性の恐ろしさが描かれているのではないでしょうか。
憎悪や情熱的な愛を心に抱きながらも、それを表には出さずに平然としている女性。心を開いてみないと分からないというシュレディンガーの猫や、環境によって目まぐるしく変わってしまう可塑性を持った心といったところでしょうかね。
色々、考えると公演名に騙されているような感もあり、プラスチックやシュレディンガーという言葉に目がいきましたが、もしかしたら、爆発する怖さやいつもすました表情でいて何を考えているのか分からないといった爆弾と猫が重要なポイントだったのかもしれません。

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