月刊彗星マジック10月号「ヒーロー:保険編&引退編」【彗星マジック】141014
2014年10月14日 インディペンデントシアター1st (30分+35分)
先月に引き続き、観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/303-585f.html)
これ、本当にいいですわ。
先月以上に。
作品の世界が拡がった。そこに、ヒーローの熱さだけでなく、優しい想いがあって、とても素敵。
最高でした。
ただ、うっかりしていました。最前列の入り口側の席は座ってはいけないことを。先月は、多分、そうなるだろうと思って、逆側の最前列に座ったのですが、すっかり忘れていました。
このシリーズを観ている方は分かると思いますが、「説明しよう」の言葉とともに役者さんが思いっきり目の前に現れて、異常なほどの圧迫を受けます。顔をマジマジ見るのも何だし、背けるのも何だしで、どこに視線を持っていけばいいかドキドキしてしまいますから。
来月は考えて座ろう。
・保険編
少々変わった試験官の理不尽で横暴な仕打ちにこらえて、見事、壊滅災害保険官に合格した陽菜。保険官は、壊滅災害によって被害にあった人に対して国から補償される保険金の査定を行う。かつて、壊滅災害が原因で両親を失っており、そんな自分のような被害にあった人を助けられればと強い意志を持って仕事に励む。
今日は、特別任務補佐官のオメガ子を連れて、現場検証。
先日、現れた壊滅災害により、家を潰された男の保険金の査定を行う。男は柄悪く、行き場の無い怒りを二人にぶつけてくる。陽菜は、さすがは保険官で冷静沈着な対応だが、オメガ子は男に負けぬ柄の悪さで反撃するので、悪い空気が漂う。
そこにヒーロー、ゴディバンが現れる。難しい試験を受けて、ヒーローとなった特別任務官ではない。ただのおじさん。容易に想像できる某お菓子メーカーをスポンサーとして、勝手に個人で活躍している。先日の壊滅災害との戦いの状況を保険官に説明する。必殺技、コンソメパンチで弱々しい壊滅災害を叩きのめし倒す。壊滅災害が倒れた、その場所が不幸にも男の家だったらしい。
それでは、保険金はおりません。保険金はあくまで、壊滅災害による被害に対して支払われるもので、この場合は、ゴディバンの過失。男とゴディバンの間で裁判を行うか、示談にするかという話で、国は一切関係しません。そう、冷たく言い放つ保険官に、男は怒り心頭。いや、どうやら、怒っている相手はゴディバンの様子。話が違うじゃないか。男は、正体を現し・・・
まあ、ゴディバンと男はグルだったという話です。保険金詐欺の。
でも、理由もあって、男も実は壊滅災害。でも、地球に害を及ぼすほどの力は無いし、その気も無い。ひっそりと暮らしたいだけなのだが、国は壊滅災害であれば、収容所に入れてしまう。それが怖くて、こんなことをしたということみたいです。
自暴自棄になった男の一撃をくらって気を失うゴディバン。助けを求めに行くオメガ子。そんな間に、実は特別任務官でもあった陽菜が男を倒します。男は収容所行きでしょうが、陽菜は、そんなに悪い生活では無いと男に声をかけ、ゴディバンのことも目をつむります。
ゴディバンは必要悪ってところでしょうかね。みんながみんな、悪を倒すだけのヒーローだったら、実は世の中、良くはならない。戦いが続くだけだから。悪を倒すのではなく、こうして逃げ場を与えるように抑える、ちょっと汚いヒーローも大事なのかもしれません。
何が正義で、何が悪なのか。ヒーローは正義なので善で、褒め称えられるもの。壊滅災害は悪者なので悪で、駆逐されるもの。そんな考えだけで、やり合っていたら、世に無数といる壊滅災害がいる限り、永遠に戦い合うという悲しい現実が待ち構えているでしょう。
だから、悪を倒すのではなく、悪を受け止めて、悪で無くしてあげられるヒーロー。これが本当の正義なのかもしれません。
実はこのヒーロー、特別任務官は、国が壊滅災害を倒すために設置された職ですが、その本当の精神は、初代特別任務官により、正義も悪も無い、本当にみんなが幸せに過ごせる世を目指したものだったようです。きっと、そんな心は、時代と共に形は変われど今も引き継がれているのでしょう。そんな話が、次の編になります。
・引退編
壊滅災害対策組織本部。
ここはちょっとおかしい人がお偉くなるのか、また少々変わった人の司会で、ある特別任務官の引退式が催される。
初代特別任務官、御国寵児。ところが、いつまでたっても、姿を見せない。
どこへ行ったのか。これからヒーローとなって頑張るつもりの、孫である御国偉人が、場をつなぐように、集まった人たちに祖父である御国寵児のことを語り始める。
寵児は、幼馴染の勇気と一緒に公務員となる。線も細く、戦うなどとは縁遠い、人の好さそうな寵児。
ある時、みんなでスキー場に行った時。運動神経もあまり良くないのか、滑れずオドオドしている寵児は、同じように滑れずに困っているアルファ子という女性と出会う。
二人は赤い糸で結ばれていたのか、東京で再会。
ところが、その東京で壊滅災害が現れた。巨大な壊滅災害に自衛隊も米軍も爆撃を繰り返すが手も足も出ない。最終手段として、あの恐ろしい爆弾を東京に投下する決断が下される。
寵児は防災の仕事をしていたので、最後まで現場に残っていた。アルファ子もまた、自分に出来ることを何とかしたいと救助活動をしていたため、現場に取り残された状態に。
壊滅災害が二人に襲い掛かる。寵児は、愛する人を守りたい一心で、壊滅災害に素手で対抗。あれだけ、爆撃を繰り返しても、平気だった壊滅災害を倒してしまう。
これが国に認められて、寵児は壊滅災害と戦うための仕事をすることに。しかし、みんなの期待を背負うプレッシャーから精神的に病んでしまう。それに、あの日から、忙しすぎて、アルファ子とも会っていない。
寵児は、心知れた幼馴染の勇気と共に、アルファ子の故郷である群馬に足を運ぶ。久しぶりの再会に、一時の安らぎを得る寵児。さらに、アルファ子は勇気の取り計らいで、寵児の仕事を補佐する部署への就職を決めていた。アルファ子を危険な目に合わせたくないので反対する寵児だったが、彼女は寵児の傍にいたいと同時に、平和な世のために自分が出来ることをしたいという強い意志を持っていることを知る。
これで、全てがうまくいくように思われたが、世間は恋人同士の二人が同じ部署で働くことに対して反発。税金泥棒とののしられる。そんな、世間の中傷に寵児は何も言い返さない。この時、寵児はアルファ子の平和への想いに触発されていたのか、自分もこの世のために出来ることをする覚悟を抱いていたようだ。
壊滅災害が再び現れる。見た目は人間の姿をしており、悪そうには見えない。
戦おうとする寵児。しかし、勇気はまず自分に行かせてくれと言う。勇気は、話し合えば何とかなると考えていた。悪者なんていない。きっと、話し合えば、壊滅災害も分かってくれる。これが彼のポリシーだった。
ところが、勇気は、壊滅災害に殺されてしまう。
寵児は、彼の真摯な想いを胸に壊滅災害へと向き合い・・・
この後、寵児は壊滅災害を捕獲します。そして、壊滅災害の正体を聞き出します。宇宙の犯罪人らしく、それが収容所から逃げ出して地球にやって来ていることを。
その数は膨大で、これからも無数の壊滅災害が地球にやって来ることが分かりました。寵児は、そんな壊滅災害から地球を救うために、ヒーローとなることを決意します。特別任務官の誕生です。そのためには、恋人も家族も持つことは出来ません。だから、アルファ子とも、これでお別れ。アルファ子は、それなら自分は、そんなヒーローを補佐する仕事をする。特別任務補佐官もこの時、生まれました。今は娘のオメガ子に引き継がれたようですが。
それから、今日の引退するまでの間、寵児は数々の壊滅災害と戦ってきました。でも、それは決して憎しみを伴うものではありませんでした。壊滅災害を倒すのではなく、受け止め、改心させることの大切さを身をもって教えてくれた勇気の想いを引き継ぐように、ただただ、懸命に日々を過ごしたようです。
勇気の死、寵児のこれまでは、決して無駄では無かったようです。だって、こうして、彼の偉業を語り、これから自らも祖父のように平和のために精一杯頑張りますと頼もしい言葉を発する御国偉人こそ、あの時、勇気を死に至らせ、寵児によって捕獲された壊滅災害なのですから。
誰もが武力で抑えるべきだと考えた壊滅災害に心のこもった素手の攻撃を加えた寵児、誰もが倒すべきと考えていた壊滅災害と分かり合おうとした勇気、そしてその心を理解して行動に移しやり続けた寵児、それを補佐し続けたアルファ子。誰もがしなかったことを、ずっと頑張り続けた。彼らこそ、真のヒーローであり、その精神はきっとこれからも引き継がれるのでしょう。
そして、肝心の寵児は、まだまだヒーローであり続けるつもりのようです。宇宙に行って、壊滅災害の源に身を投じようと思っているみたいです。壊滅災害が地球にやって来て悪となる前に、悪が生まれる前に、何かをしようと思っているのでしょうか。何か教育みたいな感じですね。きっといつの日か、壊滅災害のように悲しい悪が無くなる日がくることへの希望を抱かせる素敵なラストでした。
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コメント
ご来場ありがとうございました!!
そして、
本当に明解な感想ブログ、
いつもありがとうございます!
いよいよ来月は月刊彗星マジック「ヒーロー」シリーズの最終回です!
ご来場お待ちしております!
投稿: 小永井コーキ(彗星マジック) | 2014年10月15日 (水) 23時40分
>小永井コーキさん
コメントありがとうございます。
両極端の役でしたね。
・・・でもないか。形違えど、いがみ合いを嫌う人だったから。
引退編は、なかなか泣かせる。
来月も観に伺いたいですね。
一日しかないので、仕事が入らないか心配で仕方ないです。
来月もご活躍を。
投稿: SAISEI | 2014年10月16日 (木) 11時49分