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2014年10月11日 (土)

恋愛戯曲【こみかさ】141010

2014年10月10日 KAIKA (145分)

まあ、よく出来ている作品です。
複雑な多重世界で、各々、切り替えて演じる役者さんの妙、そして、それをきちんと理解させる展開の見事さ。こんな作品をしっかり公演するということ自体に感動するような感じでしょうか。
ただ、どうも結局、何を伝えたいのかがはっきりしません。
恋愛の素敵なところと恐いところを、いくつかのパターンで学ぶような感じの話でしょうか。恋愛の勉強本みたいな感じですね。そう思えば、作品名とは一致しているとは思いますが・・・

感想や作品の考察は、以前に拝見した時のブログを参照。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post.html)
この時も、役者さんの力や、この複雑な構造の話を混乱しないように話を進める巧みさに感動したものですが、今回もばっちりでした。
先日、ある大学の卒業公演を拝見した時も鴻上作品でしたが、私は素人なのでよくは分かりませんが、この方の作品をきちんとするには、きっとしっかりとした実力を兼ね備えていないと大変なことになってしまうような気がします。
そういう意味では、そんな作品をきちんと創り上げることの出来る劇団と実力派役者たち、ここにありと宣言する旗揚げ公演にふさわしいものであるように感じます。
今度は、また違った作品やオリジナルなんかも観てみたいなと思わせますものね。
ただ、最近思うのですが、鴻上作品は、どうも、作品に込められたものが、あっさりとしか浮き上がらないようなところがありますね。深く観させないというのか、さらっと感情移入させて深入りさせないというか。観やすいので好みではあるのですが、最近、何か物足りなさも感じるようになってしまいました。
だから、作品自体には感動するのですが、話の内容よりも、演劇作品としての美しさみたいなものに心を動かされているのかもしれません。
この話も結局は、恋は理不尽、不条理。人がいればその数だけの恋愛がある。それどころか、同じ人でも、幾つかの恋愛をパラレルワールドみたいに繰り広げてしまうのかも。そして、恋愛を引き起こす原動力の愛はいつも唐突に生まれる。でも、それは時には人を傷つける凶器になる。
・・・みたいな、既に現実で経験して知っていることを、もう一度、この虚構の世界でおさらいする。それも多重構造の世界にして、どの世界に行ってもこの恋愛理論は変わらないことを証明するかのように。
恋愛って不思議。でも、素敵。そして、恐ろしくもある。そんなことを改めて納得するような話でしょうかね。

この作品の主人公でもある作家は、恋愛を捨て作家としてのプロ魂を見せる凛とした女、貞淑な人妻、高慢な人気作家と3様のお姿を拝見出来るわけです。この役は、お気に入りの女優さんがされるなら、色々と楽しめてお得ですね。
3つの世界は話の展開とともに交錯してきますが、それもそのはずで、結局は、どの世界の彼女も想像で創り出した彼女自身なのでしょう。そこに限界が出てきたから、経験の要素を加えていった。その結果、3つの世界は、経験がある現実の世界へと収束したような感じです。
名作を創って誰かの心に残りたいという気持ちと恋愛をして誰かの心に残りたいという気持ちが区別出来なくなったようなラストでしょうかね。恋愛は理不尽で不条理なものですが、同時に独占欲の出る勝手でわがままなものでもあるようです。名作のために、道具のように扱われた恋愛は、最後に自分こそが人の心を支配するとばかりに、復讐を企てた。人を弄んだりするのはそれもまた恋愛の一つの姿で良し。でも、恋愛自体を弄んだものには、然るべき罰をみたいに、恋愛自体にやり返される作家の姿のように最後は映りました。
名作のための手段としてしか恋愛を見れなかった作家。そんな恋愛に対する扱いを肯定し続けたその夫。恋愛を理屈としてしか考えられなかったプロデューサー。世間への反発心の同調や慰め合いを恋愛にすり替えているような強盗カップル。
恋愛はそんなもんじゃない。理由があって恋愛するんじゃない。そんなことを交錯する多重世界の中の自分たちと対峙することで、恋愛を知っていくような登場人物たちの姿。そして、その行き着く先は、恋愛の素晴らしさを知って、幸せへと導かれるのはあくまで劇中劇の虚構の世界であり、現実世界では、しかるべきタイミングでその恋愛と向き合わなかった者たちに、恋愛の素敵な一面ではなく、相反する苦しみを与えているようなブラック感が印象に残ります。

役者さん方に簡単にコメント。
作家、水月りまさん。上記した3様の変化はさすがの女優さん魂でしょうが、話の展開と共に、現実世界の作家にそんな虚構世界の彼女の姿が取り込まれて収束する感じを抱かせるところの方が見事だと思います。
プロデューサー、じゃこさん(劇団「紫」)。この方は現実世界の姿そのままで虚構世界を体験するような感じで、自分自身と対峙している感が一番強く出ます。作家の心の中を泳ぐみたいな感じで、そこから想いを深めていく。恋愛の正しき姿なのでしょうか。
夫、荒木輝さん(劇団月光斜)。一番目を惹く切り替えの巧さに、妙に説得力のある落ち着きながらも、熱のこもった語り。奥底で膨らんでいく想いが爆発しそうな感覚がラストに絶妙な繋がりを生み出しています。
強盗カップル女、木村さやかさん(桃色女剣劇団)。聞いたことのない劇団ですね。ネットで調べたら京都造形芸術大学の大衆演劇サークルなのだとか。さすがは、大衆演劇らしく、とにかく男が好きだという一本筋。今の自分にとって大切な人だから。恋愛の原点を可愛らしく描かれてます。
強盗カップル男、清水洲平さん(劇団『我楽多』)。豪快なバカ。と思ったら、ちょっと繊細なところもあり。不器用だから上手く自分の想いは伝えられない。直線的な感じですかね。このカップルは互いに、本気で一直線なので、幅が無い分、ちょっとしたことですぐにすれ違いそう。こんなカップルいるなあなんて思いながら、その純粋な可愛らしいカップルの姿に微笑む。

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