昨日、未来に行きまして。【スイス銀行】141018
2014年10月18日 十三Black Boxx (100分)
個性的なキャラ設定での魅力の醸し方や、掛け合いにより生み出される笑いなど、達人級のベテラン役者さんがお揃いなので、ほぼパーフェクトに楽しい舞台を作り上げられます。
話しても、一風変わったタイムマシンもので、想像のつかない展開を見せて楽しめます。
ただ、やはり最後がどうもしっくりきません。タイムマシンものは難しいなと思います。特に私のように理屈っぽく観てしまう者にとっては、なるほどなあといったバッチリきめたオチを求めたくなるので。
<以下、ネタバレしていますが、核心部分は突いていないので、許容範囲と判断して白字にしていませんので、ご注意願います。公演は月曜日まで>
申し訳なさそうにみんなのご機嫌をとっている作業服を着た男。
部屋に集められているのは、柄悪そうな男、ヤクザ風の男、スーツでビシっと決めたキャリアウーマンっぽい人、どこか影のある綺麗な女性。
みんな、もう帰ると言い出す中、部屋の中にある自販機から音が聞こえる。ジュースが勝手に落ちてきたのか。
ところが、自販機の扉が開き、中から二人の女性が。
可愛らしい服装だけどちょっとやばい感じのする女性と、その付き添いをしていたらしい事務的な感じの女性。
やばい感じの女性は、2005年の愛知万博に行ってきたとテンション高く話し出す。
タイムマシン。この自販機みたいなものがそうらしい。
その試乗をお願いするために、この人たちを騙して集めたようだ。
このやばい感じの女性は、男に貢いだ挙句、横領までして多額の借金を抱えている。
ヤクザ風の男はその見張り役。ヤクザでは無く弁護士らしいが、たまたまヤクザの仕事の依頼を受けてしまってから、すっかり裏専門となってしまったらしい。
柄悪そうな男は、ラーメン屋。自分が作るものはおいしいみたいな、自分よがりの経営を続けるものだから倒産しそうになっている。
スーツ姿の女性は、経営コンサルタント。と言っても、まだ資格も無く、ただいま勉強中。
影のある女性は、元オリンピックの水泳選手。かつて、ドーピング疑惑でメダルをはく奪され、話題になった人。
タイムマシンは、作業服を着た男の上司が開発した。ところが、その人はタイムマシンに乗って帰って来なくなってしまった。
会社をリストラにあってしまった彼は、その上司が作ったタイムマシンを持ち帰り、事務的な女性と一緒にビジネスをしようと考えているらしい。
タイムマシンを持っているので、当然、未来が分かる。女性は3か月後の未来に行ってみると、確かにタイムマシンビジネスをする会社がオープンしていた。でも、客が全然来ない状態。
どうにかしないといけない。そこで、ちゃんと儲けられる会社にするべく、今から対策を取ろうと、みんなが召集されたようだ。
何で、この人たちが。その答えは簡単。みんな、3か月後に、その会社の社員になる人たちだから。
人生に傷を持つ人たちだから、何かを変えたいと思って応募したのだろう。
信じられないという面々だが、事実はそうなのだという。それが証拠に3か月後から持ち帰った資料を見れば、みんなの経歴がきちんと書かれているし、おまけにみんなで記念撮影した写真まである。
経営計画は、値段設定は、ターゲットの客層は、法的な対応は、・・・
プレミアム感や安心感を植え付けるためにも値段は高めに設定した方がいい、会員制にしたら、法に触れてもそれまでに儲けて海外に高飛びすればいい、こんな人が過去に行って自分の人生を変えましたというPVを作れば・・・
色々なアイディアを出し合うが、本当にこんなビジネスが成り立つのか。
頑なに反対する者、人生を変えるチャンスだとノリ気になる者、ただ面白そうだからと興味本位な者などが議論を交わす中、30年後の未来から、このビジネスを何とかやり遂げて欲しいと進言しにやって来る者がタイムマシンから現れる。
その男は、・・・
面白い設定で、前半はビジネス論みたいな感じで、興味深く観ていて、ここからも、現れた男が何とも奇抜な設定で、話は盛り上がるのですが・・・
役者さんの掛け合いが、ベテランさんが揃っているので、卓越しており、それが見事に笑いへと変えられていきます。楽しく面白いという感想はもちろんなのですが、どうも、話としてはしっくりこない形で終わってしまいました。
タイムマシンものは、やはりオチの付け方が難しいですね。何か、尻つぼみで終わってしまった感じで、少々、消化不良って感じの残念な気持ちでした。
人生の分岐点。そんなポイントはきっと誰にでもあるのでしょう。でも、そこを変えてしまえば、今の自分はいなくなってしまう。どんなに今、不幸でもそれももったいないように思います。
ビジネスと同じで、じゃあ、そのポイントをどう変えるのかを明確に出来なければ、過去に行っても何の意味も無い。そのポイントに行って、明確なビジョンの下にやり直しを図ることが出来るならば、それはもう別に今すればいいんじゃないのといった、タイムパラドックスみたいなものが生じるような気がします。
あの時、ああしていればといったことも、それがどのような結果へと導かれるのかは分かるわけもなく、過去に行っても無駄。未来に行って、こうなるからと、今を変えれば、未来も変わるから、どうなるかは結局分からない。
タイムマシンビジネス自体が成立しないような気がします。
過去がどうであれ、切り開いた道の先が今で、今から切り開く道があらゆる未来に通じるならば、結局は人は今を生きるしかないんだろうなって感じでしょうかね。
話のラストは、結局、今を逆らわずに生きてみようとする姿で締められているように感じます。
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