Vector【VOGA】141019
2014年10月19日 京都・石清水八幡宮野外特設舞台 (140分)
みんな、言葉失くしているみたいだったなあ。
この美しい舞台、空気、幻想的な世界に、みんなで飲み込まれていくのがよく分かる。
そして、圧巻のラスト。心に沁みる素敵なラスト。
想い合う人の力の強さ。私たちが内に秘める大きな力が沸いて出てくるような感覚に心震わされる公演だった。
<以下、あらすじうんぬんの作品ではありませんが、ざっくりとすじを書いてしまっているので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、月曜日まで。お時間あるなら是非。野外なので、増席できて当日券も大丈夫だと聞いています。体感しておきたい公演です>
仏工を志す男とその妻。
ところが、男にいくら腕があっても、生まれなどの不条理な問題から、なかなか雇ってはもらえない。
そんなこともあってか、男は、戦場泥棒をしてしまう。
カムロである少女にそれを見られており、密告されたために、仏工夫婦は舎人に追われる身に。
その後も、隠れ家に身を潜め、戦場泥棒を夫婦でするようになる。食うものには困らない生活が出来るようになったが、妻は夫にまた仏工仕事をして欲しいと心の中では願っている。夫が誰よりも頑張って仏を彫り、その出来上がった仏がとても優しい姿であることを知っていたから。
しかし、夫は、頑張ってもどうにもならなかったことから、生きていればこそなのだと言い張り、なかなかこの生活を抜け出そうとはしない。全ては、妻に苦労をさせたく無いという一心でもあった。
とうとう、捕まる日がやって来た。
妻は舎人たちに慰み者にされ、捨てられる。身を投じようとするが、生きてこそという言葉が脳裏をよぎり、生き抜くことを決める。しかし、正気でいられるほどの、強い精神は無く、気狂いとして町を徘徊するように。
夫は、妻を救うために、舎人を刺し殺して逃亡。しかし、妻の行方は分からず。自らは、言葉を発することが出来なくなる。ようやく、食べ物や金なんかでは無く、何より妻との一緒の時間が大切だったことに気付き、取り憑かれたように、仏を彫る日々を過ごす。その仏の顔は、妻そのものであった。
時が経ち、カムロは気狂いとなった妻を町で見かけ、そして、人目のつかない一室でひたすら仏を彫り続ける夫とも再会する。
カムロは、喋れなくなっても一心に仏を彫るその姿、そしてその彫られた仏に宿る妻への愛を感じ取り、悪いことをした者たちにただ罰を与えればいいという自分の考えが安易であったことに気付く。人の想い合う愛の無限とも思える大きさに心を動かされたみたいだ。
カムロは二人を引き合わせる。二人は、言葉にならない叫び声で互いの想いをぶつけ合い、長年の時を経て、その愛を実らせる。
時間と空間に囚われてしまっているような舎人の青年。争いを嫌い、歌を詠み続けたいという願いを、自分で限界を作って制限してしまっているかのよう。
苦六天狗の旅をせよ、夢を運べという言葉に触発され、自分の時を進め始める。
互いに想いを寄せ合っている恋人と、離れていてもあなたへの想いを歌に書き留め、そして心にあなたのことをずっと刻み続ける日々を過ごすと約束をして、旅へと向かう。
時が経ち、舎人と青年は年老いる。傍には、姿の変わらない恋人がいる。
長い時をかけて人生を歩んできた男。死への暗闇へ向かうが、生きることもまた暗闇。その闇を照らしてくれて、その闇を明らかにしてくれた女への想い。
そして、時間と空間に囚われることがない故に、旅をし続けて彷徨うような女の苦しみ。
それでも、この一瞬の時、二人が想いあったことはいつまでも刻まれる。また、新しい旅へ。
二人は、数世紀の時を経て、再会し、その愛をまた育て始める。
といった二つの話を交錯させながら、進められていったようでした。
私の中では、前者は白土三平のカムイ伝、後者は手塚治虫の火の鳥をイメージさせるような話でした。
両作品とも、生や愛を描いていることは感じるが、曖昧でよくは分からないところがある。この作品も同じような感覚が残る。分からないという訳では無く、こういった曖昧であるけど、人は生きるためにその道を進み、絶対的な人への想いを残し続けるということを浮き上がらせたいのではないかと感じる。
そこに人の喜び、誇り、尊さを感じ取ることが出来るように思う。
ただ一つのまっすぐな道を、その方向に向かって進路を進める。そこには、人を愛するという心が時間と空間の中で運び、繋がれ続ける。それこそが、作品名のベクトル、ベクターという言葉に行き着いているように感じる。
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