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2014年10月11日 (土)

DOWMA ~二人の女優による「ドグラ・マグラ」~【空の驛舎+北村想】141011

2014年10月11日 アイホール (120分)

難解なのは、あらかじめ、ドグラ・マグラをネットで軽く調べただけで分かっており、それもその難解さは常軌を逸脱しているレベルだと言うのだから、はなから、分からなくなればどうにかすればいいなんて気持ちで観劇。
たくさん、難解な作品も観劇してきたので、そんな時の対処法もある程度は経験してきている。もう、話なんか無視して、役者さんの表情や心情こもった演技を楽しむ。今回はお綺麗な女優さんの二人芝居だから、この逃げ方は十分通じる。そして、これは限界があるが、舞台セットを細かく見ながら、その細かな技術に感動する。
そして、最後は寝ればいい。周りに迷惑にならない程度に。申し訳ないが、仕方ないことだから。

と思って観劇に臨んだのだが、これが意外に面白くて、結局は話に食らいついてしまった。もちろん、話の内容はあまり理解できていない。でも、一応、謎多きミステリーをベースに、進化論やら演劇論やら、果ては経済や数学までの理屈っぽいことを交えながら、まるで一緒にこの作品を色々な視点から見て挑もうぐらいの訴えかけが面白味のあるメタフィクション構成を生み出しているみたいだった。
そして、圧巻の女優さんお二人の演技。
船戸香里さんは何か、コミカルとか親しみやすさを醸しながらも、油断すると洗脳されそうなぐらいの無気味さが漂う迫力で怖かった。津久間泉さんは、自分が分からない、分からないとか言いながらも、どこかその奥にある何かを知っているのではないかと思わすような狂気を抱えているようで、狂っていることを知る狂人の怖さが異常に露出していたような気がする。
頭はついていかないけど、それでもどっぷりはまってしまうような巧い脚本、演出になっているのでしょう。
こんなに楽しめるとは思わなかった。

大学病院の精神病棟で突然、目を覚ました男。記憶が全く無い。自分の名前すら分からない。
目の前には、若林という法医学の先生。法医学というからには、何かの事件に巻き込まれたのか、それとも自分がその事件に関係しているのか。
若林先生曰く、答えは後者で、病院の中庭で鍬を振り回し、多数の患者を殺してしまったのだとか。ちょうど、前任の正木という先生の画期的な開放治療という被験者なっていた頃に。

資料室に案内される。
多くは何も知らされていない。少なくとも分かったことは、自分が精神病患者であり、人を殺したこと。さらには、正木先生をも撲殺したのだとか。とにかく、記憶を取り戻すことが事件の真相に繋がることは確かなようだ。
奇怪な資料が揃っている。全部、精神病患者の記録をそのまま文書化したものらしい。
その中に、おかしな劇作家が描いたDOWMAという作品がある。正木先生の研究していた胎児の夢や脳髄論という論文を参照に、独自の演劇論を連ねた作品になっているらしい。題名の意味は分からない。女性の双子をそう呼ぶことがあるらしいが。

男が部屋で休んでいると、隣の部屋から少女の声がする。幻聴だとは思えない。
返事をして欲しい、お兄様、私は許嫁だ、殺された、でも生きているという言葉を繰り返す。名前はモヨコ。

翌日、男は若林先生に昨夜の出来事を相談する。
そういう患者がいるらしい。そして、その少女と自分が1000年も前からの因縁で繋がっているのだとか。平安時代に双子として生まれた彼女。彼女と自分は婚姻する予定だったが、前日にその女性を絞殺。嘆き悲しむ彼女は、錯乱しておかしくなったらしい。はるか昔から、自分は殺人者だったのか。
若林先生は、正木先生の胎児の夢や脳髄論の論文の内容を語る。そして、それに資料が影響を受けたDOWMAの作家の演劇論も。難しくてよく分からない。
胎児の夢は数十億の進化の歴史をたどる、脳で人は考えていない、演劇は疎外という劇作家が自分の想いを書けない、役者が自分の伝えたい演技が出来ないといったような自分の想いのままにはならないことが根底にあるみたいな話かな。

部屋に正木先生がやって来る。若林先生は大嘘つきだから騙されているようなことを示唆される。確かに目の前には死んだ、それも自分が殺したという正木先生がいる。二人は主張する学説の違いから敵対関係にあるらしい。
マルクス論から価値というものを捉え、観客が舞台の生産物であると同時に、チケット代を支払う消費者であることや、どんな人が観に来るのか分からないという偶然性に対応することなどの独自の演劇論が語られる。話は進化論や関数にまで及ぶ。心で観る。胎児に刻み込まれた遺伝子に向けて、夢を舞台に載せる。魚が思う。鰓という感じの意味合いが、その進化に通じるのか。
少々、狂っているなと思って聞いていたら、やはり正木先生の帰る場所は13号室だった。彼も自分や、おかしくなった作家と同じキチガイなのか。

若林先生のカウンセリング。突然、自分の名前が呼ばれる。呉一郎。今までは自分で思い出さないと意味が無いと教えてくれなかったのに、様子がおかしい。
若林先生は自分には初めて会うし、話すのも今日が初めてだという。正木先生のことや少女の叫び声のことも全否定。モヨコなどいない。ただ、正木先生の血統をたどると、正木先生がその少女の血を引くことが分かっているのだとか。
これまでの話が全部デタラメになった感じもするし、逆に全てが明らかになりつつあるような感覚も。

一郎は中庭に。そこには鍬が置いてある。
その鍬を手にすると、記憶が蘇っていく。鍬で患者たちを殺す。止めに入った正木先生も勢いで殺す。
目の前には正木先生がいる。
正木と若林は双子。そして、正木は一郎の母。はるか1000年も前に恋に狂った正木は、子供を産んでその狂気を確かめる。狂気が遺伝子に組み込まれ、子供も狂うことを確かめるかのように。若林は、正木が狂って、精神障害者を利用した大量殺人計画を立てていると疑っていたらしい。
全てが落ち着いて、再び、一郎の治療が続けられる中、DOWMAの演劇論が唱えられた一冊の本を手にする。作者は呉一郎であった。

幕間に暗転がしばらくあるので、その間に書いておいたキーワードから思い起こしてみましたが、いまひとつラストがどうなったのかよく分かりません。
この作品の原作となる三大奇書の一つであるドグラ・マグラは、冒頭とラストの音が同じ時の同じ音とかでループになっているようなことが一つのポイントだと、これを拝見する前の、どなたかの解説で書かれていました。
よく分かりませんが、1000年前の平安に、一郎は婚約者の正木を絞殺する。正木は恋の狂気からか、誰が父親なのかも分かりませんが、一郎を胎内に宿す。そして、正木は一郎を産む。正木は一郎の遺伝子に組み込まれた狂気を自らの学説に従い、開放治療で取り除こうとするが、一郎は再びそんな正木を殺す。双子の妹の若林は、恐らくは1000年前も、そして今も、正木を一郎の狂気から遠ざけようとするが、一郎の背負う狂気、そして、その狂気を受ける正木の宿命からは逃れられない。それは同時に自らの正木と反する学説の限界でもある。
といったようなループなのかなあと思ったりもしますが、整合性がきちんととれません。そして、そんな一郎が正木の考えに基づいた演劇論を残す。それは、どんなに時を経ても、虚構の世界に刻み込まれて残る狂気の存在の実証であり、狂気の遺伝子が、再び巡り来る胎児の夢の中で発現するような印象を受けます。
今のこの時、そこから遡ったはるか数千年前、そして胎児が夢見る数十億の生物の進化の歴史において、消し去ることの出来ない狂気。そんなものを人はずっと背負って生を受け、その生を全うしようとしているような事実をミステリーの形で虚構として表現しながらも、メタ構成で現実でもあることを無気味に描いているような感じです。
ただ、狂気と同時に、そこに狂おしいほどに人を想うという心も存在しているようで、そこが人の進化や繋がりは遺伝子や脳の細胞みたいな科学的なものだけに支配されているのではなく、想う心という、この作品では鰓になるのでしょうか、そんなもので身を纏われているのだということも感じます。

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