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2014年10月24日 (金)

Moon guitar【A級MissingLink+竹内銃一郎】141023

2014年10月23日 アイホール (120分)

これはかなり見応えのあるいい作品でした。
ハードボイルドのかっこいい話です。同時に、ブラックユーモアも漂わせて、重さを所々で抜きながら話を展開させているみたいで、かなり引き込まれて観ることが出来ます。
ご出演の役者さん方は、よく拝見する方たちですが、これまでとは違う魅力を皆さん、醸されています。これがまた驚愕するぐらいに、凄く素敵で。
楽しめる名作。今週のお薦めの逸品でしょう。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

闇社会に生きる男、マオ。元暴走族でその悪ぶりでは名の知れた男。と言っても荒々しいところは無く、いたって冷静で紳士的な雰囲気。ただ、そんな暴走族よりももっと悪い世界へと足を踏み入れてしまっており、その世界であがき続けるしかないという自棄的な冷たい覚悟が感じられる。生粋の日本人であるが、暴走族時代の仲間との絡みから中国名を名乗る。ボスのリュウから、中国からの不法滞在者の職を斡旋したり、マネーロンダリングをしたりと、カタギでない会社を任せられている。
リュウは、人を人とも思わない冷徹で残酷な男で、まさにマフィアのボスといった感じだ。
秘書のあんなは、祖母が中国人でその血は流れているが、普通に日本語を喋ることが出来る。にも関わらず、片言の日本語で仕事をこなす。その方が、馬鹿な男を相手にしたりするのに色々と都合がいいらしい。若さと美しさと相まって、度胸も座っていて、聡明な出来る女。リュウとは愛人関係にあるみたい。マオからは足を洗えとよく言われているみたいだが、この世界から抜け出す気は見せない。と言って、この世界で生きる自分に満足はしておらず、むしろ不安や逃げたい気持ちは大きいようだが、自分独りではその勇気が沸かず、いつも何かのきっかけを求めながら彷徨っているような感じ。
マオはあんなから相談を受ける。リュウから頼まれていること。カタギで律儀で真面目で金に困っている男を探して欲しい。ある男を消したいから。理由は聞けない。それが闇社会の掟らしい。

 

ギター職人であるタクミ。その腕は結構なものらしく、仕事はまずまず順調のようだ。奥さんのあずさは妊娠中。
失業中のお調子者のあずさの兄が居候してしまっているのは少々厄介ではあるが、これから家族も増えて幸せ夫婦といったところ。ただ、一つ気になることが。タクミの体調がずっとかんばしくない。もしかしたら癌の可能性もあり、精密検査が必要といった状況にある。

 

ある日、マオは父の形見である月琴の修理を依頼しにタクミを訪ねる。
マオが闇社会、しかも中国マフィアと付き合いがあるという噂を知っていたタクミは、依頼を断ろうとするが、自分と同じ味がする人間だからと言われたり、趣味で作ったけん玉を妙に気に入られたりして、半ば強引に押し付けられてしまう。
全てはここから、流れるように全ての人の人生を狂わせていく。

 

マオは、あんなにリュウの探し人として、タクミを紹介する。
あんなはマオと接触。自分の死を感じ始めているタクミは、あずさと生まれてくる子供のためにお金を残したいとその依頼を受けてしまう。
自分の体のこと、人を殺めるという重荷もあってか、タクミはあずさになかなか構ってあげられなくなる。そんなあずさは、久しぶりに再会した高校時代の元彼と一線を超えてしまい、それを兄に告白する。どこか一杯一杯になってしまっているタクミや、そんなタクミとの間に亀裂を生じさせているあずさのことを居候の兄は心配するものの、何か出来るわけでは無い。学生時代は、文武両道で華がある素敵な兄だったらしいが、それを社会で花開かすことが出来ず、くすぶってしまっているようだ。

 

タクミの家では、あずさと元彼が緊張の面持ちでタクミの仕事が終わるのを待っている。二人が出した結論。タクミに離婚してもらい、二人で生きていくということ。こんな無茶苦茶なお願いを元彼はするつもりでいる。タクミが仕事を終えて、二人の下にやって来るが、ちょうど、あんなが家を訪ねてくる。元彼はまた今度にしようとその場から逃げ出してしまう。
タクミの仕事は無事に成功して、報酬をあんなが手渡す。あんなはタクミに抱き付き、どこかへ連れて逃げて欲しいと心の奥にしまい込んでいた言葉を口にする。それを遠くから見詰めるリュウ。
リュウが二人に近づき、あんなを追い払い、タクミと二人で話をする。
嫉妬からの修羅場かと思いきや、リュウにとってはそんなことはどうでもいいことだったみたいだ。
タクミに話した内容は、もう一つの仕事の依頼。消した男の組織が、今度は自分たちの組織を狙っている。組織同士の戦争を防ぐためには、こちら側も犠牲者を出して、疑いを晴らす必要がある。だから、うちの組織の人間を一人消して欲しい。そのターゲットはあんな。
タクミは激昂して断るが、リュウはタクミ自身だけでなく、妻の身の危険をほのめかして、その場を去る。
真っ青になったタクミの下に、席を外していたあずさが戻って来る。互いに知らないけど、二人とも、色々なことが重なり精神的に一杯一杯になっているみたい。あずさの提案で、二人は久しぶりに外食でもしようということになる。タクミも中華以外ならということで了承。
出かけようとした時、紙袋に入った多額のお金をあずさが見つける。いったい、何をしているのか。タクミは答えられない。
そんな凍り付く空気の中、元彼が戻ってきて、タクミにあずさと別れて欲しいと意を決して言い出す。

 

月琴の修理が終わり、マオはタクミの家を訪ねる。
家にはタクミ一人しかいない。あずさは実家に戻り、居候の義兄は天職を見つけたと北海道の牧場で働き始めたらしい。
タクミはリュウとの話をマオに相談する。
マオは顔を曇らせ、タクミにとにかく早く逃げるように諭す。リュウは本気だ。
自分が蒔いた種だからと言い張るタクミをマオは必死に説得する。闇社会にそのままタクミを引きずり込むわけにはいかない。自分と同じ味がする彼だからこそ、自分と同じような道をたどらせることをしたくなかったのかもしれない。
マオはあんなに電話をして、二人で何か話をして、後は全てを任せろと言い残して、その場を去る。

 

マオはリュウと会う。
話し合いで解決できる相手ではない。マオはもう抜け出すことの出来ないゾーンに入り込んでしまったみたいだ。そのゾーンの中で二人の距離が縮まっていく。あんながその場にやって来る。そして、リュウの懐に飛び込み・・・
倒れるリュウの傍でマオとあんなは外の風景を見詰める。
UFO。いや、風船。誰かが手放してしまった風船が空を彷徨っている。

 

タクミの家ではあずさが兄からの手紙を読んでいる。北海道で頑張っていることを伝えている。
よかったなんて思っていたら、目の前に兄が。何か分からないが手紙を書いていたら懐かしくなって戻ってきてしまったらしい。
タクミは入院中で、少しずつ体の調子も取り戻しつつあるみたいだ。
もうすぐ、子供も生まれる。
これからのことに目を向けられるようになった人たちが、そこにいる。

 

ハードボイルド小説って感じでしょうか。
話にのめり込んでいくと同時に、厳しい結末を想像してしまい、深刻な気持ちになる中、ちょっと軟弱な義兄や元彼の、本人としては真剣そのものなんでしょうが、飄々としてすっとぼけた存在が笑いを生み出し、少し逃げ場がある巧妙な展開もいいですね。ラスト30分ぐらいで、それまでにどっしりと心の中に積もった重いものを軽くしてしまってから、ラストに向かっていく。

 

人は自分の殻が破れることを期待しているのでしょうか。自分を守るために、まあそれなりに懸命に作ってきた殻なのに。それも自分ではなく、他人に少し壊されることを待っている、もっと言えば、そうするように誘導する行動をとってしまうかのようにも見えます。
ただ、そんな殻が破れた時、中身の自分が生卵のようにダラ~っと漏れ出てしまい、もうどうしようも無くなってしまう場合と、破れた殻の部分から、新しいものを取り込んで一回り大きな自分になる場合がその時のタイミングで紙一重であるようにも感じます。
だから、殻の中の自分は流動性あるものではなく、しっかりと固まった状態であることが大事なのかもしれません。

 

作品名でもある月琴はどういう意味があるのかなあ。月というイメージは何かこの作品にはぴったりのようには思いますが。
マオが持っていた作品中の月琴は丸い形をしています。本物は楕円形をしているらしく、その価値あるものは父が持っていたのですが、マオが若かりし頃、ぶち壊してしまったのだとか。 何となく、生まれと育ちが違う二つの月琴を思います。自分こそが月琴であるために、もう一つの月琴を否定しなといけないような。
音色もきっと異なるのでしょうが、本当はそんな違いがどうこういう問題ではなく、その音が人の心に月琴としてどう響くのかなのでしょう。父が弾いていた楕円形の音色も、今のマオが持つ丸形の音色も父やマオの心に響く音であり、何も違うものでは無かった。でも、人は、そこに違いがあるとこだわってしまう。
タクミは自分が壊した楕円形の月琴の音をもう一度聞くことで、何かが変わると思ったのでしょうか。でも、丸形の月琴ではその音は出ません。失われたものは、もう二度と蘇りませんから。その音にこだわるよりも、今の自分が持つ丸形の月琴で自分の音を楽しむことを目指せば良かったのに。どうしようもない、もう取り戻せないということで、自分を縛り付けてしまっている。求めた音でないことに、悲しみと悔いを覚えながら、丸形の月琴を弾く。何かタクミの人生のように感じます。

 

UFO。手を離れた風船。冒頭とラストにその風景が描かれます。
風船は彷徨う自分たちの姿かな。優しく感じるのは、ラストでその彷徨う風船よりも、それを手を離して失った子供の悲しさを想う姿。色々なものを失ってきた人だからこそ、想えることのように感じます。

 

よく拝見する役者さん方でしたが、皆さん、これまでに拝見したことのない魅力を醸されていました。
特に、林田あゆみさんかなあ。イメージでは、ちょっと天然のすっとぼけた役どころを覚えていますが、まあ今回は言いようの無い不可思議な魅力。違う方じゃないのかなあと何回か確認したくらいに。
冷淡さもあるけど、どこか温もりも抱える。知的で巧妙だけど、本能的に心のままに行動する愚かな一面も。片言の日本語に、流暢で方言まで操る口調。相反する様々な要素を持ついい女を魅力たっぷりに演じられており、釘づけでした。

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