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2014年10月23日 (木)

透視図【維新派】141022

2014年10月22日 大阪・中之島GATEサウスピア (120分)

維新派は、観劇を始めたからには、一生に一度は観ておきたい劇団。
ある方から言われた言葉。
そして、つい先日、恐らく、ここの流れを組むVOGAを拝見して、自分がその魅力を感じられないわけではないみたいだったので、足を運んでみる。

これはアートなんでしょうね。もちろん、演劇だってそうだろうと言われればそうなのですが。
舞台が、個々の役者さんの身体の動きや発せられる音、そして、照明・音響と同時に、実際の屋外の光や音と相まって、一つの絵や楽曲に感じられるようでした。
そんな中で、たどっていく大阪の風景の変遷。立派になって光り輝く外の光と、内に潜む闇。流れる川と底に堆積する泥。そこにも築き上げられる文化の歴史。
一つの街の風景に身を置く自分はいったい何者なのかを考えさせられるような気がします。

あらすじというかストーリーは、それを追って観る作品ではないようで、よく分からないのだが、観終えて思い出してみる限りでは、だいたいこんな感じではないだろうか。
離島から、祖母と一緒に不安の中、大阪に船でやって来た少女、HITUJI。大阪の島を点々とする。海の近く、川の傍で暮らしており、鉄鉱石を運んだりする船の風景が頭に残る。祖父は川底の泥をすくう作業船で仕事。
川でどぶさらいをして、クズ鉄やたまに指輪みたいなお宝を金にして生活する少年、GATARO。誰でもよかったという少年に刺されて、入院している。羊が一匹、二匹・・・と病室で眠りに落ちる中、迷える羊、HITUJIと出会う。

そんな二人の会話から、大阪の街並みの変遷を描いているような感じだろうか。
どこか、大阪を外側から、上から見下ろすように見ているHITUJIと、大阪の街に溶け込んでしまい、その内側から大阪を見詰めるGATARO。
作品のキーワードの一つである川で考えると、各々、川を上空から、川底の中から、自分たちが身を置く川の流れを見詰めるような感覚。
泥が出てくるが、清流ではないから上空からはそれはよく見えないのではないだろうか。そして、川底に溜まる泥の中に身を置いていれば、これまた見えないような気がする。
でも、HITUJIは、祖父の泥をすくう船の作業から、その川底には堆積し続けて、時には川の流れを止めてしまう泥があることを知り、GATAROは自らに起こった悲劇から、自分が泥の中でうごめく数多くの人たちの一人であることを感じているように思う。
こんな二人だからこそ、大阪の中身を見せるような風景が描き出されているように感じる。

舞台は、4m四方ぐらいの正方形が碁盤目状に縦横4つずつ並べられ、役者さん方は、その碁盤目を色々な形で走り抜けたり、正方形の上で何かしたり。
統率のとられた集団の動きであらゆることを描写しているみたい。
大阪の街並みの風景を具象的に表現して、今や昔の街の姿を想像させたり、抽象的な表現でその歴史や街の人たちの空気を感じさせたり。
碁盤目状の正方形が置かれた黒いキャンパスで、白塗りの役者さん方一人一人が一つのドットのように動き回り、照明の光の効果や屋外なので実際の夜空や光を発する今の大阪の街並みと相まって一つの絵を創り上げているように思う。
また、黒い五線譜の上で、白い音符たち一つ一つが自分の音を発し、音響による音楽や風景音、さらには実際に屋外から聞こえてくる色々な音と相まって一つの楽曲を創り上げているようにも思う。
舞台で起こる様々なことに身をゆだねていれば、無機質な幾何学的なアートのようなものから、いつの間にか時や人と共に姿を変えゆく一つの街の風景が浮き上がるかのよう。

そこから行き着くところは、私とはの追求のように感じる。
今の光り輝くネオンのビル街の底に残り続ける川の流れで堆積し続けた泥。走る地下鉄。
その光の奥に潜む大阪の闇と歴史。
都会風のビル街に溶け込んで歩く自分の正体は何なのか。奥深くに潜んで見えていなかった風景の中に映り込む自分が感じられた一瞬、自分の生のルーツが見え、そこから自分の未来を考えられるようになる気がする。

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