鳩とか腹とか振り子とか、きっと君の体内には廻るクロニクル【関西大学劇団万絵巻】141018
2014年10月18日 OVAL THEATER (105分)
昨年末に拝見して以来なので、久しぶりの観劇です。
学生劇団を観に行くようになった原点と言える劇団なので、なるべく観に伺うようにしているつもりだったんだけどなあ。
そんな久しぶりの観劇で、正直、忘れてしまった役者さんも多かったのですが、かなり引き込まれる舞台でした。語りや展開のテンポが非常にいいです。このまとまった見事な出来は、なかなか感動もの。
元から好きな劇団ではありますが、やっぱりいいねえと見直したところも。
ただ、話としては、いい話なんだけど、どうもしっくりこないところが残るのですが・・・
<以下、あらすじを書いたのでネタバレにご注意ください。ネットで調べたら、脚本が見れるみたいなので、白字にはしていません。公演は明日、日曜日まで>
産業革命時代のある国。
最高の時計職人と名を馳せたルマンドが亡くなり、その息子、コパンが時計工房の後を継ぐ。
ルマンドの弟子であったが、時計職人としての才能は残念ながら無かったようで、メントスは、真面目一辺倒のコパンを営業面で助けるべく協力する。
両親が亡くなり身寄りが無くなったため、ルマンドに拾ってもらい、ずっと二人と一緒に過ごしてきたブッカは、コパンを励まし、調子に乗りすぎるメントスをいさめながら、三人の結束を固める役割ってところか。
コパンは、職人としての腕は確かであるが、彼が作る時計はなぜか必ず止まってしまう。ルマンドの時計が永遠に時を刻むのと比べると格段と見劣りがする。
今日もクレーマーとして有名なご婦人、カントリーマアムが時計が止まったと文句を付けに来ている。メントスの見事な接客で何とかなったものの、このままでは、職人をたくさん雇って大量生産をしている、プリングルスの大きな時計工房に負けてしまうのは時間の問題。
ルマンドが在命中の頃から、コパンは止まらない秘訣を教えてもらおうとしていたが、真似して作っても意味が無いと相手にしてくれなかったようだ。
ルマンドの時計があれば、それを分解して、止まらない時計を作れるかもしれないのだが、あいにく、その時計は一つしか残っておらず、それも国宝となっていて女王様の手元にある。
それというのも、チップスターとかいう側近が、姫に恋しており、ルマンドの時計を最高級の一つだけ残して全部壊してしまい、その一つを女王様のご機嫌伺いのために渡したりしたからなのだが。
そんなある日、国で万博が開かれることをコパンたちは聞く。その万博で、時計をPR出来れば。
コパンたちは、早速、王宮に潜り込み、万博に参加する許可をもらおうとする。
女王や姫と謁見することは出来たが、側近たちと揉めてグチャグチャの状態になり、参加の許可は得られぬまま、王宮を放り出されてしまう。しかし、十分な収穫があった。
女王は適当な人で万博などには興味なく好物の焼き鳥を食べてぐうたらの日々を過ごしているのであまりキーパーソンでは無いこと、その代わり、コパンも憧れの人である心優しき姫が自分たちの味方でいてくれること、そして、どさくさ紛れに国宝のルマンドの時計を手に入れた。
万博に向けて忙しい日々が始まる。
参加資格は姫が女王に進言してくれたらしい。人目を盗んで、たまに、工房にも来てくれるので、コパンも疲れていても、すっかり元気になって頑張れる。肝心の時計作りの方は、コパンがルマンドの時計を解析して、改良した時計が出来そうだ。ただ、ライバルとなるプリングルスは、数で勝負してくるはず。こちらは、質で勝負するしかない。でも、そのアイディアもバッチリ。
決戦の日を迎える。
互いに自信を持って、面白時計を見せ合うが、審査員にカントリーマアムがいるので、セレブ受けするプリングルスの方がやや有利か。でも、コパンの方も決して引けをとっているわけではない。
姫は目配せして、コパンを応援してくれている。女王様はすっかり飽きてお眠りのようだ。こうなったら彼女はちょっとしたことでは目覚めない
いよいよ、最後の品。コパン側は、自信満々。それは世界初の目覚まし時計。メントスがその時計を手にしてプレゼンを始める。
ところが、プリングルスの方も同じアイディアで時計を作っていた。横取りするような形で、プリングルスは、自分の時計のプレゼンを始める。そして、大きなアラーム音を鳴らして、誰もが目が覚める素晴らしい時計ですと鼻高々。ところが、女王様はピクリとも動かず、目を覚まさない。
これでは、ただうるさいだけの時計。みんな気分が悪くなって、場は解散しそうになるが、メントスはあることに気付く。コパンが夜通し作業をして寝ぼけていても、姫が来たら、その声ですぐに目を覚ましていた。女王様も、大好きな音を聞けば。コパンはその場で時計を改良する。ジュージュー。焼き鳥を焼く音で女王はスッキリ目覚める。
かくして、決戦はコパンの大勝利。
コパンの工房は大繁盛。予約が多過ぎて、注文しても半年以上待ちの状態。あのクレーマーで文句ばっかりだったカントリーマアムも、今度は自分を優先しろとうるさく言ってくる。コパンは懸命に頑張ると言うが、一人では無理というもの。メントスが、コパンの時計を本当に愛さないような人に売る時計は無いと厳しく言って追い返す。逆ギレするカントリーマアムであったが、あのおしとやかな姫が一喝。これでは、さすがのクレーマーも手も足も出ない。
そんな中、女王様は、コパンたちに国民栄誉賞を渡すと宣言。大変ありがたいことではあったが、その代わりにとんでもない仕事を依頼される。
国のシンボルになる時計塔の建設。この一大国家プロジェクトに、コパンたちをはじめ、ライバルだったプリングルスも巻き込んで、みんな必死に働く。もはや、万博などどうでもいいくらいに。
そして、ついに完成。みんなフラフラ。褒美は睡眠をと願い出るくらいに不眠不休の日々だったようだ。
国中が盛り上がりを見せる、そんな時に事件は起こる。
女王様の時間が止まる。息もしないし、心臓も動かない。でも、死んでいるわけではない。そして、続いて、国の色々な人が同じような状態に。
疫病。初めはそう思われていたが、調べていくうちに、コパンの時計を持つ者がそんなことになってしまうことが分かる。
コパンたちをひっ捕らえろ。そんな怒声の中、コパンの時計を身に付けていた姫が、そんなことはデマだと必死に国民を説得しようとするが、その姫までもが時を止めてしまう。
時計塔を壊せ。あれが止まれば、国民全員の時が止まってしまう。時計塔に大砲が撃ち込まれる。
その時、ルマンドの時計を持っていたコパン以外の全ての人の時が止まる・・・
物語のラストは、みんなが目覚めるシーン。
どれほどの時間が経ったのか。草木は好き放題に生え、埃も大地に厚く積もっている。
そして、あの工房には年老いたコパンの姿が。
コパンは、本当にルマンドの止まらない時計を作る技術を身に付けていた訳では無かったようです。だから、あんなことになってしまった。
でも、あれからコパンは一人で、自分だけの力で本当に止まらない時計を作り上げた。それをみんなに一つずつ渡し、みんなの時を動かしたようです。ただ、部品が足りず、ルマンドの時計の大事な部分を解体して、それを使ったため、コパンの時は止まってしまう。
切ない話ではありますが、それからの話も少しだけ語られます。
才能が無かったメントスではありましたが、今度は彼がコパンの時を動かすために、必死に時計を作り始める。その懸命な努力は実り、・・・
時を超えて繋がる、人の絆みたいな感じでいい話だとは思いますが、いまひとつ、時が止まるということの意味合いがよく分からないようなところが。
止まらない時計の動力は、時計を作る技術とかではなく、その時計に込められた想いだとか、それを受け止める心だとかいうなら、何となく分かるような気もしますが、姫の時計も止まりましたね。
時が産業革命の時代。これまでの考えに囚われず、新しい視点で物事を見詰め、進んでいかなくてはいけない。そんな時に、自分自身で考えて作り上げたもので、時を刻んでいかなくてはいけないといったようなことでしょうか。そして、作り上げたものを使う人がいる。技術を革新するだけでなく、その技術を誰のために役立てたいのかというモノづくりの精神を見せているのか。
話としては、いまひとつ、しっくりこない感が残ります。
まあ、そんなモノづくりの精神は、ルマンドからコパンへ、コパンからメントスへ引き継がれ、そして、最終的にはその想いが実って、コパンとメントスが同じ時をまた刻み始めるというハッピーエンドといった形でいいのでしょうが。
久しぶりの観劇なので、記憶を呼び起こしながら、各役者さんにコメント。
ブッカ、きなこさん。初見かなあ。覚えていないのか。抜群でしたね。上記したように話自体は、何かちょっとといった感が強いのですが、作品としては素晴らしい出来だと感じています。その理由の一つでしょう。ストーリーテラーの役割も果たしながらの、可愛らしく動き回りながらのリズミカルな語り口調が素晴らしかったです。
コパン、じょーさん。う~ん、この方も分からない。何と純朴な空気を醸すのかといった感じでした。時計が止まるというのは、自分の限界を勝手に決めて、そこで終わりにしてしまうといったようなことの意味合いなのでしょうか。自分の能力は無限大。そんなことを仲間たちから教えてもらって、自分の壁を突き破ったような達成感を感じる姿が微笑ましくも誇らしげでした。
メントス、茶ぱつさん。芸名と違って黒髪じゃんといつも思っていた人かなあ。今回は本当に茶髪でしたが。この方もお見事です。語りがテンポがいいので引き込まれます。どっかの企業のお偉いさんが観に来ていたら、あれを地でやれるなら、是非、うちの営業にぐらいの巧みさがあります。
ルマンド、悠凛さん。この方はどこかで拝見している。どこかは忘れてしまったけど。さわやかな感じなんだけど、存在感がある威圧さも持ち合わせたような方。がんこ職人ははまり役で、その他のところでも、いい味出した演技で魅せていました。
プリングルス、らむさん。覚えているような、覚えていないような。空気読めない感じの、かなりのお調子者キャラで楽しい雰囲気を醸します。
カントリーマアム、如月さん。多分、初見。まあ、イラッとする貴婦人。憎たらしげな表情に、まとわりつくような嫌味な口調が印象的。
姫、仲田くみちょーさん。確実に覚えている方ですね。笑顔をたやさない、優しさや優雅さ、お上品さとありとあらゆるエレガントさを醸す素敵な役。いつもと違うじゃんと思っていたら、期待どおりのシーンも。
女王様、もーりんさん。顔は覚えているのだけど、どこで拝見したのやら。一年も観ていないと忘れるものですね。自称、万絵巻ファンなのですが、もはやそう名乗れませんね。何でしょうか、このガサツな感じ。下品だけどどこか憎めない大阪のおばちゃんを女王様にしてみた感じになっています。
決戦の時の司会、チャーリーさん。この方もどこかで拝見している。チャラそうな感じを覚えているから。今回も弾けまくりのちょっと引くノリノリの姿。
女王の側近、はちをさん。多分、初見。神経質そうなイライラを見せる。いますね、こんな人。自分の与えられた仕事に過剰なまでの責任を感じて振る舞ってしまうのか、嫌な感じになってしまう人。
チップスター、たろうさん。この方は覚えている。アトリエS-PACEの公演で拝見しているはず。表情が豊かなのが印象的で、今回はちょっと厭味ったらしいけど、そんな表情をたくさん魅せてくれます。
奴隷とか、ほのかさん、笠井アルゴさん。思い出せない。ほのかさんは恐らく、初見。アルゴさんはどこかで拝見しているはずだと思うのだが。ちょこちょこっと色々なところで登場するから、あんまり。奴隷の姿は何か痛々しかったけど。
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