火曜日のゲキジョウ【カメハウス×芝居処 味一番】140902
2014年09月02日 インディペンデントシアター1st (30分+25分 休憩10分)
偶然なのか、両劇団とも、時の経過により、人の現実が非現実世界へとシフトしていくような話。
ただ、その描き方やオチのつけ方は真逆かと思われるようなものだった。
ファンタジーエンタメと不条理会話劇みたいな感じか。そして、希望と絶望のようなラスト。
・「時、死に給ふことなかれ」 : カメハウス
憧れの女優のバックダンサーを務めることになった2人。1人は冷静で出来そうな感じ、もう1人はかなりの女優のファンらしくテンションが上がりきっている。
2人は稽古に向かう途中の電車の中で、女優のために何かお土産を買って行こうと話し合う。車内に完全に白塗りの奇妙な男がずっと、冷静な男の方を見詰めているが、どうもその姿はテンション高い男にしか見えていない様子。まあ、そんなことより、カステラを購入し、ご挨拶へ。
稽古前に喉が渇くカステラなんかを買ってくるなんてと女優に言われ、平謝りしていたら、彼女流のジョークらしく、すぐにクスクス笑い出し、稽古が終わったら涼しいところでみんなで食べましょうと優しく微笑まれる。それよりも、今日の稽古は本番さながらの危険が伴うシーンがあるから、しっかり頑張ってと女優の顔を見せる。2人は元気よく返事をして稽古開始。
悲劇はこの後起こった。冷静な男が女優の裾を踏んでしまい、女優は高いところから落下して亡くなる。
冷静な男は電車の中にいる。隣には、時について語る不思議な少女。
男は人を殺めてしまったことを告白し、時を戻してもらう。
あの稽古の時。落下しそうになる女優の腕を冷静な男は掴み、無事に稽古終了。でも、みんなで美味しくカステラをいただく中、喉を詰まらせて、テンション高い男が亡くなる。
冷静な男は、何度も、何度もやり直しの世界を過ごす。変わるはずも無い時間の流れの中に身を委ねる。本当の時間に取り残された男。
いつしか、少女の姿は見えなくなり、男自身が、肉体が滅びず、時が止まった少女のような姿に。
男は、かつては見えなかった白塗りの男の姿が見えるようになる。手にはカステラを持っている。ようやく、この日がやって来たみたいだ。
男は、いつの日か身についた時を呼び起こす力を使い、白塗りの男と少女を再会させ・・・
大正浪漫風の雰囲気で、ユラユラと揺れる不思議な世界。
なかなか、全容を理解するだけの頭がなく、理解が曖昧になっているので感想が書きにくい。
冒頭に語られる歩いて1時間かかる道のりを、電車で10分で行けば50分の未来を得たようなものであり、その時間が消えるみたいな言葉。
この作品は、急ぎ過ぎて早くに着いてしまった、大事なものを取り残してきてしまったために、消えた50分を取り戻そうと彷徨ってしまう人の姿が描かれているように感じます。
でも、そんなことは不可能で、もしもの世界で頭を巡らせている。その時の中に取り残されてしまったのでしょう。
ただ、そんな時間が無駄というわけではなく、やがて、男は、死んだ者たちも自分の頭の中で時を刻んで生きているようなことに気付いたようです。墓の様な舞台セットに絡んで結ばれていく赤い糸みたいな表現からそんなイメージを得ます。
そして、実現できなかった楽しい時間の始まりを亡くなった者に与え、男の時は再び、現実の流れに追いついたような感じでしょうかね。
女優、ダンサーと舞台に関わる者が登場人物になっています。恐らくは、どんな未来を作り出そうと、女優やダンサーの死で実現しなかった舞台への想いもこめられたように感じます。
時を経ても、舞台に残り続ける表現者の覚悟と想いでしょうか。亡くなった者たちも、時を刻み続けるのと同じように、消えた作品もそうして、時と共に育っていっているのかもしれません。
基準の5点に、新感覚の不思議な世界に+2点、あとは、私が理解できていないたくさんの魅力があるのだろうという匂いを感じはしたので+1点とし、8点評価。
・「マグロ」 : 芝居処 味一番
同棲中のカップル。
2人ともどこかへ出かけると家を出たものの、目的地が同じだったみたいで、偶然にも出会ってしまう。
この2人、とにかく、すぐに口ケンカ。
一度、口を開いたら、どんどん細かなことまでの言い合いになり、止まらなくなる。
2人の用事は、海外旅行に出かけていた友人が土産を渡したいと呼び出された様子。
現れる友人。大きいスーツケースを手にしている。
聞けば、半年も旅行に行っていたのだとか。場所はオーストラリア。
とインドとマレーシアと・・・
オーストラリアのバーで知り合った船長とノリで、マグロ漁船に乗っていたのだとか。
マグロ漁船での生活、出国の手続きとかしてないなら、行方不明者とかになっているのではとか、マグロの解体の仕方・・・と、色々な会話を、2人の口ケンカを交えながらかわしていく。
その中で、2人は今まではケンカすることが当たり前だと思っていたが、やはりおかしいのではないかということに気付く。言いたいことを言える、ぶつかり合えることが仲がいいということだと思っていたみたい。でも、多くのカップルは違う。
2人は手を取り合って家に戻る。
その前にお土産。大きなスーツケースの中に入っているものは・・・
ブラックで気持ち悪い作品。
何気ない2人の普通のカップル。その会話もケンカではあるが、よくありがちなことばかり。
でも、それが徐々に友人の登場と共に違和感を得るようになる。何かおかしい。どこかズレている。
かたや、友人は完全に不条理なマグロ漁船の話。
カップルの姿が、日常の中で見えるどこか隙みたいなものだとしたら、友人の完全な非日常がそこから入り込んだ感じか。
日常なんて、現実なんて、そんなもの、すぐに非日常や非現実に切り替わるといった曖昧な世界観を描いているのだろうか。
生きていると動物、加工したら食べ物という人間の決めつけた勝手な判断。これが普通なんてものも、ちょっと壊したら普通じゃないなんてことも。
次々に解体される生きたマグロと半年にも渡って接してきた友人の普通が、カップル含め、私たちから見る普通といつの間にか変わってしまったような恐怖を感じさせるラスト。
淡々とした会話の中で恐怖を感じさせる巧妙さに+2点、でも、気味悪くて好きなタイプじゃないので-1点で6点評価。
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コメント
ご来場ありがとうございます!!
見事な感想で少し恥ずかしくもあります(心の中を見通されたかのよう。
これからも舞台と言うタイムマシンのようなもので時を進み、たまに戻り生きていきたいと思います!!
また一緒にタイムトラベルしましょう!
投稿: かめ | 2014年9月 5日 (金) 02時54分
>かめさん
コメントありがとうございます。
毎回、舞台を通じて、色々な世界に連れていってもらえることを楽しみにしています。
入り方が分からなかったり、間違えたりすることも多々ありますが(^-^;
また、次回作でお会いしましょう。
イベントになるんでしたっけね。
投稿: SAISEI | 2014年9月 6日 (土) 08時57分