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2014年9月27日 (土)

くりかえしへこむ/閻魔旅行【月面クロッワッサン】140926

2014年09月26日 人間座 (閻魔旅行:20分+くりかえしへこむ:60分、休憩10分)

前回拝見した公演と同じく、これまでのこの劇団とはかなり異なる雰囲気の作品が並ぶ。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-1.html
愚かな、弱い人たちの生きる力に焦点を当てて、安堵を得るような感じでしょうか。
上から見て、自分は違うから大丈夫なのではなく、自分にもあるその弱さ、行きつく先の先細り感を思いながらも、まあ、人生そんなもんで、それはそれでまあ結構楽しいと思えるんじゃないのかみたいな。
たくさんの闇や毒を交えながら、その中で照らされもしないけど鈍く光る輝きや、効きもしないけど薬みたいなものを見つけるような感じの話。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで。閻魔旅行は19:00の夜の回しか上演がありません>

・閻魔旅行

憮然とした表情の男と、何やら期待いっぱいで楽しそうな男が、列車に揺られている。
しかめっ面の男は、孫の手をお年寄りなどに、悪質に売りつけている悪い奴。嬉しそうにしている男は、閻魔大王。
男は、お年寄りを殺めて、自分もしくじったのか、あの世へとやって来た。そこで、今まで聞いていたのとは全然違う、普通の青年の閻魔大王に出会う。
天国か地獄か。ところが、閻魔大王は別府温泉の地獄巡りを案内させるために、男にこの世行きの判定を下す。
生き返ることになってしまった男。犯罪仲間に電話をして、何やらまた悪いことを指示している様子。
閻魔大王は、舌を抜き、天国か地獄かを決めるだけの仕事にうんざりしている。自分は向いていないから、もう辞めたいみたいだ。
男は、それなら、自分が閻魔をやって、あの世の地獄を極楽に変えると言い出すが・・・

致命的なことに、オチがよく分からない。どういったことだったのだろう。
男は舌を抜かれて、結局、閻魔大王は別府温泉などには行けず、あの世へ戻らないといけないことにがっかりしていたようだが。それに、男が殺めたおばあちゃんも電車に乗っていたみたい。
閻魔大王の気まぐれなのか、別府温泉に行きたい理由づけなのか、同じことを繰り返す日々に厭世観を感じていたのか、あの世へ来た人をもう一度生き返らせるという、これまでに無いことをしてみたものの、結局は男の裏切り、嘘によって、あの世へ戻らないと仕方ないことになった。
男も閻魔大王も、元の通りに。生をおろそかにした人間の愚かさ、新たな人生を見出そうとしたが、無駄だった閻魔大王の失望が、生きることへの空虚さみたいな感じで伝わってくる。
それとも、
この世が実は地獄ってことかな。
人はそんな地獄を、ちょっとでも極楽になるように、変えようと生きている。別府温泉の地獄巡りぐらいに、ほどほどに毒があり、でも楽しい世の中に。刺激や改善の余地のある世界じゃないと、生きている実感が無いのでは。
閻魔が最終的に男に下した判定は何だったのか。舌を抜いて、何も出来ない、何も変えることの出来ない世界に放り込む。実は、その行く先はこの世では天国と呼ばれている、変わることが無いから面白くも何ともない世界なのでは。

・くりかえしへこむ

年配の男に連れられて、扉の前に案内される3人。
強がりばかり言って虚勢を張る男、やたら理屈っぽくてイラっとするような男、何か冴えず臭い男。
どうやら、かつていじめられっ子だった同級生たちのようだ。そんな悲しいトラウマもあるのだろうが、そもそも、自分勝手、逃げ根性、いい加減さや無気力なところもあるようで、今では立派な社会不適合者と呼ばれる人たちに成長したようだ。
連れて来られた理由は、扉の向こうにいる、同級生の男を部屋から連れ出すこと。つまりは、引きこもってしまった息子を助けてくれということみたいだ。報酬は一人五万円、交通費、食事付き。働いていない彼らにとっては悪くない話だ。
扉の向こうの男もよくいじめられていた。3人もよく覚えている。
父親は、息子をこんなことにしたいじめっ子が許せないらしい。見つけて殺したいとまで言っている。息子もTwitterでいじめっ子を殺すとかつぶやいている。
色々と声を掛けてみるものの、反応は無い。Twitterでうざい奴らが来ているみたいなことはつぶやいているが。
そのうち、3人はいじめられていた時のことや、その後、ダメな人生を歩んでいる自分たちと対峙し始める。本当にダメ人間であることを、説得している中で、改めて気付かされていっているみたいだ。
親だって悪い。ある程度の年で、自分たちの息子が欠陥品だと分かっただろうから、殴るとかして厳しく育ててくれていれば。ここの父親だってそうだ。さっきから急に現れては、こっちが楽しく盛り上がって話しているのに、自分の話を急にし出す。空気を読めない。扉の向こうのあいつもそうだった。ああいう親だから、いじめられて引きこもるような子になるのだ。
自分たちを正当化することには、努力を惜しまない3人。
そして、この3人。本当に、自分たちのしてきたあることを、いじめられたことを大義名分にして、意識の外に追いやり続けていたらしい。
なかなか出てこない。金も欲しい。
イライラが爆発した3人は、お前みたいなクズは死ねばいい。この先、頑張ってもどうにもならないことが分かっているはず。だったら、もう自分で始末をつけろ。自分たち自身にもかかるような言葉を扉の向こうの男に投げ掛ける。
そう、こんなシーンがかつてあった。お前なんか死ね。生きていてもクズは仕方ない。殴り蹴りしながら、そんな言葉を投げ掛ける。自分たちもいじめられていたから、仕方ない。
彼をいじめていたのは。
気付けば、包丁を持った父親が迫って来ている・・・・

これでブラック終わりかなと思ったら、この後、けっこうグダグダのグチャグチャ状態になります。
扉は開きますが、男はもう数年前に自殺していました。
その復讐のために父親が仕組んだことだったようです。
3人は逃げ出し、父親は失敗したと卑屈にごねまくり、情けない姿を晒します。
臭い男だけ、やっぱり、自分は死んだ方がいいかもと戻ってきて、父親と酒を酌み交わした後、殺害される。
まあ、結局はみんな死にます。
遅かれ早かれですが、あまりいい死に方ではなく。
弱者の闇を浮き上がらせる独特の感覚な作品。
弱者の闇は、自分の中にもあるので、ふと自分を見詰めなおしたりしたら、一瞬、鬱になってしまう。もし、この状態がずっと続くようだと、描き方はえげつないので、相当にショックを受けることになるだろう。上手いのは、あまりにも極端化したキャラで、観ている者を少し遠ざけてくれるようなところだろうか。これなら、不謹慎だが、弱者の無常さ、哀れを笑うということで、絶妙なバランスを持って観ることができる。そうしながらも、適度な距離で、そんな弱い人たちに寄り添うこともできるみたいな形になっているようだ。

3人は、腐敗、正論、虚勢のメタファーみたいな感じかな。父親は保身。扉の向こうの男は空虚。
腐っている、臭いので近寄りたくない。理屈だけで、上っ面の議論しかできないから面白くない。弱さをさらけ出さないで、本当は無い強さだけを押し付けてくるので話をする気にならない。
そんなものたちは、普通の人には忌み嫌われて拒絶の対象になるので、弱く隙のある人間に憑りつく。その結果、その人は、絶望へと追いやられ、生きることへの力を無くす空虚なものとなる。
憑りついたものへの悔しさ、憎しみは復讐の形となって現れるが、空虚になったものの姿は、いつの日か訪れるかもしれない自分の姿でもあり、それを消し去ろうという保身の心が生まれる。
そんな弱きものたちが、最後に開けた扉の中には、死が入っており、それに飲み込まれていく。
じゃあ、憑りつかれてしまった不幸なものは、扉の中に閉じ込めて、自分たちはダメなりにも、いい加減でいいから生きていけばいいのに、そうも出来ない。その扉を開放してあげようという気持ちが出てきてしまう。
それは、弱いものたちの、奥にあるプライドや優しさであるようにも感じられ、それが人間なんだよなあと少し安堵の感を得る。
強きものが、扉の存在などには気付きもせず、力強く自分は生きているのだなんて思っていることの方が、本当はよほど怖いことかもしれない。
そんな印象を受ける話だった。

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