LINX'S PRIME A、Bver.【LINX'S】140929
2014年09月29日 トリイホール
A ver.(170分、休憩10分)、B ver.(165分、休憩10分、イベント20分)
連続観劇で、かなり疲れましたが、楽しい公演でした。
心底、演劇を楽しみ、楽しませようとするかっこいい奴らがいて。
頑張って欲しいですね。これからも、ずっと。最高のことしているという誇りを持って。
<以下、ネタバレしているところがありますが、もう、今日で千秋楽なのでいいですよね。白字にはしていませんので、ご注意願います。今回、予約が早くから埋まってしまい、もういいやと観ていない方も多いと聞きます。私も、ちょっとそんな気になりましたから。でも、やはり、無理してでも観た方がいいような気がします。やっぱり、面白くて素敵ですよ。LINX'S。そして、それを盛り上げようと頑張る人たちの姿は>
<A ver.>
・ダディ×ダディ : KING&HEAVY
男同士二人。一人が童貞卒業。そして、なぜか妊娠。
どんな子が生まれるのか。まだ、性別も分からないし、名前も決めていないが、ダディと呼ばせることだけは決めている。
野球が上手いが時代なのかサッカー選手を目指す子、門限に厳しい父をウザいと反抗期迎える年頃の娘に育つのか、引きこもりで生まれてきたことを否定するような悲しい子になるのか、医者になり可愛い婚約者を連れて来るがこの数奇な出生を知りフラれてしまうのか。
父から生まれるという始まりから間違っている。私たちを産まないでくれ。まだ見ぬ子供達からそんな言葉を突きつけられた男。そして、その友人は・・・
永井荷風の西瓜を思わせるような話ですね。子供がどうなるかなんて分からないから、子を持たないことを正当化しながらも、なんかやっぱり寂しいのかなあみたいなことを感じさせる話だったと思っています。
自分が親になっていいのだろうかと産むこと自体への不安、きちんと子供が育つだろうかと想像する育児の厳しさ。それでも、やっぱり子供と一緒に過ごす時は、きっとこの作品のように、楽しく、明るく、素敵な時間なのでしょう。男は、女が妊娠と同時に母親になるのに比べて、子供がこの世に誕生して、自分の目でその子を見て初めて父親になるなんてことを聞きますが、その視点を女性にしてみたような感じです。その結果、男の幼稚な言動が浮き上がっているような気もします。
爽やかな印象が強く、くどさの無い爽快な楽しさを醸されています。
・新・サムライ・仁義に散る。 : 劇団ちゃうかちゃわん
今年、学内公演で拝見した作品を改訂した作品。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/110-342b.html)
全体的には、小ネタとしての時事ネタを自重して、子供たちが、自分で人生を切り開ける世の中、なりたいものを目指せる自由な風潮が脅かされつつあるような今の世の中自体を時事として大きく見せているような感じでした。
かつて戦争時代にあった、誤った道へと進む世の中を経験した者たち。それを、その人たち自身が変えて、今の自由な世の中を創り上げてきたのだと思います。それが、今、また崩れようとしている。年老いた男たちが、未来の子供たちのために、一つの人生のけじめをつけて、最後に築き上げてきた世の中を守ろうとする。
その常に未来を見据えた男たちの生き様を描いているようです。
にしても、楽しみにしていたホモ研究者は出ず、あの可愛らしかった孫はどデカい男になっており、宮本武蔵が腹立つくらいにかっこいいキャラになっており・・・
初演を観ていると、違うだろとツッコミたくなるところが多々あります。
ちょっとかっこよく魅せるところを重視したのかな。
・aimo : 劇団ほどよし
人の体を食らうaimo細胞に感染した女性。実験体として興味を示す医師と女性研究者。
体の中では、ネガティブと戦う魔法少女が、血液や神経たちと共に駆け巡る。
そんな頃、わくわくバーガーショップでは、ある来訪者によって、バーガーを全て食い漁られようとしている・・・
魔法少女が心、わくわくバーガーは脳なのかな。バーガーはこれまでの大切な記憶か。
aimo細胞に感染した女性をマクロ視点で見せながら、ミクロ視点で体内組織のメタファーとなるキャラたちの戦いの姿を見せているような作品。
最後は、私利私欲にまみれた女性研究者にaimo細胞が伝播感染するというブラックオチ。
癌が自分たちの体に晒される汚染物質から生み出されるように、aimo細胞はネガティブ、汚い心から自分の体に生み出されるようなものなのだろうか。自分のことだけを想い、周囲を思いやることを忘れた現代人に突きつけられた新しい不治の病のような印象がじわじわと恐怖を醸す。
綺麗にまとまりのある良作。体を蝕み死に至らせるという狂気をマクロ視点で見せながらも、体内のミクロ視点では、ちょっとおかしなエンタメ色豊かなキャラたちのドタバタで楽しめる。
多様な作品をこなしてきたこの劇団の魅力がよく発揮されている作品のように思う。
・演劇好き?そう、好きなんだ。僕も好きだよ。だけど僕はセックスの方が好きだな。セックスは気持ち良いし、楽しいじゃん。だから、みんな、観に来なくて良いよ。家でセックスしようよ。それでも来たいなら、おいでよ。劇場で僕とセックスしよう。 : がっかりアバター
まあ、下ネタ満載のミュージカル調の舞台で、延々と作・演の坂本アンディーさんを讃える作品。その強烈なエログロの世界は信者化しているファンも多いようで、何か宗教的な雰囲気すら感じて無気味。
どんなアンディーさんでも、凄いよ、大丈夫だよみたいな感じの歌を聞かされるが、時折、ふと、これはアンディーさん大丈夫じゃないしと頭によぎりながら観る。
最後は、もうええかげんにせえよという客の気持ちが生み出したかのような女性が現れ、アンディーを刺し殺す。めでたし、めでたしと言えば、そうも思えるハッピーエンド。
・ハイパーフィクション : 匿名劇壇
隣の部屋の女性を目隠し、縛って監禁している男。
さらに部屋に入ってきた女性を刺したりして。
女性たちが大騒ぎしたら、うるさいと一喝して、各々、部屋に戻す。
訪ねてくる頭のおかしな人に付き合って、演劇をしている男。いや、させられている、させている・・・
話の内容は、ぐちゃぐちゃになってとても書けませんが、まあ、こういう作品を創られますよ、ここは。
先を読まさないようになっていて、最終的にどこに着地するのか、訳が分からなくなるのですが、なぜか信用してそのまま流れに身を任せて観ることになります。
感想は書きにくいですが、いつも思うのは演劇だなあってこと。
今回も演劇の自由さでしょうか。
一瞬で、その人の人生を虚構だけで取り戻したり、作り出したりする。それが本当、嘘であろうと、舞台では切り替わった人が存在するみたいな不思議な感覚が。
・王女クリトリーナ : 犬と串
城に住む王女クリトリーナ。何やら悩ましげな表情をして外を見ている。
王様に変な王子と結婚させられることになっているらしい。
自分には心を寄せている人がいる。街でバイブを売る男。
クリトリーナは妹の力を借りて、城を脱出、街へと向かう。
ところが、バイブ売りの男は身分が違うから城へ戻れと。
その場を去り、悲しみにうちひしがれるクリトリーナ。やはり、彼女のことを忘れることができないバイブ売りの男。
しかし、王様と王子の追手も二人に迫り・・・
この後、ひどいことになります。まあ、端的に書けば、男は全員、全裸になって踊ります。
観に行く前から、今回のLINX'Sは下ネタが多いと話題になっているのを風の噂で知っていました。何やら、本当に怒って帰られてしまった方もいらっしゃるのだとか。
そんな噂を聞いて、がっかりアバター、やり過ぎたんだろうなあと思っていましたが、とんだ濡れ衣。ここじゃないですか、真犯人は。それも、下ネタとしては、相当な重罪。びっくりしました。
ただ、どうしてもその下ネタに目がいきますが、作品自体にも感動しています。
無声映画のようなスタイルで話を展開させますが、それがテンポ良くて、どんどんはまってきます。
ところどころで、ポーズをして、暗転、プロジェクターでセリフが映し出されるというのが基本スタイルとなりますが、最初は面倒くさい演出だなあと思っていましたが、途中からこの感覚が妙に心地よく。
こんな見せ方もあるのかあと感激。これは最高でした。
<B ver.>
この回は、オープニングアクトあり。
劇団酒落乙のメス猫ドラえもん。
性に目覚めるのび太。その虜にさせられたドラミちゃん。スネ夫を亡くした喪服姿のママ。存在感があまりないジャイアン。完全にショートしているドラえもん。オナホールにされるしずかちゃん。
とにかく性や暴力の描写がえげつなく。まあ、嫌悪感を抱かせること。
・必殺仕事犬2014 : 劇団ほどよし
部活対抗学園祭を控えた、家庭科部の部室。
なぜか、演劇をしなくてはいけないことになる。
パフォーマンス勝負でいくか。やはり、演じないとダメなのでは。
揉める中、ネットで何かして欲しいことの依頼を受け、当日、その犬となった自分たちがそのために駆け回るという演劇をすることに・・・
オチがよく分からず。話としてはこれからというところで終わり、また、次回LINX'Sにも出演してその続きの作品をしますというアピールなのだろうか。
今回、LINX'Sに参戦することになった劇団自体の姿を描いたメタフィクションになっているのだろうか。
方向性がはっきりせず、試行錯誤を繰り返し、着地点がいまひとつ不明な舞台上の姿。それが、そのまま、この公演でのB verでの劇団の姿になってしまっているかのよう。
正直、A verの出来が良かっただけに、消化不良。
・愛をとりもどせ! : KING&HEAVY
世紀末。
勃起力ある者が全てであるという世界に君臨するマラ王。
そんな世界で、チンシロウは、ある日、悪者に襲われているバイアグラを村に届ける少年を助ける。
彼には辛い過去がある。
最愛の妻、カリヤを、マラ王に奪われた。その日から、鍛錬を積み、強い力を得た。
そして、今こそ、マラ王を倒し、カリヤを・・・
あの漫画の下ネタパロ。
・・・ではあるのだが、なかなかに悲しい話でもあり、カリヤはすっかりマラ王の虜になっており、愛の心はチンシロウにはもはや向けられなかったというオチ。そして、その憎しみの下、チンシロウは新たなマラ王となる。
もしかしたら、マラ王も、チンシロウと同じような悲しみを背負い、各地の女をさらい、愛無き性欲を昇華させる日々を過ごしていたのかと思うと、その連鎖がより悲しく見えてきます。
アフタートークで本当にフラれた男の悲哀をテーマにしていると言われていました。ただ、どうでしょうかねえ。この劇団、かなりのイケメンのお二人で、本当にそんなフラれる男の悲哀を分かっているのでしょうか。イケメンと若い勃起力を活かして、マラ王のような姿でいるような気がしてならないのです。
・ゲリベンカーニバル~おまんこ達がズブズブと鳴いた夜~ : がっかりアバター
窮屈だと制服を脱ぎたい女。性的な行動をする勇気は無いが、その子に恋する男の子。生きる主導権を得るためにも性を強要しようとする先生。
性への妄想は拡がり続け・・・
はっきり書いてしまうが、これ嫌いな作品。
下ネタとかグロが嫌いとかではなくて、その出し方が、一つ一つ置いていくような感じで、そこから逃げ場が無くなるような不安感の方が出てきてしまう。
観ているうちに、どんどん、距離を置いて、心を閉じて拒絶してしまうようになる。
・新・サムライ・仁義に散る。 : 劇団ちゃうかちゃわん
上記、A ver.の感想を参照。
男だなあって感じは、やはり出ています。
ただ、A ver.の時も思いましたが、若干長いですね。
20分芝居が並ぶ中で、30分近い上演時間だと、体の慣れの問題か、体感時間が長くなり、最後の方で集中が切れます。この作品の最後の見せ場。男の誇りを熱を込めて吐き出すシーンでそうなるので、ちょっと困ります。
特に今回は、単発の面白キャラで魅せるよりも、全体的なメッセージ性を考慮した仕上がりになっているようだったので、残念感じがします。
・王女クリトリーナ : 犬と串
上記、A ver.の感想を参照。
A ver.、B verを連続して観ましたが、その休憩中にちょっと気になる方がいて、調べました。
この作品にご出演の堂本佳世さん。どこかで観たことあると思って、記憶をたどっていたら、恐らく、観劇をまだ始めたばかりの頃に拝見した大阪バンガー帝国。確か、コタツから出られない女みたいな話だったような。その時、凛とした綺麗な女性だなあと思って覚えていたんですねえ。いつの間にか、東京の方でご活躍されていたようで、しかも、すっかり私の記憶を消し去るようなお姿で再会。東京、怖い。
・夢の忘れ物 : 匿名劇団
物が散乱した部屋で、なくしたUSBを探す女性。友達も、あり得ないくらいに汚いゴミだらけの部屋を探し回る。
女性は頭の中で考えたことが外界に作用するかみたいな研究をしている。その論文ファイルがUSBには入っているらしい。
そのうち、女性は妙なことを言い出す。
USBは夢の中でなくした。この、今いる夢の中で。
ここは夢の中なのか。自分たちはあなたの夢の中にいるのか。騒ぎ出す女性たちの中にさらに、一人の男が訪れ・・・
これも、A ver.同じく、話の内容を書くのは難しいですね。
夢。ただでさえ不確かなものなのに、階層構造も設けて、なんかよく分からなくなります。
まあ、最後は現実に戻って、ニヤリとするような形で締められますが。
面白いのは、会話の中に、全てが自分の思いどおりにはならない、自覚したら醒めてしまう、捨てられない、自分でやらなくてはいけない、見ているだけでは何も変わらない・・・みたいな、寝て見る夢と人生で追いかける夢を同調させたような言葉が出てきます。
巧みさが滲む作品です。
もう、12本観劇でフラフラですが、最後にアドシバもあり。
下ネタが話題になっているということで、下ネタをした劇団としていない劇団に分かれて対決。
組長の秘密というオープニングテーマでスタート。エンディングは、○○だけに○○という言葉で締める。
攻める下ネタ有り組、受ける下ネタ無し組といった感じでしょうか。
あのむちゃくちゃだった犬と串の方たちの懸命な頑張り。単なる、おふざけ劇団ではやはりありません。あの作品も一つの演劇として真剣なのでしょう。
もう、疲れているので、しっかり終わらせてくれよといった感が強いのですが、なかなか終わらず、いや終われず。
最後に決めてくれたのが、オープニングでかなりの嫌悪感を抱いた酒落乙の方の機転の効いた一言でした。よくやってくれたと、ちょっと好きになって会場を後にする。
誰一人、嫌わさず、みんな好きにして劇場を後にさせる。
LINX'Sの醍醐味を最後に見せたイベントでもありました。
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コメント
ご来場、誠にありがとうございました!
しかもかなり一作品毎に真摯に細かくレビューと劇評をありがとうございました!
このブログを自作品のリボーンへのテキストにする劇団さんもおられると思います。そして大なり小なり劇評は僕の考えとも一致しており、
自分の記憶を辿るテキストとしても非常に優れているので有難いです。
本当にありがとうございました!
また劇場にて!
投稿: 石田1967 | 2014年10月 1日 (水) 08時03分
あらすじとご感想ありがとうございます!
SAISEIさんは毎回本当に
すごいと思います!
内容のほとんどをつかんで
わかりやすくブログに書いてくださるので。
正直な感想ありがとうございました!
投稿: 劇団ほどよし村上琴美 | 2014年10月 1日 (水) 22時24分
>石田1967さん
コメントありがとうございます。
もう倒れるぐらいに疲れ切っているでしょうに、わざわざ、本当に申し訳ないです。
いつものごとく、いい公演でした。
知っている劇団は、その魅力をさらに高め、知らない劇団は、興味をそそられるという。
これを機会に、観劇に足を運ぶ人が増えることでしょう。そして、良いのか悪いのか、私のようにはまってしまう人も・・・(^-^;
また、どこかでお会いしましょう。
素敵な時間をありがとうございました。
投稿: SAISEI | 2014年10月 2日 (木) 10時14分
>劇団ほどよし村上琴美さん
コメントありがとうございます。
あれですよね。魔法少女の方ですよね。
aimoはとても楽しく、かつ深さに考えさせられる作品でした。
あんな人たちに体を守られているのかと思うと、ちょっと不安なキャラばかりでしたが(^-^;
仕事犬は、またしっかり時間のとれる公演で期待かな。
村上さんはじめ、劇団の益々のご活躍を期待しております。
また、本公演も観に伺います。
楽しみにしております。
投稿: SAISEI | 2014年10月 2日 (木) 10時19分