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2014年9月21日 (日)

緩やかなモンブラン【プラズマみかん】140920

2014年09月20日 ウィングフィールド (105分)

前半は、コメディーが強めに出ていて、この劇団らしくないなあといった空気があり、それでも、実はそちらの方が自分には好みのようで、けっこういいなあと思いながら安心して観ていた。ところが、後半になっていつの間にやら、この劇団らしい何か皮肉とかブラックさが渦巻き始めて、最終的には、手放しでは楽しかったとは言えない、不安とか恐怖を心に残して終わる。
たぶん、この感覚が作品の話自体にもあるように感じる。
緩いなあ、ほんわかしているなあ、小鳥とか可愛いなあ、弾けているなあ、キャラ作ってるなあなんて、のんびりしていたら、その影には心に闇を残すおかしなものが緩やかに姿を現さないように迫ってきていたのだろう。
変なものを心に侵入させてしまったようだ。モヤモヤと不安な気持ちが残る。この緩さを巧妙に活かした仕掛けに早くから気付いておけばよかったのだ。

ある老舗の菓子屋、新屋。
祖父の代から続いているだけあって、少し堅苦しそうな社訓の下、信頼を失わない正直に忠実な営業をしているみたい。
原材料にこだわり、人件費もかさばる手作りの工程。ネットとかで大々的に宣伝をするわけでもなく、地元密着で商売をする。
そんなこともあってか、また、扱う商品が金太郎飴という、いまどきはやらないものであることも災いしているのか、経営はかなり苦しい状況にあるようだ。
今の店主は長男。妻に先立たれた後、若い後妻をもらっており、妻はまだ頼りなく、慣れないながらも夫のため、店のために精を出して働いている。
経理担当は次男。リストラにあって、ここで働かせてもらっているらしい。妻は化粧品の営業をしており、まずまずの稼ぎのようだ。娘にはスケートをさせていて、プロを目指すために名門校に進学させている。妻は手放しでそのことを喜んでいるが、夫の方は、娘にそこまでの能力があるとは正直思っていない様子。
バイトの若い大学生の男。4回生で、なかなか真面目で頭の回転も速く、優秀そうなのだが、内定が全くもらえないらしい。この店のお菓子作りの姿勢に惚れこんでおり、もしかしたら、この仕事が天職なのかもしれないと思ったりしている。
長男と前妻の娘は、昔は真面目な子だったのだが、父の再婚への反発もあるのか、アラサーを迎えて、ロックミュージシャンを目指している。と言っても、惚れた男が完全に自分に陶酔するタイプのロックミュージシャンであり、その彼氏のためにといったところが大きいようだが。こんな家は出て行き、二人で東京に行こうと考えている。

ある日、長男と次男は、いつものスナックに行き、そこで働く女の家でもう一杯といったことになったようだ。
でも、長男はタバコを買うので、後から行くと言って、そのまま行方不明になってしまった。おかげで、次男とスナックの女は二人で一晩を過ごすことになる。と言っても、一晩、女と一緒にジグソーパズルをしただけである。女にとっては、何か、パズルをすることで日々を相殺するという意味合いがあるらしい。
翌日、菓子屋にとんでもない事件が起こる。有名菓子店のオーナーが、よく分からないが大きな小鳥を二羽引き連れて、菓子屋にやって来る。目的は、この店を有名菓子店の主力商品であるモンブランを販売する店に変えること。要はこれまでの代々続いた暖簾を下ろして、有名菓子店の暖簾を掲げろということ。しかも、長男がサインした契約書を持参している。
オーナーは、あなたたちのためを思ってすること、私たちは自分のためではなく、いつも人のためを思って行動することをモットーとしているとささやく。
長男は未だ帰ってこない。
残された者たちは、突然、ふりかかってきた店の危機にどう対処すべきかを議論し合う。オーナーは、最後には必ず、あなたたち自身が自分の思った答えを出すだろうとばかりに、そんな姿をただ見守っている。

次男の妻のアイディアで、金太郎飴の包装紙の模様を変えてみるが何の効果も無し。
そんな中、次男の妻が扱う化粧品がトラブルを起こして、テレビ報道されるくらいの大規模な自主回収。妻は会社からは何も聞いていなかったらしい。
その化粧品を長男の娘の彼氏に売りつけており、ミュージシャンの命とも言える顔にシミが出来てしまう。それがきっかけで、バンドは解散。娘はたやすく捨てられる。悲しみに泣き叫ぶ娘であったが、彼氏が去ってようやく、今の自分を見詰めることが出来るようになったのか、その恥ずかしい姿に気付くようになる。
次男の娘は学校で、母の化粧品をネズミ講まがいで売っていたらしい。母のためだったという娘の言葉。本当はスケートを辞めたかったのかもしれない。学校を退学。実家に戻って来ることになる。
次男は考える。長男は、昔から何でも出来る優秀な男だった。でも、全てを捨てて、実家を継いだ。それがなぜだったのか。そして、今、なぜ、それを捨ててしまったのか。
スナックの娘の家で、この苦難の状況を愚痴まじりに話しながら、ジグソーパズルをする。完成への最後の1ピースが無い。女はそれで終わり。全てを相殺して終わりだと言う。でも、次男はその最後の1ピースを探して、気が触れたように彷徨い歩く。終わりには出来ない。諦めることは出来ない。

長男は、その1ピースを探しにどこかへ行ったのか。完成しなかったジグソーパズルを、それはそれでいいとして、全てを相殺。新たなパズルを組み立てるために旅に出たのか。

度重なる苦難で、家はもうパニック状態。そこに、大きな小鳥たちはつけこむように、みんなに暖簾を下ろすように仕向けていく。オーナーの指示では無い。そうすることで、オーナーに喜んでもらえると思っているから。
正気に戻った長男の娘は、マーケティングの能力を持っているようで、冷静に店の状況を分析する。その答えは、やはり、オーナーの話に乗った方がいいというもの。現実的に店の立て直しは難しいし、仮に長男が戻って来ても、もはやどうかなる話ではない。
オーナーは、大きな小鳥たちがみんなに接触して、店の暖簾を下ろすことを強制しようとしたことを深く謝罪。責任は重いと、小鳥たちに罰を与え、舌切り雀のごとく、その舌を切ってしまう。みんなは、そんな姿から、本気で店のことを考えてくれていると信じるようになる。
それでも、バイトの男は、ここの飴作りを守りたいと立ち上がる。それなら私も一緒に頑張ると後妻。次男の夫も、娘も帰ってくるので、生活の問題もあるのだが、出来ることなら、今さら雇われ人にはなりたくない。やはり守ろう。みんなで一致団結してなんて、いいムードの中、バイトの男に一本の電話。第一志望の会社に内定が決まる。あっさりとお別れの挨拶をして店を去る。

オーナーがささやく。何も変わらない。店の心は、たとえモンブランを作るようになっても、あなたたちの胸の中にあるなら大丈夫。
これはこれでいいんじゃないだろうか。
自分たちが本当にやりたいことをすれば。するべきではなく、したいこと。
次男夫婦は、帰って来る娘と、スケートをさせるために食事制限させていたのでいかなくなった、あの焼肉屋でまたみんなで楽しく語らい合いたい。その気持ちはきっと、自分たちが押し付けていたのかもしれないプレッシャーから解放された娘も同じだろう。幸い、暖簾を下ろしても、これまでの経理と営業の経験をかってくれて、働かせてくれるのだし。
後妻だって、自分の世代に老舗の店は合っていなくて無理をしていたところがあるはず。夫がいなくなったことをきっかけに、今風の可愛らしい店の方がイキイキと活躍出来るのかも。
ずっと彼氏の呪縛に囚われていた長男の娘は、持ち前の冷静な分析能力は、最新のビジネススタイルで勝負するここでこそ活かせるはず。

全てをリセットして、新しい道へと再出発。
改装した店の中では、みんなの楽しそうな笑い声が聞こえる。
オーナーと大きな小鳥たちは顔を見合わせて微笑んでいる。小鳥は二枚舌だから、一枚切っても別に大丈夫。オーナーは小鳥たちにそう言い聞かせておいて、舌を切るパフォーマンスをしたようだ。
全てが上手くいった。喜ぶオーナーの下で、舌が二枚あるはずもなく、二匹の小鳥は力尽き・・・

どう捉えればいいのだろうか。 何かに縛られていた人たちが、災難とも思えることをきっかけに、それから解放されて、災難を自分たちの本当の幸せへと変えていく。
話としてはそうなのだが、何か裏がある。皮肉めいたブラックなものが隠されている。非常に歪んでいる印象が残る。
自分たちで変えていったのではなく、周囲に流されていたら、そうなったみたいな感じだからだろうか。
結局はこれまでと何も変わらないのではといった不安な感覚も残る。
みんなは本当にやりたいことを出来る環境を手に入れたのだろうか。 最後にオーナーと小鳥のブラックなシーンがあるから、そう感じるところもあるが、仮にそれが無くて、みんなの笑い声で終わっていたとしても、その笑いはひどく渇いているように感じるものだった。

劇中に金太郎の話が語られる。金太郎は色々と活躍するが、あの担いでいるマサカリを使ったことが無い。つまりはイメージ戦略だというのだ。じゃあ、あれで強さを誇示して、本当は弱かったのかというと、そんなことは無い。実際に強かったことは確かだった。現に、ゆくゆくは、その力を認められ武将の下で働くようになる。
マサカリを担がなくちゃいけない。本当は強いんだからそんなものいらないけど、金太郎だから仕方ない。
旦那が失踪しても店を守らないといけない。若いんだから好きにすればいいけど、この人と共に生きると結婚する時に決めたから。
スケートをして親の期待に応えないといけない。自分の将来なんだから、好きなことをすればいいけど、親が自分のために頑張って仕事をしていることを知っているから自分も頑張らないといけない。
菓子屋で頑張る。本当は希望する仕事があるんだけど、他の仕事が決まらないから無理にそう思っている。
ロックミュージシャンを目指す。好きな男のそんな夢を無理に自分にも同調させるしか、彼の傍にいる手段が分からないからそうしている。
オーナーに認められて褒められるために、体が大きくなろうと小鳥でいなくてはいけず、何でも言うことを聞いている。
みんな、嘘をついて生きているようだ。その先に、本当の自分の完成形は無いのに。
完成することは無いジグソーパズルの最後の1枚のピースを求めて彷徨う人の姿がそんなことを表しているのだろうか。
だったらどうしたらいいんだろう。 スナックの女のように、それは相殺して、また、新しいパズルを始めるのか。でも、それもまた完成しないパズルだったりするのではないだろうか。 自分のために生きる。するべきだということに囚われず、正直にしたいことを考えて、それを実行する人生を送る。
そうしたら、パズルは完成するのか。そして、完成したら、その時、それは何を自分にもたらしてくれるのか。

そんなことを考えていたら、結局はそんな必ず完成するパズルを始めから選ぶなんてことは不可能なのかなと思う。
それよりも、どこで気付くかじゃないだろうか。
最後の1枚になってしまったら、それはもう執着せざるを得ないだろう。
途中で、無理なのかもと気付いたり、もっと自分に合ったパズルが見つかれば、新しいパズルを始めたりしてもいいのかな。それが、自分に正直な生き方なのかも。
長男は能力があるから、そんな人生を送ってきていたような気がする。バイトの子も似た感じだが、こちらはちょっと安易さが漂う。と言って、すぐに相殺なんて言って辞めるスナックの女の生き方も逃げのように思うが。
場合によっては、最後の1枚が無くても、完成と思える、そのことにかけてきた信念の強さがあればいいのかも。あのロックミュージシャンは、そんな感じなんじゃないだろうか。
作品のラストに黒いものを感じるのは、みんながこれからの人生、これからするパズルは必ず完成すると盲目的に信じているようなところか。自分たちが決めた道と思っているようだが、決めたことなんて一つも無い。周囲がそうさせたのだ。
短絡的で安易な姿に歪みを感じるのかもしれない。

新屋から、オーナーの有名菓子店傘下としてカイコ屋となる。カイコは懐古なのかなあ。名前とは逆になるが、菓子屋は家内制手工業から、機械制工業へと変わる。
手作業だから愛がこもっているとは限らない。機械で作っても、その機械を使う人の心があるならば、その方が愛がこもるのかもしれない。
手作業だと自分で決めて、自分が思ったことを行動しているように思うが、もしかしたら、いつの間にか見えぬものにやらされてしまっているようになるのかも。 機械を使った方が、自分たちの想いをやらせる機械に伝わるように、常に考え、新たなことを導入しようとするのかも。
新しい技術の中に懐古の精神。新屋は確かに生まれ変わるような印象も受ける。
だが、もしかしたらカイコは解雇なのかもしれない。執着して変えようとせずに、時代の波を超えようとしなかった新屋。自分たちのスタイルを完成もさせずに、ただ時を経過させた面々を解雇するための店。
なんとなく、そんなことを感じるあたりに、ブラックな匂いが残る・・・

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