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2014年9月 8日 (月)

はんかい電車【山尾企画】140907

2014年09月07日 阪堺電車内 (50分、休憩10分、40分、休憩10分、25分)

再演も決まったみたいで盛り上がる中、何とも心苦しい感想だが、率直に書けば、まだまだ物足りず。はっきり書けば、未完成のまだグダグダの作品を見せられた感覚が残る。退屈であまり面白くなかったと書くのはちょっと厳しいかもしれないが、その言葉に近い感想を抱いている。
もちろん、こんな大胆な企画を立てて、演劇の可能性の凄さを知らしめたことの評価は大きいが。

電車で芝居をする。このことにウェイトがいき過ぎて、もうそれだけで満足みたいになってしまっていないだろうか。
電車で芝居をするから、こう面白くなるんだということが感じられない。外箱の素晴らしさに感激して、開けてみればあまりいい物は入っていなかった、いつもの劇場の箱の中に入っている物と変わらなかったといった感じかな。

人生悩める者たちが乗る電車の中で、同じように悩む者や、過去にその悩みを乗り越え、人生を全うした者たちが交錯する不思議な空間で過ごす時間。
阪堺電車の歴史的な背景も盛り込んで、そんな新しい人生への一歩までが描かれる。
内容は魅力的ではあるが、なんか、グダ~っと進行し、曖昧に終わってしまった感が残る。

阪堺電車、恵美須町駅。堺筋線、恵美須町駅の4番出口を出たらすぐにあった。
実は、駅を見たのは初めて。もちろん、その電車に乗るのも。そうかあ、あの旧ロクソドンタブラックに行く際に見たことのある阿倍野あたりを走っている路面電車はここにも通じていたのか。
一心寺シアター倶楽なら3番出口、インディペンデントシアターなら1番出口と、これまで何回も通ってきた駅だが、観劇以外の目的では降りることが無いので、存在すら知らなかった。

ホームには、9/7、15:02発の電車が到着している。切符は、既に人生を変えませんか?といった内容の案内状と共に送られてきており、それを見せて乗り込む。
既にたくさんの乗客でいっぱい。普段の観劇で顔見知りの人もいる。みんな、退屈な日常を捨てて、何かを変えたいなんて思っているのだろう。私だって例外ではない。
車内では、ごく普通の若い男が妊婦さんに席を譲り、好青年っぷりを見せている。二人は知り合いみたいだが、男の方は女性に曖昧な態度をとっている。
頭のもじゃもじゃが激しい若い男はうつろな目で暗い表情をして突っ立っている。何かをしでかしそうな漠然とした狂気が漂う。
既に日常を捨てているかのように見える奇抜なピンクのドレスに身を包んだ若い女性。携帯をいじるか、クマのぬいぐるみに話しかけるかをしていて怖い。
551の袋を抱えた、何やら切羽詰った感じの男が入り込み、妊婦に席を譲った若い男に話しかける。知り合いみたいだが、またしても、男の方は曖昧な態度。どうやら、551の男は、切符を持っていないみたいだ。それでも、この電車に乗らなくてはいけないという切迫感に溢れており、慌てふためきながら一度電車を降りる。
そうこうしているうちに、今回のこの電車の旅の主催者だろうか、白塗りに白衣という怪しい恰好をした男が乗り込んでくる。
定刻になったので、電車は発車する。乗り遅れた551の男は、ホームを走って追いかけてくるが、間に合わない。

白衣の男から、今回の旅の注意事項と主旨が伝えられる。曖昧なところが多い。なぜ、私たちはこの電車に乗り込んでしまい、そしてその旅の終わりにはどう人生が変わるのか。
そんな、まだ不可解な空気が漂う中、のんびりと電車は進む。
ふと、白衣の男が、先ほどの若い男が忘れた551の袋を開けると、中には明らかに時限爆弾装置が入っている。同時に、停車駅から、先ほどの男が頑張って追いついたみたいで乗り込んでくる。
電車ジャック。話を聞けば、彼は高学歴エリートだったにも関わらず、就職は決まらない、人生の目標も見出せないで、遂にキレてしまったらしい。
爆発させると乗客たちに脅しをかける。男が落ち着くように冷静になだめたり、ピンクドレスの女性が頭を逆撫でさせるような発言をして、状況を悪化させたりする中、もじゃもじゃ男は、どうやら死にたいと思っていたらしく、爆発させようと逆にふきかける。いざ、そうなると躊躇してしまうらしく、551の男も少し冷静さを取り戻す。

電車には、この後も色々な客が乗り込んでくる。
白塗りの男は、乗客の子供を泣かし、一駅区間、好きなだけ踊って降りる。
カオナシは、折り紙のカエルをおなかから出してみんなに配って、すぐに降りてしまう。
外から見える大和川では、なぜかパンダが川に飛び込んでいる。

和服姿の男。賭け将棋で、妻や子供を自殺未遂にまで追い込んだらしい。
同じく和服姿のキップのいい女性。不倫で悩んでいるのだとか。
この二人、どうも話を聞いていると、坂田三吉と与謝野晶子。後に将棋名人、歌人として歴史に名を馳せる人たちだ。その人たちが、今、この電車に乗り込んでいる。
どうやら、この電車には今の人生に不安を抱え、悩んでもがいている人が乗っているみたいだ。
一見、幸せそうな妊婦も、夫が借金を抱えて逃げてしまい、そんな男との記憶も、さらには二人の子供すら無かったことにしてしまいたいと願っているみたいだ。
551の男はその悩みは明らかだし、もじゃもじゃ男は漠然とした人生の不安があるみたい。底抜けに明るいピンクドレスの女性だって今の自分を変えようとしているようだ。
ごく普通の男も、これは後に分かるのだが、記憶障害なのか、人の顔と名前が覚えられない。常に自分と関わる人との接点を見出せない孤独な状況で、もうそれなら一人だけの世界にこもってしまえればと考えている様子。

電車は終着駅に近づく。
白衣の男が説明する。彷徨う人たちを乗せたこの電車。電車が走る中で、過去の人が乗り込んでいるように、この世なのかあの世なのかも不明瞭な世界に入り込んでいる。このまま終着駅で電車を降りてしまえば、そこで人生は終了。また、そこから違う人生を来世で歩む。ただ、電車は折り返し、また始発駅へと戻る。そうすれば、また元の人生を歩める、いや、歩まなくてはいけないということになるらしい。
判断は各々にゆだねられる。

終着駅で10分ほどの停車時間。
始発駅に向けて、発車する電車の中には、みんな揃っていた。元の人生に戻る決断をしたみたいだ。
ただ、もじゃもじゃ男だけは、もうこの人生を終わると暴れている。さっきまでは、みんなの人生を破滅させようとしていた551の男が逆に説得に回っている。
でも、結局、電車はもじゃもじゃ男を残して出発。ただ、もじゃもじゃ男の真の気持ちは電車に乗りたかったみたいで、彼の唖然とした表情でホームに立ち尽くす悲しげな姿を見て、電車は走り出す。

途中、坂田や与謝野は、自分たちの生家のある駅で降りる。今の世界では二人は成功者としてたたえられているが、今、一緒に電車にいる二人は、まだ、これからの人生を頑張らなくてはいけない人たちだから。
与謝野は降り際に、妊婦に声をかける。同じ女性だからこそ、その苦しみが理解でき、それに負けず頑張れと伝えたみたい。女は強し。それを身をもって証明する人生を歩む与謝野の言葉は、不幸な状況に置かれた妊婦の凍った心を優しく溶かす。
坂田も、若いからこそ、男だからこそ、今やらなくてはいけないことをとことんやれと。自分の進むべき道を見出し、それに向かって信念の下にひたすら励み続けた人生を歩む坂田の言葉も、他の者たちの心に響いたみたいだ。
そして、途中、またカオナシが乗り込んできたと思ったら、それはもじゃもじゃ男だった。
気づけば、こういうことになっていたのだとか。まだ、今の人生を生きてみようと思った彼の覚悟に神がチャンスをくれたのか。
残った者たちは、この電車で出会ったことをきっかけに仲間となって、また、苦しいながらも各々の人生を励ましあいながら進もうと電車を後にする。まずは、記憶が無い男の生家をみんなで探すことから。そこから、何かがきっと始まるのだろう。

と、これで騒がしい人たちがみんな電車を去り、私たちは始発駅からまた元の人生へとなるはずだったが、何とあの551の男の時限爆弾装置が再び稼働する。
もう、元には戻れず、ここで終わりなのだろうか。
これが私たちの運命なのか。
白衣の男は、そんな運命なんてものは、こうして切り裂いてしまえばいいとばかりに、時限爆弾装置の線にハサミを入れ・・・

人生に、何か満足感を抱けない、不安があるともがき、どうしていいのか分からなくなった時。変えてしまいたいと思うのは当然だが、それが漠然としたもので変えるためにどう進めばいいのか分からなかったり、全部リセットしてしまえという乱暴なオン・オフの考えに囚われてしまうことがある。
そんな時に、他の人たちはどうなのだろうかと、ふと心を向けてみる。
同じように苦しみ悩む人がいる。そして、いた。
そんな人たちは、強い信念の下に、必死にその人生を突き進もうとしていた。そして、何かを人生で見出して、今の歴史に名を刻んでいる。
別に大したことをしていたわけではない。電車の中で出会った人たちは、悩む自分と同じように決して強い人ではなく、ちょっとしたことで心の弱さを露出してしまうような弱い人でもある。
それでも、今、進んでいる道をあきらめることなく、何とか前へと向かえるように、心を痛めながらも頑張っていた。
そんな姿に勇気づけられて、ちょっと前に目を向けられるようになる時間だっただろうか。
今を生きる若い者たちは、先人の生き方に学び、そして、何も自分一人だけで生きているわけでもなく、一緒に苦しんでもらい、喜び合って進めばいいと気付く。
明治時代から走り続けるこの電車だからこそ、そんなたくさんの人たちの想いが宿り、悩める者たちの心を動かずことが出来たのかもしれない。

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コメント

そんな事になってたんですね

投稿: 阪堺線のカオナシ | 2014年9月 9日 (火) 20時39分

>阪堺線のカオナシさん

コメントありがとうございます。

そうか、カオナシさんは、すぐに降りちゃいますものね(゚ー゚)
再演にはどんなキャラが登場するのやら。
また、楽しませてもらおうと思っています。

投稿: SAISEI | 2014年9月10日 (水) 15時35分

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