ひかげの軍団【スクエア】140919
2014年09月19日 ABCホール (140分)
前半、展開スピードの緩さを感じ、退屈感が出てきて、これ、最後までもつかなあなんて思っていたが、結局、笑っている間に、あれよあれよと時間が過ぎてしまった。
ドタバタでも、勢いじゃなくて、じっくりしっかりと魅せるような感じでしょうか。舞台セットや場面転換などの見事さからも、そんな奥深い力強さを感じます。
そして、勢いじゃなくと書いた上の言葉には反しますが、世で言えばおっさんの4人が、全力疾走です。
大笑いできる作品。そして、そんな中にも、人生訓のようなものが浮き上がる楽しい作品でした。
さびれたテーマパーク千早赤阪歴史村にある歴史座。
豊臣、徳川の戦いの裏にあった、服部半蔵と猿飛佐助の忍びの戦いを描いた作品、日影の軍団を今月は上演している。
と言っても、4人だけでやってるので、それはもうしょぼいもの。忍法シーンなど、数々のシーンでよく客が怒り出さないものだと思うような演出ばかり。まあ、観に来るのは子供達だから通用しているのだろう。
今日も上演後、役者たちが思い思いに時間を過ごす。みんな、事務所に所属しているようだが、さほど仕事が無いのか、歴史座の芝居仕事だけでなく、歴史村のアトラクションのキャラに扮する仕事を回してもらったりして、小銭を稼いでいるようだ。
それでも、芝居に対する熱意は大きく、来月上演予定の火垂るの墓をパクったような作品の役作りをしたりしている。
そんな歴史座に一人の若い男が訪ねてくる。
4人のうち演出兼役者をしている男が別の仕事で明日から不在なので、事務所に言われて代わりやって来たらしい。
新人で経験も無いのに、何でも出来る気でいる勘違いした若者だ。
対するは、経験だけは豊富だが、スターになれずにくすぶり続ける頭の固いおやじや、ここが好きというのもあるけど、仕事が無いのでとにかくここにしがみついている男、子供も成長して、より一層頑張らなくてはいけないのだが、悲しくも才能が無いのか斬られ役ぐらいしか出来ない男。
こんな連中が、明日の公演のために、急遽、準備を始める。
もちろん、まとまるわけがない。脚本をいじったり、役を取り合ったりとゴタゴタしている間に、夜もふけ・・・
歴史村に朝がやってくる。
公演開始までもう時間が無い。何とかなるだろうという、全く根拠の無い言葉を発し、上演の時を迎える。
会場には、若者の母親がたくさんの友達を連れて来ており、いつもの客層とは全く異なるが、おばちゃんたちで超満員。
日の当たらない者たちの悲哀を描いた作品。日影で懸命に生きる者たちの姿を見せて、世間を見返す。そんなメッセージが込められた作品、日影の軍団。
・・・ということに今、決めた。
不安の中、幕が開く・・・
前半は、急遽、入ることになった新人とこれまで歴史座を守ってきた3人が噛み合わない中、脚本をその場のノリみたいな感じでいじりまくり、物語を破たんさせる。
後半はその破たんした物語を実際に上演するという形。
会場は、このあまりにも哀しい姿に、あきれ笑いのようなもので包まれる。
会社のプロジェクトみたいな感じかなあと思いました。
ジェネレーションギャップみたいなものがやはりあって、あきらめずにがむしゃらにやることが大事なんだみたいな熱い人もいれば、無駄な努力をしても仕方ないからスマートにやりましょうみたいな冷めた人もいる。
でも、熱い人も冷めた人も、具体的にどうすればいいかは分かっていない。いつの間にか、精神論になって、業務は進まない。この作品の場合は、脚本が出来上がらない。
経験を豊富に持つことだけをアピールして、今のプロジェクトにどう有効にそれを活用するのかは示すことが出来なかったり、本などの情報だけを仕入れて、知識はあるけど、同じようにそれの活かし方は経験が無いので分からなかったり。
枝葉ばかり見て木を見ないみたいな感じで、細かなところばかりを思いつきで改善して、全体の整合性がいつの間にかとれなくなる。この作品の場合、脚本を好き勝手にいじって、何の話なのかも分からないようになってしまう。
もうぐちゃぐちゃになっているのだが、自分たちがそうしたことは認めたくないものだから、半ば開き直って、何とかやろうみたいな根拠の無い自信を無理やり持って臨もうとする。
さらには、初めからあったかのように、そのプロジェクトの根幹の精神みたいなキャッチフレーズの下で全員一致する。ひかげで生きる者の悲哀をなんてメッセージは、本当はどこにも存在していなかったはずだ。自分たちのやってしまったことへの正当化のような言葉を、巧妙に創り上げてしまう。
そうやって、出来上がった作品を見ることになるのだが、当然のごとく、めちゃくちゃになっている。
でも、最後はまあ、これはこれで良かったのではないか、そして、次に繋げてやっていこうみたいな雰囲気が生まれたラストで話は締められている。
これも、会社のプロジェクトでも、そんな感じかなあ。
まとまりなく、ゴタゴタ続きで完成した、いや、そうとは本当は言えないのだが、時間切れでこれでいくしかなくなった計画。いざ、やり始めたら、もう、それはトラブルの連発。だから、無理だと言っただろう、どうするつもりなんだなんて、罵り合いながらも、何とか互いに手助けをしたり、奇跡的なことが起こったりして、クリアしていく。
相容れなかった者同士でスタートして、終わった今もそんなところはあるけど、また、共に何かやってみてもいいかもなんて気持ちが生まれていたりする。
もちろん、完全に亀裂を走らせて、プロジェクトもお終いなんてことも多々あるが。
結局、行き着く先は、好きだから、やりたかったことだからってところなのかなと思う。
成功の姿や、その道のりや手段は人それぞれ異なるのは、各々、違った経験を積んできているのだから当たり前のことなのかもしれない。
それでも、プロジェクトを、公演を成功したいんだ、やり遂げたいんだという気持ちが、どこかにみんなが持っているなら、それは決して破たんの道へとは進まないのだろう。
現に、前半、あれだけめちゃくちゃだった4人がやり遂げた後半の劇中劇は、それだけでもまあ面白い作品だったから。
豊富な笑いの中で、日常の生活の中での人生を感じさせる。この作品は再演らしいが、昔から、そんな魅力のある作品を創る劇団だったのだなあ。
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