ある奇跡のものがたり【魔法のチョコレート】140920
2014年09月20日 シアターカフェ Nyan (90分)
ファンタジー作品をお得意とする劇団。
その劇団が、ファンタジーワールドって、何で素敵なのかを教えてくれたような話。
みんなが、自分のために生きて、かつ、自分勝手なんじゃなくて、互いに認め合って成立しているような世界だからなのかなあ。
それなら、そんな世界にしたい。願いを実現するために、私たちが出来ること。ずっと一緒にいたい人と、本当にずっと同じ時を過ごせるように行動することのような気がする。
いつもながらの温かい作品。ブレないファンタジーを通じたみんなの幸せを想える素敵な話だった。
今から何千年も昔の話。
妖精、天使、小人、魔女、悪魔、・・・、そして人間。
そんな者たちがみんなで暮らす世界、いわばファンタジーワールドがまだ存在していた頃のこと。
その中には、クルミラロールという願い事を具現化する力を持つ種もいたらしい。
その世界は、そのうち、天使と悪魔が対立するようになる。天使も悪魔も、クルミラロールの力を利用して嵐や地震を起こしたりして戦い合い、遂にはその力で世界は破滅してしまう。
生き残ったわずかな者たちでもう一度世界を創り直す。その主力となったのが人間。
人間は、二度と世界が危機に陥らないように、特にクルミラロールの力を怖れ、ファンタジー禁止法を成立させる。そして、ファンタジーに関する言動をする者を取り締まる、ファンタジー取締局が設置される。
それから数千年が経ち、人々はもはや本当にファンタジーを忘れてしまった。天使も悪魔もその言葉自体が分からず、空を飛びたいなんてことを思う者など全くいない。
かつての世界を破滅させた出来事もビッグバンという現象が起こったとされている。
設置された取締局も今では、逆にファンタジーを思い出すきっかけを与えてしまうような存在に。それでも、まだ世界には生き残りのファンタジーワールドの生き物がいる。特にクルミラロールは、数こそ少ないものの、寿命が長いため、まだ何処かに潜んでいる可能性がある。そのため、国は取締局は廃止、代わりにビッグバン対策課として、細々と活動させることにする。
ボスとクレアという女性の2人だけの部署。
そこにキャロルという元気のいい少年が新人として配属されるところから、話は始まる。
キャロルは明るく元気一杯の純粋な少年。クレアと一緒にいることが大好きみたい。クレアとしてはお姉ちゃんのつもりだが、キャロルはお母さんとして甘えている。
キャロルは植物好きで、何やら草を絡めて遊ぶのが好き。絡んだ草は、一緒になって大きく成長するらしい。自分たちもそうであればいいと思ってるのか、キャロルはクレアとずっと一緒にいたいと思っている。そんな無邪気な姿に、クレアは優しく微笑みながらも、どこか悲しげな表情をする。
そんな、ある日、ボスから連絡が入る。
ファンタジーを語る、語り部が現れたというのだ。
早速二人は町を捜索。すると、そこには人だかりが。その中で、一人の少女が、確かにファンタジーを語っている。その話は、上記したような世界の破滅から再生までの歴史。
貴族風の天使と聖飢魔Ⅱ風の悪魔といった感じでキャラを巧妙に使い分けた一人芝居で、人々を完全に惹きつけている。それに、話の内容が具体的だ。
ライという少女とシエルというクルミラロールはとても仲良しだった。しかし、世界は天使と悪魔の戦争が起こる。クルミラロールもほぼ全滅して、シエルが最後のクルミラロールとなった。天使と悪魔は、その力を自分たちが利用しようとシエルを奪い合う。シエルを奪われたくないライは、その悲しみの中、世界が生まれ変わればいいと願うようになる。その願いがシエルの願いを具現化する力と同調して、世界が破滅へと追いやられる。その後、人間が世界を支配したが、今では、その世界も分裂して、各地で戦争を起こす悲しい世界へとなっている。
まるで見てきたかのように話す少女。
クレアとキャロルは、少女を捕まえる。抵抗する少女が、嵐よ吹けと言った時、本当に嵐が吹いたりする。偶然なのか、それともまさか、クルミラロールが近くにいるのか。
投獄された少女は、キャロルと色々と話をする。
町で語っていたことは真実であること、クルミラロールは自分の願いは具現化出来ず、人の願いを共有化することでその力を発揮するのだとか。
話し上手な少女に憧れを抱き、キャロルは自分のこれまでのことも話し始める。気取り屋クレアと美少年キャロルの出会いと称する、少女の一人芝居を真似したのだろうがグダグダの作品で。
キャロルは森に倒れているところをクレアに拾われて、行く宛も無いので、共に暮らし、働くことになったようだ。孤児である自分を優しくいつも見守ってくれるクレアが大好きなのだと。
そのうち、少女は自分の名前も名乗る。ノーズというらしい。
ノーズは、とにかくファンタジーを取り戻したい、いや、取り戻さなくてはいけないと考えている。そして、それを禁止する組織を潰そうと、ずっとファンタジーを語るという危険なことをしてきた。
どうして、ファンタジーがダメなのか。その質問にキャロルは答えられない。
純粋なキャロルは、ノーズに押し切られるような感じで、彼女を牢から出してしまう。そして、ボスの部屋へと向かうことに。
クレアに見つかるが、ノーズはキャロルを人質にして、ボスの部屋に侵入。
そこには、クルミラロールを研究した書物がたくさんある。しかも、モニターには、これまでクルミラロールの容疑者として捕まえた後に釈放したはずの人たちが、監禁されて実験されていた。
ボスが戻って来て、秘密を知ったノーズを撃とうとする。ノーズは再び、キャロルを人質にして抵抗。絶体絶命。飛べ。そうノーズが叫んだ時に、ノーズとキャロルの体は宙を浮き、空へと舞い上がる。
キャロルがクルミラロールなのか。
ボスはついに見つけたと後を追う。
ノーズとキャロルは地面に降り立つ。
キャロルがクルミラロール、シエルだったのか。ノーズは自分はライの子孫であることを明かす。
そこにボスが追いついてやって来る。さらにはクレアも。
ボスは取締局を作った人の子孫。クルミラロールは、世界を破滅に追いやり、人間はファンタジーを禁止する世界を創った。でも、そんな世界は、今、汚れている。国は断絶して争い合う。ボスの目的は、再び、世界を生まれ変わらすこと。その結果、人間が滅びようと、例え、自分が死ぬことになろうと構わないといった考えのようだ。
キャロルはそんな考えはおかしいと叫ぶ。頭に花でも咲いているのでは。そんな言葉が、具現化する。ボスの頭に花が咲く。
クルミラロールは自分の願いは具現化できない。ということは、クレアがクルミラロールということ。
キャロルはずっと黙っていたクレアにショックを受ける。でも、そんなクレアを受け入れる。クレアが何者であろうと、自分はクレアが大好きで、ずっと一緒にいたい。それは何も変わらない。
ノーズはこの世界にファンタジーを取り戻そうと、ボスは世界を生まれ変わらそうと、クレアを奪い合おうとする。かつての天使と悪魔のように。
キャロルは叫ぶ。
世界は・・・
クレアは、昇天するような形で消えてしまう。
キャロルの願いは、どのようなものだったのか。少なくとも、世界をリセットするようなものでもなく、かといってファンタジーワールドを復活させるようなものでもなかったようである。
ただ、かつて自分の力で世界を破滅させ、新たに創られた世界もみんなを幸せにするものではなかったことに、ずっと悲しみを胸に抱いていたのであろうクレアに安らぎを与えるものだったように感じる。クレアを愛するキャロルだから、彼女の幸せを願ったのではないだろうか。
でも、世界はこの後、変わっていくみたいだ。
最後は、ファンタジーワールドが取り戻されたような形で締められる。
全てを破壊する必要は無い。その中には、きっと輝くいいところもたくさんあるはずだから。
悪いところは、自分たちで見つけて変えていけばいい。
願うことは破壊ではなく、やはり創造することでありたい。
異なる容姿、多種多様な力を認め合い、絡めて大きな力にしていく世界。
それが、本当のファンタジーワールドのような気がする。
そして、そんな世界が創り上げられた時、数々のファンタジーワールドの住人たちが蘇り、キャロルの願い、クルミラロール、クレアとずっと一緒にいることが出来る世界が待っているように感じる。
キャロルは、そんな日を想いながら、旅をしているようだ。
そんな世界の話は、また別の機会に話してくれるそうだ。あの見事な一人芝居語りの力を持つ、語り部ノーズが確かにそう言っていた。役を演じる、初恋双葉さんは、今回で役者を休業されるとのこと。まさか、嘘はつくまい。きっと、そんな作品を公演する日があるのだろう。ずっと一緒にいたい。作家の仕掛けだろうか。この作品にも通じる温かさを感じて、心地いい。
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コメント
たくさんのお芝居の中から選んで来てくださって、ありがとうございました!!
ご予約いただいた時、全員で大盛り上がりでした。
いつも、細かいところまで見てくださって感激です。
本当にありがとうございました(*^^*)
投稿: うみみ | 2014年9月22日 (月) 15時25分
>うみみさん
コメントありがとうございます。
なかなかの公演激戦週で大変でした。
まほチョコは観に行くと決めているものの、満席も予想され、仕事の日程がなかなか決まらず、予約出来ず、ずっとイライラしていました(゚ー゚)
そんなイライラが全部吹き飛ぶ、ほんわかファンタジー。
いつもながらの素敵な作品でした。
最後の、あの木に映るファンタジーワールドの住人たち。人が法律で消しても、まだちゃんと心の中にいてくれてたんだみたいな感覚になって、とても嬉しい気持ちになりました。
また、次回公演を楽しみにしています。
この話の続きも( ̄ー ̄)ニヤリ
投稿: SAISEI | 2014年9月23日 (火) 20時32分
わ~、ありがとうございます!
次もそう思っていただけるように精進いたします(^人^)
ラストの小人さんや妖精さんは、
自分たちで作っておきながらですが、
本当にそこにいてくれるようで、
私も嬉しくなりました。
このお話の続きは…ノーズが戻ってきてくれてからですね(^^;
まずは12月、20分の短編に力を注ぎます。
ありがとうございました(^人^)
投稿: うみみ | 2014年9月25日 (木) 01時22分