四月になれば彼女は【劇団未踏座】140921
2014年09月21日 龍谷大学深草キャンパス 学友会館3階大ホール (115分)
一言で言えば、残念な作品でした。
もちろん、いい話だなあとは思うし、心を動かされるところもあるのですが、それが単発で終わってしまい、登場人物の心情の積み重ねが見えてこない。
有名作品みたいですが、どうも、表面をなぞったような感じで話が展開して、脚本としてあまり魅力を感じないところもあります。そして、盛り上がるシーンだけ、役者さんの演技力を見せつけられ、他のそこに至るまでに貯めないといけないシーンでグダグダな感じがある。
多くの感想で、泣けるいい作品だったという言葉を目にしており、期待して拝見したのですが、自分の中では、ほぼ全く気持ちが盛り上がらず。
面白くなかったとまでは言いませんが、まあ、こういう話ねといった感じのあっさりしたものしか残りませんでした。
アメリカで、単身、メイクの仕事をしていた麻子。夫が亡くなった時に一度戻って来るものの、再び渡米。二人の娘、のぞみとあきらを姉の結子に預けて。
それから15年、のぞみとあきらは、叔母の結子を母のように思い、成長する。叔母は美容師をしており、その弟子であり、家のこと全般の面倒も見てくれる人のよさそうな使用人、耕平も二人を優しく見守ってくれている。
その間、母、麻子は一度も帰っては来なかった。入学式の時も、卒業式も、就職が決まった時も。手紙では帰ると書いておきながら、いつも仕事が忙しくなったという理由で。
叔母の夫の容態が悪くなる。余命一ヶ月も無い状態。のぞみは、自分の育ての母親である叔母のためにも、一度本当に帰って来て欲しいと母に手紙を出す。これまでの不義理も全て、清算しても構わないからと。
でも、母はやはり仕事の都合がつかず、帰って来ず、叔母の夫は亡くなった。
そんな母が、急に帰国することになった。
今さら、何だと怒りを示すのぞみ、もう母のことはとっくの昔にいないものだと思っているとクールな態度を示すあきら。
のぞみはスポーツ新聞社で記者として働いている。昔、観た、ラグビーの試合で感動した選手、堀口の影響で。今では、堀口は名門全日鉄ラグビー部の監督をしている。私生活では女優のカンナと結婚して、健太郎という元気一杯で礼儀正しい子がいる。
ただ、堀口、今はカンナとは別居状態。自分が息子を育てると、ラグビー精神にのっとって、決められたルールをきちんと守る子に育てるべく、厳しくも優しく健太郎に父として愛を注ぐ。でも、カンナは健太郎は自分が育てると、揉めているようだ。
そんな堀口、チームの有望選手を暴行するという傷害事件を起こす。その選手には、移籍の話が持ち上がっており、それに腹を立てての行動だろうというのが新聞社の部長の見通し。
のぞみは、あの堀口がそんなことをするわけがないと、取材に訪れるが、実際に暴行したのは確からしい。ただ、その理由は口にしてくれない。
こんなことになってしまって、堀口はもう日本で働くことは出来ない。知り合いのいるオーストラリアで職を見つけ、健太郎と一緒に暮らすことを考えているが、このままでは、カンナが健太郎を連れていってしまうだろう。のぞみは、それならば、健太郎を自分の家に責任を持って、職が決まるまでかくまうことにする。
子供好きな叔母は、健太郎のことを気に入り、かくまうことを了承する。
あきらも、帰って来た母を無視しながらも、どう接すればいいのか分からないようで、健太郎と一緒に行動することで気を紛らわせているようだ。
ある日、あきらは健太郎を連れ出し、自分の卒業した学校に行く。
入学式には帰るから。そう言っていた母を、いつまでも待って、一人寂しく机の下に隠れていた。夜になって、のぞみが迎えに来てくれた。手をつないで帰宅した。その時の手の温かさ。あの時、自分は母のことを忘れることにした。そして、ある能力が自分に身についていることも知った。母の気持ちが理解できなかった反動なのか、相手の体に触れると、その人の気持ちが分かる。でも、その力が・・・
母に触れた時、あの人の気持ちを読み取ることが出来なくなっていた。それは他の人にも同じようになってしまっている。
あきらと健太郎が出掛けている間、家にはカンナと新聞社の部長が来ていた。
カンナの大ファンである部長は、情報を集め、ここに健太郎がいることを突き止めたらしい。
帰宅してきた健太郎をカンナは連れて帰ろうとする。
ずっと放っておいて勝手だと言うあきら。
でも、健太郎は母と一緒に帰ることを了承する。それは父と決めたルールである人の迷惑になることをしないということに反すると考えたから。
カンナと健太郎が去り、家に静寂が訪れた時、のぞみも帰宅して、起こった一連を聞く。
堀口との約束を守れなかったことへの悔い、カンナの勝手な行動への怒りが、自分の母とのこれまでと同調して、激しく母と言い合いになる。
でも、そこで知る母の気持ち。知らなかった真実。
母が再渡米したのは、子供好きな叔母のためだったこと、年月が経つうちにどう娘と会えばいいのか分からなくなったこと、常に娘のことを想ってくれていたこと。
それでも、母と和解することなどは出来ない。でも、心の底では、再び母に会えたことを喜んでいることにも気付く。あきらも、自分の読心術が母が帰宅した時に失われていることには気付いていた。それは、きっと、もう母の気持ちを探る必要が無くなったから。本当は母の気持ちを理解出来るようになったからなのだと。
堀口は、健太郎とカンナと会い、話し合う。
カンナが再婚をしようとしており、その相手が暴行した選手だった。
健太郎は、母とこのまま残ると言う。でも、職が決まったら、父の下へ向かうと。もちろん、母にはこれからも会うし、手紙も書くつもり。
そんな健太郎の幼くも力強い姿に、二人はその意志を尊重することを決める。
ラストシーンは空港。
麻子は再渡米。
あきらは自然にいつの間にか、お母さんと呼んでいる。
のぞみは気を付けてというのが精一杯。
また、会える。いつでも会いに行けばいい。家族なのだから。
飛行機が飛び立ち、みんなで食事にでも行くことになる。
のぞみは、飛び立つ飛行機を見ながら、母に最後まで言えなかった言葉を口にする。
お帰りなさい、お母さん・・・
時系列は狂っているかもしれませんが、こんな感じの話。
家族の在り方とか、離れていても消えない絆とか。
描きたいことは何となく分かりますが、正直、全くと言っていいほど、心を動かされませんでした。
それが脚本自体にあるのか、演出に何か欠けたところがあるのか。
よくは分かりませんが、心情の積み重ねが無いなあというのが思うところです。
話には波があり、感情剥き出しになって想いをぶつけ合うシーンでは確かに、心を動かされそうになるのですが、そこに至るまでの部分が浅く緩い感じがします。
役者さんの演技を見ても、盛り上がる部分は魅入りますが、そこに至るまでの部分でたどたどしい言い回しや、かみ合わない掛け合いが感じられ、徐々に引いてしまったようです。
家族ということを中心に、人が想う心を描いている話なのだと思います。それだけに、その想いに同調して、感情移入出来ないと、とても上っ面の薄い感じが出てしまい、全てがなんぞらしく見えてしまった感じです。
最初のシーンとラストのシーンは同じになっています。そこにいる人たちの色々な話を見聞きして、ラストにそれがどれくらい変わって見えるのかが大事なのだと思います。ここも、正直、あまり変わって見えなかった。どうして、ここにいるのか、こういうことになっているのかという理由が分かっただけで、その想いに深く感動するまでには至らない。
何か、残念だったなあという気持ちが残ります。
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