走れメルス ~少女の唇からはダイナマイト!【Contondo】140914
2014年09月14日 ウィングフィールド (110分)
いやあ、本当に分かりませんね、この作品。
他の方のブログもちょっとネットで調べて拝見しましたが、まずは分からんという言葉からスタートしている方が多いです。
描かれる二つの世界をどう捉えるかが難しいのでしょうかね。せっかく、何かしらの定義付けを頭の中でしても、話の展開と共に、その境界が消し去られてしまうからでしょうか。
結局、全ての世界がリセットされてしまったかのようなラストでした。別に、誰かが世界を滅ぼそうとしたわけでもなく、ただ、メルスが一生懸命走っていただけなのに。いや、走っていなくて、周りが動いていたから、そう見えるだけなのか・・・
とりあえず、確かなのは世界が二つに分かれていること。まあ、これすら、どちらかは虚像で本当は一つなのかもしれないが、少なくとも、前半は話が並行して進む。
世界は海を隔てて、こちら岸と向こう岸みたいな感じで表現されているみたい。
一つは、大奥様とその娘である、かしまし娘と呼ばれる三姉妹にキャーキャー言われるメルス・ノメルクというアイドルスターがいて、結婚式から逃げ出してきた零子という性格きつそうな女性にうまい具合にそそのかされ、共に逃げることになる。いつの間にか、零子誘拐犯となったメルスは刑事に追われることに。
もう一つは、下着泥棒の久留米のスルメが、いつもその姿を鏡で見ていた芙蓉というあざとそうな女性にうまい具合に誘惑され、虜になってしまう。芙蓉は大地主やその息子にも想いを寄せられ、スルメはそんな人たちと敵対することになる。
零子は逃げる先として、もう一つの世界を目指す。
芙蓉は、母の形見である白紙の青春歌集を手にして、それを見ながら想像の世界を繰り広げ、そこにメルスという自分の追い求める男の姿を見出す。
海で分け隔てられていた二つの世界は、零子とメルスがもう一つの世界にやって来て、それを芙蓉の想像の世界として受け入れるような形で交錯し始める。
そして、なんやかんやあるのだが、芙蓉はやって来たメルスに心を奪われ、お砂糖に火をつけてという言葉をお里に火をつけてと聞き間違ったスルメによって世界は火の海になり、炎に包まれる中、スルメは芙蓉を刺し殺す。そこに、メルスはどこにいったのか、初めからいなかったのか、姿は見えない。
後に残るのは、瓦礫の山となった世界に残る彼らの燃えカス・・・
感想を書こうにも、どうにも、まともに書くことが出来ない。
観ながら、その時、大事だと思ったのであろうキーワードをメモッているので、その言葉から何となく感じたのであろうことを思い出しながら記す。
メルス・ノメルクと久留米のスルメ(クルメノ・スルメ)をはじめ、劇中の数々の回文のような言葉から、二つの世界は鏡の世界のようになっているみたい。
まずは、互いに、理想と現実の世界として、向こう岸とこちら岸の世界を捉えることが出来るのかな。
劇中には相対性理論なんて言葉も出てくるが、その相対という言葉だけに焦点が当たるが、交じり合って理解することが困難な理想と現実や男と女みたいなものが、もう一つの世界に憧憬を抱き、そこに進んでしまうことで、二つの世界の境界で揺らぎが生じる。それが破滅を引き起こす。
鏡像の世界。
D体とL体みたいな明確な自然法則が成り立つ、安定して変わらぬ世界。互いの世界が交じり合うことはない。
ところが、お砂糖とお里みたいな、その世界の常識に囚われた人の人為的なミスが、突発的な非自然の反応を引き起こし、世界に大きな変化をもたらす。
進化や歴史的な大きな変化が、自然な科学的論理に従って起こるのではなく、人為的な介入がきっかけになるような感じか。
新たな世界の創造の始まりは、破壊から。青春歌集は白紙で0であり、そこから創造の世界を作り上げるビッグバンみたいなイメージ。
時間に逆らおうとする人の世界。
現実的な時間の経過により出来上がる未来の世界と、自分の想像の世界で時を進ませて、どこかで立ち止まってしまう世界。
全てが芙蓉の描き出した世界なのではといったイメージから感じたこと。
いつまでも、空想の時を進ませるわけにはいかず、どこかで、現実と融合しないといけない。それが、この作品で起こったが、そのひずみは大きく、リセットせざるを得ないような世界が生まれてしまった。
あと、何か読み返しても訳が分からないキーワードがあるのだが、何を思って書いたのかさっぱり分からず・・・
まあ、色々と考えてみたが、分からんもんは、やっぱり分かりませんね。
全部、後付けで思い返しながら書いていることで、観ていた時の感想はだいたい、こんな感じでしょうか。
いつもと違う久留米のスルメ、繁澤邦明さん(劇団うんこなまず)の叫びの演技に興味津々、先日、うんこなまずで拝見した時に美人だなあと思った芙蓉、石川信子さんが今回は着物姿で見惚れる。
メルス・ノメルクの佐伯雄司さん(劇団レトルト内閣)の彷徨いながらも走り続けようとする真面目な雰囲気、男を振り回す女性の罪深き自由奔放さに漠然とした恐怖を感じる、零子、小寺曜さん。
大奥様、ゴミさんの妖艶なマダムっぷりで場を掴む上手さ、本当にやかましいけど、お可愛らしく目が離せないかしまし娘、キム・チゲ子さん、土江優里さん、茂木千聡さん。
裏の顔を滲ませながら、いつもながらの複雑な心情をうまく絡める貫禄ある姿の刑事と大地主、まつながさん、これまた、いつもながらの素なのか演技なのか巧妙な味を出す今西刑事さん。
・・・
結局、分からないので、この複雑怪奇な作品を演じる役者さんを楽しむことに、途中からシフトしたといった感じでしょうか。
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