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2014年9月23日 (火)

こわくないこわくない 戦うために出ておいで!【クロムモリブデン】140922

2014年09月22日 HEP HALL (105分)

いつものこの劇団らしくなく、ずいぶんとあっさりとした感じで、分かりやすい話だった。
と、思ってしまうのは、作品の奥深くまで入り込めていないからなのかな。
いつもながらの、音響・照明に、役者さん方自身の身体能力を活かした鳥肌立つような斬新でかっこいい雰囲気は健在。
今回は、キャストも多く、それを活かした、目を惹く場面転換などの工夫もあり。
巧妙に計算された高品質エンタメといった感じでしょうか。

話は、子供を中心に歪んだ社会を描きながら、その中でも、夢見ることを忘れずに、未来へ向かって歩んで欲しいといった願いが込められているように感じます。

<以下、ネタバレにご注意ください。東京公演でたくさんのステージ終了、大阪公演も本日が千秋楽なので、白字にはしていません。>

ヤンキー夫婦が、町中でいちゃついている警察官に、10年も前にいなくなった子供の行方を探して欲しいと言い出す。
普通なら、相手にされなさそうなものだが、警察官は児童ポルノの愛好家で、ネット配信される少女の画像を見せて対応する。まなみという名前らしいが、キララというそれらしき、少女が見つかり、警察官はよく出入りしている変態クラブの人に問い合わせをする。

ごく普通っぽい夫婦が近所の空き家を探索。
空き家だと思っていたが、人の気配がする。ポテチでおびき寄せようとしてみたところ、本当に少女が現れて、ポテチを貪り食って空き家の地下に逃げ込む。
後をつけると、そこには3人の少女が、元ベビーシッターだという女性と一緒にいる。
ここで、捨てられた子供たちを、教育を受けさせることもなく、育てているのだとか。3人は、ここで外界の情報から遮断されているからなのか、知識は乏しいが、互いに感応し合うぐらいに想い合って生きている。
収入源は、その子供たちのポルノ画像。でも、大きくなってしまえば、売れないので、殺処分をする男に頼んで連れて行ってもらうらしい。その日も、3人のうち、2人が大人になったので殺処分されることに。1人はまだとりあえず、大人になっていないのでそのまま残す。
子供がいない夫婦は、子供を引き取りたいと考えるが、お金の都合上、1人だけ、キララという子を連れて帰ることに。

夫婦の夫は不倫をしている。昔、その女性とドライブをしていた時、1人の女の子を轢き逃げしてしまっている。
夫は子供を引き取った機会に、その女性との関係を清算しようとする。
不倫女は、そんな夫を脅そうと、轢き逃げした子供の母親を探し始める。
見つかったその家では、母親は完全に気が触れてしまっており、使用人や、娘のように可愛がる弟子の女と共に、復讐のための奇怪なダンスを日々しながら過ごしている。
不倫女は、金と引き換えに轢逃げ犯人を教えると仕掛けるが、その犯人に子供がいることを聞いて、要求が変わってしまう。
子供を誘拐して殺す。そうすれば、子供を無くす苦しさがあの憎き犯人にも分かる。

不倫女は、夫の妻と接触する。何やらグロ映画のファンであると共通の趣味を装って。
家に招かれるが、確かに子供がいる。年から考えて生んだ子では無いようだが、とにかく引き渡せば金になる。
殺処分されることになった女の子と感応しているのか、あの子が死んでしまうとひどく精神的に不安定な状態なので連れ出すのは簡単そう。
さらって、我が子を轢き逃げされた母親の下へ。殺すのかと思いきや、憎しみを超えた、子供への愛情が生まれ、育てると言い出す。
それに怒りや妬みを、これまで娘として共に過ごしてきた弟子の女は示す。
そして、この子の両親である轢逃げ犯は殺処分屋に依頼して殺すことに。

一方、変態クラブの人たちは、元ベビーシッターを訪ねる。警察官から依頼のあった子供を探しに。
子供を捨ててほったらかしで生きてきたヤンキー夫婦など、どの子でも同じだとばかりに、残っている子を引き取り、夫婦に渡すことに。
元ベビーシッターは金になればいい、変態クラブは警察に貸しを作ることができればいい、警察官は児童ポルノを愛好しながら今の仕事をこなせればいい、夫婦はとりあえず、子供が戻ってくればいい。全ての人が、それで満足だという構図。そこに、子供の幸せは一切考えられてはいない。

変態クラブの人たちは、子供を轢き逃げされた女からキララをさらう。協力者はその弟子の女。
私たちがあなたの本当の両親です。そんな嘘くさい言葉も、何も知らないキララは信じてしまう。
そこに現れた子供を轢逃げされた女。殺処分屋を連れて。
私たちがキララの本当の両親なのです。そんな言葉を発する変態クラブの人に轢逃げされた女の目が光る。動き出す殺処分屋。幸福な世界であろう100年後へと冷凍保存してしまう。
そして、続いて現れるヤンキー夫婦。まなみ。やはり顔を少しは覚えていたのか、キララを見てそう叫ぶ二人。俺たちがお前の両親だ。
再び、光る轢逃げされた女の目。動き出す殺処分屋・・・

結局、この後、キララを最初に元ビベーシッターから引き取った夫婦も同じ目に。暴走する殺処分屋、ありとあらゆる人たちを冷凍保存してしまうといったようなラスト。

最初、犬や猫のメタファーになっているのかなと思って観ていたが、やっぱり違う。人間の話だ。
君たちは犬猫じゃないんだ、人間なんだからとか言って、人間の尊厳なんてことを教えようとしていたのか、昔、クソ生意気な先生からよく叱られた。でも、今では、もう、その境界が曖昧に感じてしまうくらいに、社会はおかしくなってしまっているのだろうか。

子供はもちろんペットでは無い。
でも、単純に自分たちの心を傷ついた癒しとしてだけ扱ったり、可愛い時はちやほやして、大人になってしまえばもう用済みみたいな考えで接していれば、それはもうペットになってしまっているのではないだろうか。
そんな酷い現実の一部を切り取って、そのまま描いてしまえば、きっと吐き気をもよおすぐらいに醜悪なところばかりに目がいき、話を拒絶することになりそう。でも、これを逆に犬猫のようにも思えてしまう形にすれば、すんなり観れて、かつ、考えなくてはいけなことを感じることが出来るように思う。

殺処分が未来へ向かわせるための冷凍保存といった描き方がとても素敵に感じます。
未来はきっと素晴らしい。だから、心配せずに、世に現れておいでといった感じのメッセージ。
夢を見ることで、世界も自分も成長していく。

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