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2014年8月31日 (日)

Hello! WELCOME TO HAPPY Arboretum (and zoo)【劇団冷凍うさぎ】140830

2014年08月30日 Cafe Slow Osaka (130分)

練りに練られたような脚本でびっくりしました。
非常に話の構成がよく出来ているなあということと、不可解な人間の心理を露骨に浮き上がらせる奇抜なキャラを見事に演じられる役者さん方の魅力に感心。
いわゆる秀作と評される作品に仕上がっているように思います。

ある町の動物園も併設されている植物園。
と言っても、この植物園、ほとんど植物が生えていない。肥料が悪いのか、根本的に土がおかしいのか。とにかく、植えては枯れの繰り返しで、不毛の地と化している。
オーナーはかなりご高齢のおばあちゃん、ススキ。生きているのか死んでいるのか分からないくらいで、話す言葉もほとんど理解できないような状態だが、全権を握っており、誰も逆らうことは出来ない。
その代理のような形で働くのが孫のヨモギ。これまで、祖母の権力と財力の下に、深く考えずに日々を過ごしてきたためか、自分の人生を見出せていない様子。これではいけないと、ここで働くようになったものの、祖母の影は消えない、自分で何が出来るのか分からない、偉そうなので働く者の信を得られないと焦りと苛立ちの日々となっているみたい。精神的にかなり追い詰められているのか、もはや、通常ならまず関わりを避けるであろうちょっとした狂人である。

植物園の主任であるミズヒキ。整理整頓が出来ないので、事務所は散らかり放題となっている。暇があれば酒を飲んだりしていて、やる気が無いと思いきや、植物園の存続は誰よりも願っているみたい。ここまで、上手く植物が育たないなら、大胆な改良が必要であろうに、これまでのやり方にこだわり、小手先の改善を施しては失敗を繰り返す。もはや、そんな状態から知らぬ間に抜け出せなくなっているような感じ。
そんなミズヒキのだらしなさに怒る毎日を過ごすのが、動物園勤務なのに、植物園事務所に常に入り浸るアカザ。いつもカンカンに怒るものの、素直に謝って、ご機嫌を取ってくるミズヒキにほだされてしまっている。勤務時間の間には、決まってランニング、縄跳び、筋トレと自らをストイックに鍛え上げる。そんなところがうけるのか、女性には全く不自由しない生活をおくっている。

ミズヒキの下で働く大学生バイトのハコベ。まあ、植物園の現況に関して問題視をしながらも、責任があるわけでもなく、言われたままのんびり働く。それよりも、今、大事なことは、ようやく出来た彼女、ナズナのことみたい。事務所に一緒に連れて来るくらいの親密さを見せながら、気が弱いのか、もう一歩踏み出すことが出来ないみたい。それはナズナの方も同じで、どう接し合えばいいのか探り合っているような状態。向き合うと、互いにぎごちない笑顔で想いを確かめ合うのだが、顔をそらすと二人は、不安いっぱいの暗い顔になる。

前説から、いきなり本編に突入し、だいたい上記の情報が得られる。
登場人物のハコベが、スポットライトを浴びて、ここから物語が始まることを告げる。次の幕では、どのようになっていくのかを淡々と話すので聞き間違えたのかと思うようなショッキングなことも平気で言葉にしながら。

と、ここからは、もうぐちゃぐちゃになっていくので細かくは覚えていません。
とりあえず、ススキは死にかけ、ヨモギはキチガイ、ハコベとナズナがまだ未熟だけど恋人同士、アカザは生意気で嫌味な男、ミズヒキは人はいいけど頼りない奴といった形でスタートして、どうしてこんなことになったのかと頭を抱えるようなラストに向かって残りの2時間弱を展開させていきます。

単に覚書ぐらいは出来るかな。
ヨモギはアカザに最初は憧れて、彼に身を委ねる。でも、アカザは過去のひどい失恋経験から、恋人を作る気は全く無い。むしろ、そんな恋愛が所詮、虚像でしかないことを証明するかのように、単なる肉体関係を老若男女構わず形成していく。その餌食にヨモザもなる。自分の存在に不安を抱えていたヨモギにとって、その仕打ちはさらに精神不安を起こすことになったみたい。さらには、ススキまでもその一人らしい。

夏を迎え、事務所で花火をみんなですることになった時、新しい登場人物、ヒシバが現れる。ハコベ、ナズナと同じ大学生で、デリカシーの無さそうなオバカ丸出しの男。
花火大会のことをミズヒキから伝えられていなかったアカザは激しい怒りを示す。それは、連絡ミスを責める以上の嫉妬から生まれる怒りであった。誰もそれに気付かないが、ナズナだけはアカザの気持ちを鋭く理解し、アカザはナズナに自分の心の内を告白する。
ハコベとナズナは未だぎごちない仲であり、そんな隙を突かれたのか、アカザはナズナを寝取る。
ヒシバは、女性に不自由しないアカザに憧れて弟子入り。アカザは自分のミズヒキへの想いを外圧によって消そうとしたのか、弟子のヒシバにアカザがミズヒキを嫌っているという噂を流させ、事務所を去っていく。

ハコベはアカザがナズナを寝取ったことを知り錯乱。ナズナの謝罪の言葉を聞き、ハコベは、一時はこれまでの自分も悪かったと寄りが戻りそうになるが、やはり怒りを抑えることは出来ず、発狂状態となる。
ナズナはその後、ヒシバ、さらに、ミズヒキとも体を重ねる。
ハコベは、それでもナズナへの想いを捨てることは出来ず、その苦しみから逃れ、かつ自分に磨きをかけるためか、ストイックな日々を過ごす。その姿は、かつてのアカザと同調する。
そのためか、ヨモギはハコベに想いを寄せ始める。しかし、ハコベのナズナへの一途な想いを持つところに好感を抱いたので、自分と恋人同士になることはそれを否定することになるという矛盾に悩む。

ミズヒキとナズナが付き合い始める。
ハコベはそれでも諦めきれず、復縁の日を狂気的に狙っている。
もう一人、この付き合いに納得のいかない男がいる。ヒシバ。
彼は、アカザの弟子なので、恋愛感情を持たずに、女と寝なくてはいけない。だから、ナズナへの恋心を押し隠し、ひたすら教えに従ってきた。でも、その間にミズヒキにやられてしまった。
ところが、アカザは遂に我慢できなくなって、ミズヒキに自分の想いを告白してしまう。
その姿に裏切られたと憤慨するヒシバは、師匠であるアカザ以上の男になると言いながら、老若男女、動物と問わずセックスをする彼に打ち勝つために、無機物である車と寝ようとして、命を失う。

ハコベはすっかり狂ってしまい、酒に農薬を混ぜてみんなを殺そうとする。
でも、決心つかずバタバタしているうちにヨモギが間違って飲んでしまい、死んでしまう。
死体を前に、これまでのことを罵り合うハコベとナズナ。二人がようやく本当に心の内をぶつけ合い、関わりを得ることになったが、時すでに遅し。ハコベは怒りおさまらず、事務所を出ていく。
事務所には、そんな騒ぎの中、永遠の眠りにいつの間にかついていたススキの姿。

エピローグは、不慮の死を遂げたヨモギによって語られる。
事務所には、いつものようにミズヒキとアカザ。ミズヒキの横にはナズナがいる。
バイトの報告にあがるハコベ。業務を終わらせ、事務所を去る。その後、事故で亡くなる。
あの世なのか、もう話が完結した舞台上で、出会う人たち・・・

話が進むにつれて、どんどん深みにはまっていく。
これ、いったいどうやってオチをつけるのかなと観ていましたが、メタや繰り返しシーンの演劇的な技術と、言い方は悪いですが、死をあっさりと描くことで見事に収束させたように感じます。
不毛な地で行うことは、やはり何をしても不毛になってしまうのでしょうか。悲しいまでに、何をやっても空回りする方向へとしか進まない人たちのあがく姿がコミカルでもあり、辛くもあり。

上記した死があっさりと描かれるというのは、その死が全く悲しみを誘わないところにあります。だから、本当の死と捉えないでいいのかなと思っています。
不毛の土地を捨てて、新しい土地へと向かった人たちのように考えます。自分という種はあるのですから、ここで芽が出なくても、どこかでは出てくるでしょう。
肥料をいくら変えても、芽が出ないような場所だったのだから、それはもうどうしようもありません。きっと土を全部入れ替えてもダメなんじゃないでしょうかね。そこは、違う人の種が芽を出して、茂っていく場所だったのでしょう。不毛の土地は、その人によってはそうでないこともあり、不毛を救うことは、そもそもハード側の問題で、ソフト側では出来ないことのようにも思えます。
それに、芽生えてしまえば、そこで根付いてしっかりと育っていかないといけない。そう思うと、まだ芽が出ない種のような状態で、自分にとっての土地を探すのもそれはまた大切な時間のような気もします。

だったら、作品で不毛の地に残された人たちはどうなのかと考えると、もしかしたら、彼らはここを甦らせるような気もします。何かを加え続けてダメでも、何かが失われたら上手くいくようなこともあるでしょうから。
多くの人が、この不毛の土地を去りました。そんな人たちが、もしかしたら抑制因子として働いていたのかもしれず、それが無くなれば、意外にすんなりと芽が出てくるのかもしれません。このあたりは、結局は、出会った人との関係の取捨選択のようなことに通じ、人と関わることの難しさみたいなことも感じられます。

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