覇道ナクシテ、泰平ヲミル 蝕王曹操編【劇団ZTON】140829
2014年08月29日 インディペンデントシアター2nd (95分)
まあ、残念。
この作品、この編と、もう一つ、偽王劉備編があるのですが、こちらを観れないので・・・
こんなこと書くと、叱られるでしょうが、両方観れないなら、いっそどっちも観ない方が、気が楽だったかもしれません。
気になって仕方がないです。
曹操に焦点を当てて、黄巾の乱から、漢王朝復興のあたりまでを描いたような話。
泰平の世を得るために、自らの運命と対峙する覚悟ある者たちの行動を綴ったような感じです。そして、そんな者たちの一人一人の想いが歴史を作り出しているといったことが分かるような作品でした。
この劇団の本公演を拝見するのは初めて。これまで、1500本以上観てきたのに、なぜか縁がありませんでした。
エンタメストライクと名打っての公演。エンタメ力の凄さは、これまでに色々な人から聞いていたので、かなり期待していました。
ただ、初めの20分ぐらいは、どうもバタバタしているなといった印象が強かったです。動きの止めが緩くて、なんか常に流れているみたいな感覚がどうもしっくりこなくて。それと、何だこの人の動きと驚愕するような人と、まあ普通みたいな人がいるのは当たり前だとしても、その融和が無くて、要は一体感が無いという感覚が大きかったです。エンタメ力、それほどでも無しという、言葉をこのブログに書かないといけないかなあなんて思いながら観ていたのですが、何か最後は惹きこまれていましたね。高品質だからこそ、少し観るのに慣れがいるのか、時間の経過と共に舞台でも役者さん方がノッてきたのか。そのあたりは、分かりませんが、かなり見ごたえがある舞台になっていることは間違いありません。
それよりも、感じたのは、話の分かりやすさでしょうか。登場人物も多いし、その相関もそれなりに複雑だし、歴史的な知識もいるしで、不安がありましたが、これはすんなりと溶け込んでしまえるようになっており、物語自体を楽しむということが出来たように思います。
<以下、ネタバレにご注意願います。有名な歴史ですし、許容範囲と判断して白字にはしていません。公演は日曜日まで。月曜日までやってくれていたら、もう一つ観れたのに・・・>
後漢王朝。
火を司る龍神、炎龍の下、王となった霊帝。
曹騰率いる宦官たちに幽閉され、支配権を奪われる。
張角率いる農民たちで結成された黄巾党は、金を司る龍神、黄龍の加護の下、そんな宦官たちの私利私欲にまみれた悪政を行う漢王朝に反旗を翻す。
王朝内で腐敗する宦官と対立関係にある何進将軍とその配下の袁紹、袁術は、張角を討ち取り、その立場を優位にしたかと思われたが、黄巾党はその弟、張宝に引き継がれ、再び漢王朝に牙を向ける。何進将軍のこの討伐失敗により、王朝内ではさらに曹騰たち宦官が支配を強める。
宦官たちの呼び掛けにより、黄巾党に対抗するため、漢王朝に集まった各地の義勇軍。
討伐失敗の汚名を返上しようと必死な何進将軍と袁紹、袁術兄弟。
賊として村を襲い、悪名名高い劉備、張飛、関羽。
水面下で王朝を狙う、土を司る龍神、土龍の末裔である董卓とその配下、呂布。
曹騰の孫である曹操、そして、血族である夏候惇、夏侯淵、郭嘉。曹操は、祖父の力により、何不自由ない生活を送って育ったいわゆるお坊ちゃん。義勇軍たちからも見下されて接せられる。祖父の悪政が王朝を揺らがせていることは知らない。頼りないが正義感には溢れており、かつて、劉備たちが襲った村を救おうと一人立ち向かったこともある。殺されかけたところを、武に優れた夏候惇と夏侯淵、知に優れた郭嘉に助けられた。
激しい戦いに紛れて、劉備が何進将軍を亡き者にしたりするが、この義勇軍によって、黄巾党は滅亡する。そして、黄龍は長き眠りにつく。
その恩賞を授けるために、曹騰たち宦官の下に、義勇軍たちが集まった時に、劉備は霊帝が宦官たちの手で既に殺められていると発言。袁紹が事の真実を確かめたところ、霊帝は確かに既に骨になっていた。
宦官たちはその場で抹殺される。曹騰は、義勇軍たちに圧力をかけられ、さらには自分はずっと祖父に騙されていたことを知る曹操によって、とどめを刺される。
宦官たち亡き後、袁紹は霊帝の第一子であり、炎龍の加護を受ける少帝を擁立して、漢王朝の復興を目指そうとする。しかし、袁紹に民たちの信を得る力は無く、やがて、弟の袁術との間で対立が起こる。少帝は、劉備たちに協力を求めるようになる。
これに対し、董卓は第二子である献帝を擁立し、土龍の加護の下、漢王朝を支配しようとする。そして、真っ先に曹操を殺害しようとする。曹操は、一連の事件で精神的に追い詰められており、祖父の裏切りに怒り、周囲からの蔑視に怯え、力なき自分を悔い、悲しむ日々を過ごしていた。夏候惇、夏侯淵が黄巾党の残党狩りに出かけていたため、自らが盾となり曹操を守った郭嘉を失い、曹操は死を覚悟した時、曹操の下に水を司る龍神、水龍が現れる。その姿は郭嘉であった。水龍は郭嘉に姿を変え、曹操が成長する日をずっと待っていた。水龍の加護を得た曹操は、自らが漢王朝を復興させるための王になる決意をする。
再び、董卓と剣を交える曹操。かつての弱い心は無く、龍神に認められた者同士の因縁の対決。ところが、董卓の配下である呂布が、董卓への嫉妬から裏切り、董卓を殺め、その肉を喰らうという行動に出る。龍神の加護を受けるには、かつて王であったという血筋が必要。呂布にはそれが無い。そのため、董卓の肉を喰らい、自らが土龍の加護を受けて王となろうとする。それは劉備からそのように進言されたらしい。しかし、呂布に土龍の加護が与えられることは無く、呂布は身を滅ぼす。土龍もまた、炎龍に代わって自分の時代を築くことに失敗し、長き眠りにつく。
漢王朝を治めようと兵を挙げる曹操の下に、劉備が接見する。
劉備曰く、少帝を殺め、水龍の下、王になればいいと進言。
劉備は、炎龍の加護を受ける本来の血筋では無く、王の肉を喰らって血筋を見出したらしい。
劉備の罠であることは明らかであったが、漢王朝を支配するために、水龍に導かれるように曹操は城に火を放つ。
燃える城を見て、劉備は、少帝を殺めた曹操こそ逆賊であると声高らかに叫び、自らが漢王朝を支配すると宣言。
その姿を遠くから、曹操たちにさらわれた少帝が見つめる。少帝が救いを求めた劉備の真の姿を知り、己の力の無さを嘆く。
曹操は水龍の命に従い、少帝に剣を向けるが、それを振り下ろすことは出来なかった。
今の少帝は、かつての弱き自分の姿であり、龍神の下、強くなり、国を平定するという願いを託そうと考える。
そんな曹操の決断に水龍は、これまでの苦労した時間を嘆くが、やがて、そんな共にみんなと過ごした時間が楽しくもあったことを悟り、自らは長き眠りにつく。
曹操、夏候惇、夏侯淵は、かつての仲間である郭嘉、水龍を失いながらも、この乱世を駆け巡ろうと新たな旅を始める。
だいたい、こんな感じの話だと思います。
乱世に生まれた者たちの運命が、龍に象徴されているような感じでしょうか。
その運命に翻弄されながらも、それを受け入れて生きていく者、それを捨て、自らで人生を切り開く決断をした者。
その行き着く先が、歴史をつくるといったことなのでしょう。
劉備が正義、曹操が悪みたいな感じで理解していたのですが、この作品だけを見ると、曹操はかなりいい奴です。演じる出田英人さんも、爽やかな感じで、頼りなくコミカルな前半から、そんな弱さを優しさに変えて魅せる成長した姿を後半は見せます。
自らの運命である水龍に導かれる人生では、本当の国の平定が成されないと思ったのか、最終的に自分は仲間と共に自分の道を切り開く決断をします。また、それを水龍も認め、今、この時は自分の出番では無いといった感じで引いて消えていきます。
日本の戦国時代なんかもそうなんでしょうが、乱世を平定して、泰平を導くためには、強き者が、力で全てを制圧してお終いなのではなく、強いからこそ、歴史から消えていく運命を持つ者も必要なのかもしれません。自らが長き歴史の中で、どういう役割をもって、生を得たのか。それを知り、その運命を受け止める。そんな、乱世に生きる者たちの覚悟が導く泰平の世。作品名の意味合いが何となく浮き上がるようです。
上記したように、本当にもう一つの劉備視点の作品が見れないのが残念。こちらは、こちらでまた、違った歴史の一ページを感じ取れたことでしょう。
それにしても、劉備が凄く悪いんですよね。演じる為房大輔さんも、まあ悪そうな方で。こちらに焦点を当てた物語がどうなるのか。また、DVDで確認しないと仕方がないです・・・
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