はやぶさものがたり ~宙(そら)翔けた軌跡~【大阪府立 鳳高校演劇部・桃谷高校演劇部 合同プロデュース】140815
2014年08月15日 道頓堀 ZAZAHAUSE (90分)
2年前にHPFで拝見した作品。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/hpf120809-71f3.html)
また、あの名作を観ることができるとはねえ。
初演も上記リンク先の感想のように、本当に感動したんだけど、あれから2年も経つので自分も色々と変わっているのかなあ。それとも、より完成度が高くなって、愛と熱に溢れる作品に仕上がっているからだろうか。
何か、心にジンジンとくるものがあって、何度も泣きそうになる。
太陽フレアとの対決を描く妖艶で美しいシーン、ミネルバとの悲しきお別れのシーン、夢と希望を託すハヤブサの覚悟ある地球への帰還シーン・・・
かつて拝見した時に覚えている数々の名シーンが全部泣けてくる。
心を震わせる素晴らしい作品。
そのことが、この作品に込められた創り手の真摯な想いを証明しているのであろう。
あらすじや感想は、だいたい、上記リンク先と同じだろうか。
時が経っても色褪せない、というかより魅力を高めた作品に仕上がっているように感じる。
2回目の観劇だからかもしれないが、話も分かりやすく、整理されたような印象を受ける。小道具、大道具を駆使した演出も、その専門性を分かりやすくして、話から心が離れないようにしているようだ。
はやぶさ、治村瑠壱子さん(関西大学・学窓座)。この方は、昨年のHPFでも拝見しているので、今年で3回目かな。大人っぽい雰囲気になられました。初演時は、夢や希望に自分が溢れている少年のようなイメージでしたが、今回は、自分の抱く夢や希望を多くの人に与える女神のような雰囲気に変わったように感じます。学窓座に入られたんだあ。私の普段の観劇の守備範囲だから、また観に行かないとなあ。
みねるば、原田有里さん。的確な言葉が見つかりませんが、アンニュイ美人みたいな感じでしょうか。孤独を知る、孤独を覚悟できている人だからこそ、人と人の結びつきを、自分のことを犠牲にしてでも大切にしているようです。
反動円環、宮原沙由巴さん。実際に、制御部としてボロボロになるまで、はやぶさを支えたようですね。従順に、純粋にはやぶさを見詰める。少しむきになって頑張ろうとするようなところは、そんな根性が重要部には必要といった感じなのでしょうか。
井音円陣、莊大雅さん(イベント企画ZEN's)、清水爽日さん、中村博紀さん(桃谷高校演劇部)。順に、責任と信念の下、一切の遊びを許さず、ひたすら力を発揮する動力の要、1号エンジン。そんな馬力重視の1号エンジンを補佐しながら、全体の調整を管理するような2号エンジン。ちょっと飄々としたユーモアを見せながら、過酷で責任の重い重要業務を担当する円陣たちの和を作り出す3号エンジン。
蛇草藩主、森本聡生さん(劇団アヤナチウム)。はやぶさ愛の象徴だろう。単にはやぶさ大好きだけではいけない。これは重要なミッションを持つ一大プロジェクトだから。はやぶさを守り、かつミッションを達成させてあげることが、本当のはやぶさの愛であり、時には相反するこの想いに苦悩しながら、はやぶさを見詰める姿が堂々としていた。
管制官、西尾佳瑶子さん、比嘉千仁さん、中島穂香さん。順に、優しく包み込むような、かつ冷静沈着な厳しい判断をする母のようなイメージ。しっかり者で、ツッコミ上手な姿を見せながら、懸命に業務に取り組む。天然のボケをかましながら、はやぶさの情勢に一喜一憂する、はやぶさ帰還を願う世間の象徴みたいな感じか。
すとおりいてらあ、川本佳穂さん。たたずまいと声の抑揚がとても綺麗。話の展開の進行役はもちろんだが、観ながら抱く様々な感情を一度、整理させ、最後のシーンに導くような巧妙な仕事をされているようだ。
あと、ダンサーさんが5人。お顔とお名前が一致しないので、個々にコメントを書くことができないが、妖艶な姿で、舞台の空間を美しい宇宙へと変える。よくよく考えると、基本設定は時代劇なので、この変換はなかなか絶妙だ。
ところで、今日は終戦記念日。
行って戻って来ないと言えば、やはり特攻を思い出す。
行ったきりでお別れだから、悲しく辛いだけ。そこに希望は無いなんて考えだったが、なんか少し違うのかもしれない。
多くの人の想いを載せて旅立つ。このことが、当時は不遇の時勢の中で唯一の希望だったのかもしれない。
はやぶさは、自身は消滅したが、カプセルを地球に還らせた。たとえ、カプセルが戻ろうと戻るまいと、その偉業に私たちが希望と誇りを感じたことは間違いないだろう。マスコミや利権が絡む人たちは、成功の度合いで言葉を変えるだろうが、私たちの動いた心までを変えることは出来ないはずだ。
はやぶさが私たちに希望と誇りを与えたように、特攻で散っていかれた方々は、私たちに平和への感謝、これからの日本への希望、日本を立て直していく自分たちへの誇りを与えてくれたのだと思う。
最後、この作品では、はやぶさが、地球に帰還して丁重に飾られるカプセルを、優しく愛おしそうに抱き締めている。これは、もし、はやぶさが消滅することなく、地球に戻っていたらというフィクションだ。きっと、生きづらい世の中で、多くの人に希望と誇りを与え、新たな未来に向かって夢を持って頑張ろうなんて気にさせたカプセルを通じて、自分の成し得たことに想いを馳せて、日本に微笑みかけてくれているのだろう。
同じように、戦争で亡くなられた方々は、今の日本を包み込むように抱き締めてくれているような気がする。その表情は、はやぶさのように慈愛に満ちた素敵な表情をしているであろうか。もしかしたら、自分たちのしたことが、本当に未来への希望、私たちの誇りに繋がったのかを、少し不安に思ったような表情をしていないだろうか。
私たちは、きっとはやぶさを誇りに思っている。そして、彼から得た希望と誇りを基に、新たな道を進んでみようと考えたはず。その一つにはやぶさ2もあるのだろう。
戦争で亡くなられた多くの方たちが、はやぶさと同じように託した私たちへの想い。これを噛みしめ、その感謝の中で、私たちは彼らが微笑んでくれるような未来を創らなくてはいけない。
カプセルを抱くはやぶさのラストシーンは、未来への希望に溢れた地球を抱きしめる、願いと祈りの象徴のように感じた。
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コメント
お久しぶりです。はやぶさです。
昨年、一昨年とご来場いただき、ありがとうございました。
再びはやぶさものがたりを見ていただけるなんて、そしてまた素敵なご感想をいただけるなんて夢にも思っていませんでした。
二年ぶりの、そして新しいはやぶさものがたりを楽しんでいただけてとてもうれしく思っています。
ご来場、誠にありがとうございました。
投稿: 夢図しい | 2014年8月17日 (日) 17時47分
>夢図しいさん
ご無沙汰しております。
東京、大阪と公演、お疲れ様でした。
ご卒業されて、もうお会いする機会は少ないかなと思ってましたが、また、あのはやぶさで拝見できて、嬉しかったです。
趣向を凝らした楽しさは、変わりませんが、以前に拝見した時より、はやぶさが私たちに与えてくれたものを感じる部分がより大きくなっていたような気がします。
これからも素敵な作品と共にご活躍ください。
また、機会あれば、学窓座の方も観に伺います(゚▽゚*)
投稿: SAISEI | 2014年8月18日 (月) 10時14分