« 覇道ナクシテ、泰平ヲミル 蝕王曹操編【劇団ZTON】140829 | トップページ | 酔筆奇術偏狂記【劇団レトルト内閣】140830 »

2014年8月31日 (日)

いつのまにか、ちがう野原を歩いてる【JUIMARC】140830

2014年08月30日 OZC GALLERY (65分)

同期の女性お二人の会話劇。
自分が歩んできた道、これから進もうと決めた道。
正解、不正解なんかは分からない。人が決めることではないし。
夢や期待ももちろんあるけど、それ以上に不安も大きい。そんな不安を、かつて手を取り合っていた者の自分への温かい想いを感じることで、不安の中にほんの少しの、でもかけがえのない勇気と自信を抱いて、前へ進もうとするまでの素敵な時間を描いたような作品。

知らぬ間に、会う機会が少なくなっていた女性2人、つづとちほ。
久しぶりに、ちほがよく足を運ぶひと気の少ない川原で同じ時間を過ごす。
川を挟んだ対岸には同じように少し開けた河川敷、その遠く向こうには、ちほの通っていた大学がかすかに見える。もう、あれから10年ぐらいが経った。つづは自分より少し若いが。短大だったので、社会人生活としては同じくらいになるらしい。
つづは子供を産む決心をした。向こうの両親も、急なことで驚いた様子は隠せなかったようだが、支援は出来る限りすると快く受け入れてくれた。その男も、本当に辛い時はいつでも訪ねて来て欲しいと言ってくれている。今は、東京の方にいるようだが。普通じゃないとか、あり得ないとかの決断なのかもしれないが、つづは自分の進もうとしている道に揺らぎは無い。
ちほは、かつての大学時代のクラブ活動でひたすら、この辺りを走りまくった思い出を語る。デッドヒートだったらしい。辛いし、走りが遅かったら、ペナルティーで多額な罰金が待ち構えていたりしたが、クラブを、走ることを辞めることは無かった。そんなに懸命だったという自信は無いが、決して怠け者では無かったと思う自分は、今、失ったものについて考えることが多くなったようだ。元々、持っていたのか、それとも、今、持つはずだったものなのかは分からないが、消えて無くしてしまったような感覚。
2人は、各々の話をしながら、自分の想いに対峙していく。
いつの間にか、違う野原を歩いている2人。
失うこと、別れることの悲しみを知るからこそ、その野原で共に歩く人が一緒にいつまでもいますように。

美しい音色と共に、語られる2人の言葉。自分に言い聞かせるようでもあり、相手に真摯に伝えたいようでもあり。そんなことを続けてきたからなのか、結局は、この2人、互いに自分よりも相手の想いを知っているような感じ。
自分の辛かったこと、楽しかったこと、不安だったこと、夢見ていたこととか全部が、あなたの今の想いに繋がっていればいいなといった感じの言葉がとても優しく響く。
2人の醸す空気もとても穏やかだけど、そこに互いの覚悟するという力強さも滲んでおり、心地よい雰囲気が漂う。

実際に劇団で同期のお二人みたいだが、同期特有の互いにたたえ合い、元気を与え、受け取りながら、自らの道を進もうとする感覚がとても気持ちいいです。
社会人の同期って、自分もそんな感じだったかな。前を向いて進まなくてはいけないなんて、まだどうなるか分からない不安を抱えながらの時に出会う者同士だから。
確かにいつまでも一緒にお手手つないで野原は歩けない。いつしか、手は離れ、気付けば、違う野原にポツンといて、不安だから握る手が欲しいなと思うことがある。
そんな時でも、手をつないでいた時の、その温もりなんかはずっと残るのかもしれない。こうして、会ったら、そんな時の不安な自分の手を握ってくれていた時のその温かさが蘇り、自分の進もうと決めた道にまた、不安を残しつつも、自信を持って進めるような気がする。

|

« 覇道ナクシテ、泰平ヲミル 蝕王曹操編【劇団ZTON】140829 | トップページ | 酔筆奇術偏狂記【劇団レトルト内閣】140830 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: いつのまにか、ちがう野原を歩いてる【JUIMARC】140830:

« 覇道ナクシテ、泰平ヲミル 蝕王曹操編【劇団ZTON】140829 | トップページ | 酔筆奇術偏狂記【劇団レトルト内閣】140830 »