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2014年8月23日 (土)

女子芸人【DOORプロデュース】140823

2014年08月23日 インディペンデントシアター1st (125分)

作品自体が漫談のように、ボケとツッコミが満載。シャレタ言葉を交えながらの、まさに芸を楽しむような話でした。
女性であり、芸人でもある苦悩や葛藤、降りかかる試練をリアルに描きながら、それを乗り越え、覚悟を決める女性の凛とした美しい姿が映し出されます。
女子芸人の魅力はもちろんですが、師匠陣の味のある演技もなかなか楽しい。
爽やかな、生き続ける誇りと希望を感じるような素敵な作品でした。

<以下、あらすじがネタバレしますが、原作があるので、白字にはしていませんのでご注意願います。公演は日曜日まで>

女芸人、平のコトリ。演芸場では、漫談ネタをしている。
師匠は、自由気ままなお気楽な人。その奥さんはとても優しく上品で、面倒見もいい人だが、さすがは芸人の妻だけあって、でかいおならをして平然としているぐらいの豪快さも持ち合わせる。
最近、師匠が飼い始めた犬は、どう見ても人間くさくて何か怪しいし、自己主張が変に強いので苦手だ。
妹弟子のみゆきは、今時の若い子で礼儀や言葉使いがなっていないが、持ち前の明るさと人懐っこさでみんなから大事にされている。自分のことも、姉さんと慕ってくれているのは間違いないだろう。若さを活かしてテレビプロデューサーなんかに上手く取り入って、テレビ番組のレギュラーを持っている。
コトリは、そこそこの歳になり、将来のことを考えるようになる。
先日の演芸コンクールの予選は通過して、本大会に進めた。でも、まだ芸に自信は持てない。仕事だって、正直、妹弟子の方が今は多い。
そして、芸の世界に入った頃は考えもしなかった、いわば世間一般に言われる女の幸せなんかも頭をよぎる。恋愛をして、いい男を捕まえて、結婚して、子供を産んで・・・
独立してネイルサロンを開いたり、二人目を妊娠なんてママをしている同級生と飲みに行ったりしたら、このままでいいのかちょっと不安がよぎる。
でも、嬉しいことだってある。司会の仕事をしているバイト先の結婚式場の若い男性が、漫談に興味を持ってくれて、演芸場まで足を運んでくれた。そして、一緒に食事。なんか、向こうもまんざらじゃなさそう。年下の安定した稼ぎのあるイケメン男。結婚。やっぱりいいものなのだろうか。先日は、式場でマリッジブルーになったのか、ウェディングドレスを脱ぎ捨てて逃げ出した女性を見たばかりだけど。でも、とりあえず、恋愛に関しては、今は幸せ。思うだけで、少し浮かれ気味になってしまう。

そんなコトリ。
でも、元々、色々なことに不器用な女性。
漠然とした不安に苛まれるコトリに私生活、仕事ともども様々な試練が降り注ぐ。
演芸場でよく顔を合わせる、大道芸ネタをする三木屋一門。師匠の玉里は、タマリンという愛称で呼ばれるお茶目な人。一番弟子の里ん吾兄さんは、師匠とは違った新しい視点での芸を深めながら、メキメキと力をつけて、人気も芸の腕も上昇中。
弟弟子のたま吾は、コトリと幼馴染。付き合っていたこともあるみたいだが、芸の世界に入った時に別れたらしい。まだ、コトリに未練があるのか、最近のコトリの色気付いた行動にイラ立ちを隠せない。そんなことだから、まだまだ未熟な上に、芸に身が入っていない。
でも、そんなたま吾も、変わらなくてはいけない日が来る。師匠が心筋梗塞で危篤。三木屋の芸を自分は守って行かないといけない。兄弟子は自分の新しい芸を極めるつもりだから。所詮、自分は師匠のコピーにしかなれない、いやそれすらも無理かも。たま吾の不安や焦りは、コトリへの不満となってぶつけられ、女は恋をして芸が下手になる、結婚やらに逃げられるなどを挙げて女性芸人の冒涜として罵られる。

順調だった式場の若い男との恋愛。
でも、ある日、若い職場の女性からコトリは相談を受ける。
好きな人がいるんです。名前を聞けば、それはコトリが想いを寄せる男性。
コトリは積極的にアタックすればいいと心にもないアドバイスをする。
そして、ちょうどデートの待ち合わせをしている男の下に、若い女性がやって来て告白。うろたえる男に、コトリはうまくやりなさいみたいなことをまたしても言ってしまい、破局を迎える。
若い女性の巧妙な手口にやられた感じだが、強がってしまい、はなから諦めるような卑屈さがコトリにあったことも事実だろう。

色々な辛いことが重なったコトリは、コンクールを辞退する。
それを責める妹弟子にも、あたってしまい、きついことを卑屈に言ってしまう。
師匠は、そんな二人を見て、コンビを組んで漫才をしてコンクールに出ることを勧める。
いい加減なことばかり言う師匠だが、自分のことも、妹弟子のことも、奥さんと一緒にずっと見つめ続けてくれていた師匠。
コトリは、どんな辛い時にでも、自分を見て、励ましてくれる、励ましてくれていた人たちがいることを知る。師匠や奥さんはもちろん、妹弟子だって、自分のことを心配してくれている。
三木屋の師匠や兄さんも。そして、たま吾だって、同じような辛い気持ちの中、コトリや自分自身に言い聞かせるように頑張ろうということを真摯な不器用な言葉で伝えてくれたのだろう。
自分の芸人の人生。芸を磨いて、芸人として大成する。それは、自分だけで出来ることでは無く、そんな周囲の人たちの力添えの中、成長していく結果なのだろう。そして、自分自身もそんな芸人たちの微力になって、この道をきっと歩んでいる。
コトリは妹弟子とサクラ姉妹という名でコンクールに出場。

予選も通過し、本大会前日。
妹弟子の彼氏から、コトリに電話がかかる。
切迫流産。妊娠のことをコトリには隠していた妹弟子は、コンクールに向けた厳しい稽古がたたったのか、限界がきてしまったみたいだ。安静にしていれば、子供も何とか無事みたいだ。
絶対に明日はコンクールに出場するという妹弟子をコトリは一喝する。
今、しなくてはいけないこと。女の芸人だからこそ、女の出来ることもやり遂げる。今は、妹弟子はそれに注力すればいい。自分は大丈夫。漫談で腕を鳴らした自分の力の見せどころだ。
バンジー。勇気を持って飛びこむ。
コンクールでは、緊張のためか、お腹が痛くなる中で我慢をしながら、ネタをやり遂げる。

それから、3年後。
久しぶりの舞台に立つサクラ姉妹。
妹弟子は、出産、子育てとようやく落ち着いて、舞台に復帰だ。
コトリもそれまでは漫談をしていたので、やや緊張の面持ち。でも、姉だから弱気なところは見せられない。
あれから、三木屋里ん吾は、師匠を超えるくらいの人気者になり、たま吾も師匠の芸の跡継ぎであるということを誰もが認めるような芸人になっている。
負けてはいられない。女子芸人の力を。
バンジー。舞台に飛び込む二人の前には、二人を待つ多くの客と笑いに包まれていた・・・

芸人の道。私生活、仕事ともに、女であることで受け入れないといけない苦難や試練。
卑屈になったり、嫉妬に苦しんだりと色々だが、そんなことを全部含めて、女の誇りや喜びに変えてしまえる精神を描いたような話かな。
実際に女芸人の方が原作の作品。作・演やプロデューサーも女性なので、真の姿をあからさまに描いているのでしょう。
芸人たちがたくさん出てくるので、自然と会話がボケとツッコミに。毒やシャレの効いた言葉の言い回しがとても面白いです。

自分でボケて、自分でツッコむ。作品自体が一つの漫談かのようです。
女子芸人の道を極めたコトリが、後世、自分の半生を描いた漫談として捉えてもいいのかもしれません。その中に数々の師匠や兄さん、妹たちとのエピソードや、自分の悲しき恋愛話なんかを交えているみたいです。
そんな作品は、女子芸人の厳しくも誇らしき人生に、笑いと勇気をもらい、人生立ち止まった人が前を向いて歩み出すきっかけになっているように感じます。
かつて、コトリが、自分が周囲の人の励ましで、また歩き始める決心をしたかのように、今、コトリの話は、周囲の人を励ましているのではないでしょうか。
バンジー。さあ、あなたも勇気を持って一歩前に。そんな苦悩を一つ乗り越えた女性の爽やかな掛け声で話は締められます。

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