HI↗GH SCHOOL 関ヶ原【劇団みゅーじかる.321♪】140822
2014年08月22日 芸術創造館 (120分)
ミュージカル、芝居、歌、踊り、殺陣、・・・
詰め込みましたねえ。それに各々応えることが出来る多彩なご出演陣。
コメディーベースに見事なエンタメ作品が出来上がっていました。
そして、笑い一辺倒ではなく、そこに込められた想いのこもったメッセージを時折浮き上がらせながらの、緊張と緩和の妙を活かした作品になっていました。
最初はただただ楽しく笑いながら観ていたのに、いつの間にかそれを持続させながらも、なぜか、真剣にじっくりと話に魅入るという不思議な観劇になりました。
<以下、ネタバレにご注意願います。許容範囲と判断して白字にはしていません。公演は日曜日まで>
PTA会長選挙が迫る高校。
従来なら、生徒会長の母親がすんなりと選ばれるのだが、今年は対立候補がいて一騎討ちの選挙になるらしい。
生徒会長の石田君は、前説をしていたが、ちょっとヘンテコリンな子なので、その親となると仕方ないことかもしれない。
PTA会長が先生たちに与える影響はかなり大きく、第三職員室に所属する先生たちは、石田君のお母さんに気に入られるようにこれまでふるまってきており、今さら違う人が会長にでもなったら大変だ。最悪、この第三職員室は解体、自分たちも首になってしまう。
対立候補は第一職員室が推す徳川エリザベートという帰国子女の母親らしい。噂では、異常なまでのハイテンションで、自意識過剰に、自分勝手、傲慢とおよそ会長職などにはふさわしくないのだが、何と言っても金と権力がある。会長になれば、莫大な寄付をしてくれるだろうし、学校の理事長にも顔が効くので、第一職員室の先生たちは安泰だ。第一職員室の先生たちと一緒になって、徳川推しの教頭は、次期校長の座も用意されることになりそうだ。
劣勢を強いられる第三職員室の先生方は、第三と名が付くだけに、いわゆる落ちこぼれ先生のような変わった人が多い。
真面目なんだか、不真面目なんだか、悪ノリのおふざけをしながら、こぶしをきかせた歌を奏でる先生。
なんか、ずっとバナナで遊んでいる動きにキレがある先生。
第一職員室に寝返ろうとしながらも、同僚の先生への恋心や、強引な引き止めに揺れ動いてしまう優柔不断な頼りない先生。
とにかく綺麗なのでモテまくり、製薬会社から警察トップまで幅広い交友関係を持つ先生。
理事長の彫刻をただひたすらに守り続ける先生。
電話恐怖症という不安定な精神状態で騒ぎまくるが、冷静な一面も持ち合わせ、教頭に恋をしている先生。
元覆面のロックバンドでひっそりと活躍しながらも、今は安定の道を選んで、波風立たないようにおとなしくしている先生。
株や博打で多額の借金を抱える先生。
天然、近眼、鈍感と3拍子揃った自由奔放な先生。
それと、第二職員室から、ロッカーの精神を持ち、なぜか山芋に詳しい先生がよく出入りしている。
優位に立つ第一職員室は、逆にエリート揃い。
冷静沈着に事を確実に進める、能力高い教頭。
その教頭に憧れ、忠実な右腕となる武闘派の先生。
最近、妙齢の不安からか若い先生への嫉妬が隠せなくなっているが、クールな美しさを武器に、第一職員室に華を添える先生。
あとは、スマートなたたずまいやキレのあるダンスで、出来る雰囲気を滲ませる先生や、とにかく体育会系で根性だけで勝負する先生。
第一職員室と第三職員室の天下分け目の戦いの火蓋が切って落とされる。
そんな戦いを見守る、影が薄い校長先生、怪我をすれば飛んできて、その痛み、苦しみを恋愛に置き換えて励ましてくれる保健室の先生。
外には警察までもが駆け付けてきている。巷では連続殺人事件が勃発中。不審者が学校に侵入したというのだ。
バンドを復活させようと学校に乗り込んでくる怪し過ぎる覆面男、借金取り立てのがら悪い男。
戦いの行方は・・・
いつから、変わったのかなあ。
最初は、華やかな歌やダンスで、ミュージカル調のエンタメを楽しみ、おかしな先生キャラのやり取りや弾ける姿を笑い、コメディー鉄則のスレ違い、勘違いによる脚本の妙に感心しながら観ていたのに。
いつの間にやら、人が思いを実現するために捨てなくてはいけないことや、選ばなくてはいけないことに言及するような真摯な話になっていき、自分の思いのままに生きることと対峙することへの厳しさを描くようになってじっくりと魅入るようになる。
そんな風に、どこかでキャラを真剣な感じにシフトした役と、最後までコミカルを貫く役を後半は同居させたからかな。
根本的におふざけ先生キャラばかりなのですが、過去の受験失敗や、逆に自分だけが成功したことで壊れた人間関係などの経験を持つ先生が、そんな想いを生徒にはさせたくないというポリシーの下、先生という職を全うしているようなエピソードが描かれたりします。バンドなども、やりたいから続けられるとは限らず、捨てた者とまだ捨てないで想いを持ち続ける者の対立のような形で描かれ、どちらが正解とも言えないような話です。
私たちは、生きる中で、様々なことを選択しないといけない。それは、その時に置かれた環境に応じて、正解だろうと間違いだろうと。その答えは、後にならないと分からないけど。
そんな人生訓が、戦局に応じて、様々な決断をしないといけない決戦の中の人間模様や、そもそも選挙という選ぶという形で表現されているのかなあ。
ポリシーを貫くのは大変ですね。孤独じゃないと貫けないこともあるし、逆に仲間と共にいないと貫けないこともある。それでも、その時に胸に抱く自分の大切な思いを守るため、人は戦わないといけないのでしょう。
ラストは、ずっと笑いの絶えない楽しく面白い話でしたが、そんな覚悟ある生き方の誇りを見せるような真剣な形で締められています。
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