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2014年8月22日 (金)

山犬【OFFICE SHIKA PRODUCE】140821

2014年08月21日 ABCホール (115分)

気分悪い。
演劇作品でも、本当にこんなにホラーチックな作品が創られるんだなあ。テレビや映画だけの世界かと思ってた。
じわじわ鈍く恐怖がなんて作品は観たことがあるが、これは、もちろんそれもあるけど、本当に率直に怖さが伝わるところも同居している。
そして、最大の魅力は、観終えて怖いだけにとどまらず、そこにあった歪んでいようと狂気であろうと、生ある者が持つ深い愛情に悲しみと切なさ、そしてそこに生きるということの覚悟があるのだといった感覚も得られるところのように思います。

<以下、あらすじを書いたのでネタバレします。筋道立っていないので、分からないとは思いますが、ご注意願います。もう既に東京で長期間に渡って公演があったので、白字にはしていません。大阪は日曜日まで>

10年振りに集まる高校の同級生たち。
卒業後、町を出て会社勤めをしていたが、最近、介護職を得る機会を得て戻って来た女性、ユキ。かつての事故で右足が義足でびっこを引いている。
家がヤクザだったので、当時から素行が悪く、今は消費者金融の取り立て屋として働く男、ヒロキ。
気弱でいつも、ヒロキの言いなりになっていたが、今はシェフとして多国籍居酒屋を営む男、イイダ。今日の同窓会会場もこの店だ。
かつての同級生たちが、みんな思い思いに飲みまくる中、3人はある男からもらった手紙を見せ合う。それは、タイムカプセルを掘り起こそうという内容で、テラニシという男から届いたもの。そのテラニシから、ユキの携帯に電話がかかり、タイムカプセルを埋めた裏山で待っているという。
3人の記憶にそのテラニシという男の名前はかすかにしか残っていない。
3人は裏山に向かう。

そこにテラニシはいなかったが、3人はタイムカプセルを掘り起こす。
イイダはモデルガン、ヒロキはユキからもらった生チョコ、ユキは人形。そして、骨らしき物も入っている。
いつものように空き地で3人で野球をしていた時、ヒロキが打った球が道路まで飛んでいった。いつもなら球拾い役のイイダが取りにいくのだが、この日は自分もバッターをしたいとイイダとヒロキがケンカ。ユキが取りに行く。その時、ユキの目の前にトラックが。
気を失いそうになる中、犬が右腕を加えて歩いていた。でも、自分の右腕は普通にあったが、右足はとんでもない方向を向いていた。そのすぐそばに人形が転がっていた。不幸にも右足は失ったが、それから、その人形が色々と自分を助けてくれた。卒業の時、その感謝と自分で頑張る意志を込めてタイムカプセルに入れた。
そんな、あまり思い出しくないことを思い出している時、テラニシからメールが入る。一体、何者なのだ。イイダが持ってきていた卒業アルバムを見ても、いまひとつよくは分からない。ただ、ずっと自分たちにつきまとい、どこかから見続けてきたようだ。もしかしたら、今も。

ある男が回想をしている。
自分の出生。醜く、汚く、貧しく。みんなから忌み嫌われていた。母親は、保健所のおじさんに連れて行かれた後、二度と戻って来なかった。
それからは孤独だった。ゴミを漁って、一人で必死に生きようとした。空き地では少年に汚いと罵しられながら腹を蹴られた。
こんな町にいたくない。気付くと、人が入ることが出来ないような小さな穴がある山小屋。男はその穴から山小屋に入る。
その時、チェーンソーを持った男が入ってくる。死体を切り刻んでいる。見つかった。殺される。そう、思った瞬間、金属バットを持った少年が入ってきて、殺人鬼に振りかかる。倒れた男を後に、二人で必死に逃げる。
少年の名はテラニシ。自らをヒーローと名乗って、自分を見下した目で見てくる。双子の兄がいるらしいが、陰気で何も出来ない奴らしい。それに比べて、テラニシは他の愚かな連中とは違う優れた人間だと粋がっている。
命の恩人。そして、彼から感じる、自分と同じ匂い。男は、テラニシに友達と認めてもらえる時が来るようにと、彼に虐げられながらも行動を共にするようになる。

ロキ、イイダ、ユキはいつまでたっても現れないテラニシにしびれを切らす。電話しても、不在メッセージが流れる。
やがて、イイダは一人で店に戻ろうとする。ヒロキとユキの関係を知っているから。昔から、ずっと自分はそうだった。ドリカムで言えば、あの人みたいな存在であることを。
イイダが去った後、ヒロキとユキはセックスを始めるが、不穏な空気を感じ出す。
ヒロキがイイダに電話をかけると、悲鳴が。そして、自分たちの下にも何者かが。
何に襲われたかは分からないが、気付くと三人は所々に怪我を負いながら、山小屋の中にいる。
小さな穴ぐらいしか無く、閉じ込められた状態。
ヒロキとイイダはここを知っている。ユキが町を出てから町を騒がせた猟奇バラバラ殺人事件。学校給食を作っていたインド人が犯人だった。そして、彼は処刑されたと聞いている。
気付くと壁にはシヌキデオモイダセという文字。そして、いつの間にかイイダの背中にはココニイルという血文字。
テラニシがどこかで自分たちを見ている。3人は見えないテラニシに脅え始める。

テラニシと男は、主従関係のような間柄を維持しながらも、いつも共にいた。
ボイパもダンスも出来るかっこいい男に比べたら、テラニシは見劣りするのは誰が見ても明らかだが、テラニシは男を見下し、男もテラニシに認めてもらうために必死に行動した。
二人はパトロールと称して、常にある女性を見守っていた。ユキちゃんを。
例えば、ユキちゃんが客席を歩いている中、痴漢が現れたなら、その人を容赦なく吊るし上げる。
ある日、テラニシは勇気を振り絞って、ユキちゃんと話をする。
昔、かくれんぼをしていた時、誰もがテラニシなんかを探そうとしなかった時に、ユキちゃんだけは自分を探し出してくれた。そのことを覚えているかと。
ユキは記憶があいまいでいまひとつ思い出せないし、ヒロキやイイダに呼ばれて急いでいたので、またかくれんぼをしようと軽くあしらう。今度は10年間隠れてねと。

山小屋では数日間が過ぎる。
ユキが少しテラニシのことを思い出すと、どこからともなく、カレーが用意される。飢えた3人は我先にとそれをむさぼり食う。
その味は、あの学校給食で食べていたカレーとよく似ている。
少し肉が固くて。
もしかしたら、これは。3人は、自分たちが食べているものが人肉カレーだと気付く。
あのインド人は掴まって処刑された。だったら、これは誰の肉で、誰が作っているのか。

テラニシは、ユキとの10年間のかくれんぼを本気にする。
自分は逃げ切る。そう、犬に言い残して、どこかに姿をくらまそうとする。そして、10年間、ユキを代わりに守れと。
その時、起こったあのユキの交通事故。かばおうとユキを突き飛ばして、車に衝突するテラニシ。彼の右腕はちぎれる。男はそれをくわえ、テラニシもユキに見つからないように逃げる。
着いた先は山小屋。
息絶え絶えのテラニシは、男にその腕を食えと言う。
そこに、インド人がやって来る。テラニシは、そのインド人をよく知っている。家が貧しかったので、学校給食の残りをよく食べさせてくれていたから。
インド人は、よく食することはその命を繋ぐことだと言っていた。
だったら、自分を友達、家族に食わせて欲しい。最期の願いをインド人に伝え、テラニシの体はチェーンソーで切り刻まれる。

山小屋では、3人の精神状態が限界を迎える。
ずっとヒロキに優位に立たれていたイイダは10年の積年の恨みを爆発させ、完全に狂ってしまう。ヒロキを殴り、それで人肉カレーを作ろうとし始める。なかなか死なないヒロキに、イイダはタイムカプセルに埋まっていたエアガンを発砲。それは、ヒロキの親が持っていた本物の拳銃だった。
そして、ユキにも発砲をしようとした時、あの男がテラニシに託された想いを守り、イイダの首筋に噛みつく。
息絶えるヒロキとイイダ。
呆然とするユキ。その様子を命を繋がれたテラニシの兄であろう男が覗いている。
ユキは、10年の約束を守ったテラニシとその傍にいる男のユキへの純粋な笑顔の幻影を見ながら・・・

と、交錯しながら話が進むのでうまく書けませんが、こんな感じの話。
グロいホラー劇ではあるのですが、ところどころ、笑いも混ぜ込むので、ずっと深刻で気が滅入るみたいな状態にはならないようになっているみたい。
それでも、積もる狂気の世界は、どんどんと気味悪さを増幅させていき、心に恐怖感を押しつけてきます。
悲しみを感じるのは、暴力性や残虐性に、全て純粋な想いが乗っかっているからでしょうか。見下される、見下すという関係性が生まれてしまうこんな世界の中でも、それでも孤独を恐れ、共に誰かと触れ合っていたいという想いが、男の従順さ、テラニシの狂気的な行動、イイダの暴力性、ヒロキの虚勢、ユキのやり直しへの意気込み、そしてインド人のカニバリズムにすら見出せるような気がします。
そこに言いようも無い深い愛情、人への想いがある。それを、ここまで歪ませてしまったのは、個々の問題なのでしょうか。男の犬であること、テラニシの不遇な環境が生み出す劣等感、イイダの気弱な性格、ヒロキの家庭環境、ユキの交通事故、インド人の国籍は、全て、自分でどうこう出来るようなものではなく、言葉としては安易ですが運命として与えられたもの。これが違った形なら、歪まずに平穏な時を過ごせた可能性もあったかもしれません。
それでも、命ある者はどんな形であろうと、同じく命ある者と触れ合い、想いを通じ合わせるために行動してしまう。それが悲しくも切なくもあると同時に、命を得て生きるという力強さと厳しさにも通じるように感じます。

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