吸血姫と透明少女【フルールケイク×TheStoneAge ヘンドリックス】140726
2014年07月26日 TORII HALL (100分)
最後でダウン。
愛と笑いの物語の、最後、愛で締めるところだ。
ベタの笑いで話を展開しながらも、人の想いに触れた優しい愛を感じさせて、ちょぴり涙の感動を与えて話を終わらせるのは、作・演の朝田大輝さんのお得意とするところであろう。
この愛の部分が、今回は私には不発で終わる。
理由ははっきりしている。
笑いの部分のウェイトが大き過ぎるのだと思う。それは時間もそうだが、3人の役者さんの力を甘く見積もり過ぎでは無いだろうか。
相当に強烈な破壊力があり、その笑いも、ベタだったり、濃厚さがあるので、観ていて疲れ、この上演時間では最後はもうぐったりだ。
通常ならば、ご出演の役者さんの数がもっと多いので、濃さも分散されるのだが、今回は3人ということもあり、がっつりとこちらも組まざるを得ず、最後はもう疲れと満腹で、あまり考えることが出来なくなる。
本当は、きっと夏のあの暑さのような笑いの熱気を存分に楽しみ、秋の訪れのようなちょっぴり寂しく、その夏の暑さを懐かしみながら思いにふける素敵な時間を感じることが出来たのだと思う。
ただ、暑かった。そんな想いしか残っておらず、明らかに消化不良をしているように感じる。
笑いという点では、間違いなく面白いですけどね。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>
時は飢饉が続く江戸時代。民衆たちは自分たちが生きることに必死で、人を思いやるとかの余裕が無い生活を強いられていた頃だろうか。
ある山村に、いつも一人ぼっちで夜空を眺める少年がいた。少年は、家の事情で生まれてくるべきでは無かったというような虐げられた生活をしており、そのためか、何も見えない暗闇で静かに自然の音を聞くことだけを楽しみにしている。だから、友達もいない。
そんなある日、少年は光り輝く十字架の首飾りが空から落ちてくるのを発見し、それを拾う。
翌日、その近くで二人のけったいな人たちに出会う。
異国の人のようないでたちをしており、一人は姫、もう一人はそのお付きの人みたいだ。
話しかけられるが、言葉が違うのか何を言っているのか全く分からない。
ところが、姫にいきなり首筋を噛まれたことで、なぜか言葉が通じるようになる。
どうやら、二人は旅をしていて、その途中で無くした首飾りを探しているらしい。
とっさに、少年は知らないと言ってしまい、その首飾りをどこかへ隠してしまう。
その日から、少年とこのけったいな二人との時間が始まる。
姫は歌に合わせて変な踊りを踊ったり、天然の訳の分からないことばかり言う、ちょっと変わった子。
お付きの人は、おじさんなのかおばさんなのかも分からない、とにかくいつもテンションがマックスの豪快な人。
そのうち、少年は姫と一緒に遊んだり、外の世界のことをお付きの人に教えてもらったりと、今までとは違う楽しい時間を過ごし始める。
初めて出来た友達。
そんなことを思うだけで幸せな気分になり、首飾りのことは言いだせない。だって、それが見つかったら、また二人はこの地を去って、どこかへ旅立ってしまうから。
このまま楽しい時間が続けば。
しかし、少年の体には異変が生じ始めていた。
牙が生えてきている。
それを知ったお付きの人は、自分たちの正体を明かす。
二人は永遠の時を彷徨う吸血鬼。
だったら、少年も吸血鬼になって、ずっと二人と一緒に旅をしたい。
そんな少年の願いに対して、お付きの人の答えは・・・
吸血鬼と少年の過ごす時間は、数々のエピソードと共に笑いたっぷりに描かれる。
同じ妖怪同士、ゲストの方が演じる天狗も登場して、吸血鬼たちにえらい目に合わされたり。
お付きの人の答えは、それは出来ないということでした。
吸血鬼の数は決まっており、人間が吸血鬼になることは出来ないのだとか。だから、噛まれた吸血鬼に逆に噛みつけばまた人間に戻ることが出来るようになっているらしい。
そして、姫もまた少年と同じように不遇の出生を持っていました。
彼女は人間と吸血鬼のハーフであり、本当は生まれてくるべきでは無かった。だから、こうして旅をするという形で、姿を隠して永遠の時を彷徨っているのだとか。
少年は悩みながらも人間に戻る決断をします。
共になぜ生まれてきたのかという宿命を背負いながらも、与えられた生を全うすべく、各々の道を進んでいく。
夏の出会いから始まった二人のわずかな時間。でも、そこで、二人は互いに分かち合い、想い合うということを経験した。
二人に残されたものは、別れという悲しいものでしたが、そんなかけがえのない大切な時間は、巡りくるこれからの人生の季節の中で、二人に優しい想いを引き起こさせ、相手を想うことの素晴らしさを語り継いでいくのでしょう。
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