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2014年7月31日 (木)

作・・・柵・・・越えられない【HPF高校演劇祭 咲くやこの花高校】140731

2014年07月31日 ウィングフィールド (70分)

2年前に拝見した高校。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/hpf120731-e9dc.html
この時は静かで美しい作品だったけどねえ。今回はずいぶんとにぎやかな作品。

ようやったなあといった感想が一番ですかね。
まず、ハッピーエンドじゃないでしょ、心の中の想いを描く作品が多い中でミステリーでしょ、高校演劇なのに下ネタ入れてくるでしょ・・・
HPFではしたらダメなのかなと勝手に思っていたことを盛りだくさん入れ込んでいる作品。
そのオリジナル性と自分たちの色出しを思いっきり堂々とされた姿に感服です。

話としても、演劇らしい交錯する世界を描いていて面白い。また、その交錯のさせ方も、よくある現実世界と小説の世界ではなく、小説の世界を二重にしたりしていて、その巧妙な構成に驚く。
ただ、もう少し整理してもらわないと、作品中の女性の憎悪の感情をたどることと交錯する世界の収束という演劇的な技術が絡み合わず、バラバラに楽しむような感じになってしまっている。
恐らくはシーン転換などのちょっとしたことで、このあたりは解消させられるはずであり、より魅力的な作品作創りをする余地はあるように感じる。

作家は原稿がはかどらず悩んでいる。担当は、自分の物語を書けばどうかと提案。経験豊富で、人には言えないような過去もある作家なので、面白い作品が書けそうである。
締切も近いので早速、作家は筆をしたためる。

どこか分からない場所に閉じ込められてしまった人たち。
探偵に、冷静沈着な助手。風俗嬢に、自制心に少々欠けた男。
探偵は、自称、名探偵と言ってはいるが、猫探しを成功させたぐらいで、ほとんどの仕事は失敗して訴訟騒ぎになっている事案もたくさん。しっかりしない探偵にいつも喝を入れるのが助手の役割といったところか。
風俗嬢は好きになった作家の借金を返すためにこの世界に身を落とす。売れたら迎えに来るとは言っていたが、一向にその気配は無し。
男は、特に何もしていないみたい。女にすぐ気を惹かれるみたいだが、手を出すほどの大胆な行動は出来ないような小心者なのだろう。
4人は、どこか出口を探すために、歩き出す。

小説家はデビュー作こそ売れたものの、その後は鳴かず飛ばず。
担当も困り果てている。
そんな中、作家を訪ねてくるある女性。ずっとファンだったのだとか。
彼女いない歴が年齢である小説家は、その女性から想いをよせられて、親密な仲に。
ハンバーグを作ってもらったりして、幸せな時を過ごす。まあ、ちょっと焦げていたりしたが。
そのうち、小説家は女に告白する。自分には大きな借金があることを。
女は作家を救うために、お金を自ら稼ぐ覚悟をする。

主婦と謎の女が路上でお喋り。
女は焼くためのものばかりを袋に抱えている。バーベキューをするのだとか。でも、肉は不要だとか言っている。
話す内容は、隣町に出来の悪い何でもする探偵がいるのだとか、近所に最近、売れた作家がいるのだとか、主婦の噂話を女はただ聞いている。
その探偵は人を殺してくれたりもするのかしら、作家の名前はなんて、よく分からないことを女は聞いてくる。全部、冗談だと言って、いつも笑い合ってお別れする。
女は探偵を訪ねる。依頼は猫探し。
そして、女は作家の家の場所も突き止める。

みたいな感じの三つの世界だったと思うのですが、自分の頭の方が交錯してしまっていて、よくは覚えていません。
前二つの世界は作家が創作した各作品のようです。自分の経験を基にしているので、繋がるようなところがありますが、時系列的にも異なっているし、異なる作品として原稿にはしたためられているので、交わることはありません。
そのあたりが、二つの世界の登場人物が、ある壁で仕切られたところで出会ったりして描かれています。互いの原稿用紙からは出られないので、交わることは無いといった感じでしょうか。

三つ目の世界が、作家が存在する現実世界です。前二つの世界が自分の経験から描いた作品なので、当然、その小説の世界の中の登場人物と同調する人がいてます。
最後、作家は二つの作品を仕上げます。
そして、女は予想どおりの行動を。
燃える作家の部屋。燃える原稿。三つの世界は全て燃えながら、一つの炎となっていく。
作家が本当は描きたかったのかもしれない、三つ目の作品。小説家が、風俗嬢になった女性を迎えに行く。つまりは、前二つの世界が繋がった世界。同時に未来に起こったかもしれない三つ目の現実世界。
でも、それは叶いませんでした。交わらないものはどうしても繋がりません。一つになったのは、最終的に現実世界も巻き込んだ形で、全てが燃えて消え去るといった悲しい結末でした。

話の方に集中が向かってしまい、役者さん個々に関して、あまりメモをしておらず、本当に一言しか書けません。こういった作品ですから、全員で不穏な空気を創り出すということがよく出来ているように感じます。
作家、鷲見肇さん。けっこう文豪っぽい雰囲気を出されていて貫録がありました。
謎の女、横谷綾香さん。不穏でミステリアスな雰囲気を漂わせます。じわじわと圧迫していく感が作品の空気をよく創り出せています。
担当、服部千紗さん。能力の高さにあざとさや冷徹さを感じる作家担当の独特の仕事っぷりが出ているように思います。
男、箱崎涼さん。チャラチャラしたいい加減な重みの無い男でした。この方が脚本なんですねえ。この作品を創る感性が恐ろしいです。
探偵、足達菜野さん。マンガから抜け出たような楽しいキャラ。動き、喋りともにテンポのいいリズムで演じられます。
助手、水谷佑佳さん。クールに淡々と。切れるツッコミ、時折、見せるボケ。絶妙な間とその空気が見事でした。
女、小林風香さん。自分の悲哀を描く一人芝居。押しつけがましい感を出しながらも、悲惨な目に合っている嘆きが狂気的な憎悪へと結びつく演技です。
小説家、十川千皓さん。作家の若かりし頃だからでしょうか。ずいぶんと男の甘えを感じさせる空気を醸しています。生みの苦しみから解放されるために大切な人の想いをむげにした。事件のきっかけになったキャラがよく描かれています。
主婦、山越未沙都さん。大阪のおばちゃんでしたね。会話のリズムや口調がそのままでした。大阪にいたら、演技の題材に出来る人は町に転がっていますものね。

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