あの日忘れた、大切なもの【HPF高校演劇祭 大阪信愛女学院高校】140724
2014年07月24日 ウィングフィールド (50分)
この高校は昨年に引き続き観劇。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/dearhpf130722-6.html)
観ていてなんか恥ずかしい。
高校生の恋愛青春ドラマだったから。また、女子高生が脚本から自分たちで創り上げた作品なので、その等身大さがまた・・・
少し全体的に緩いところが、拙さを生み出しているところは多々あるようには感じる。
でも、そんな姿もまた、高校生という今の時間を描いた風景なのだろうと思う。
何とも、こっぱずかしいけど、微笑ましく、色々つらいこともあるけど、限られた青春の時間を仲間たちとより楽しく創り出していって欲しいなと思うような作品でした。
ある日、親の都合で転校して来た女子高生、梓。
残りの2年間、みんなと一緒に楽しい思い出を作りたいと思いますと、ちょっと緊張した面持ちで挨拶をして、クラスの中へ。
偶然にも、幼馴染の玲がいて、少し安堵の表情を浮かべる。
騒がしい男3人組。仲良しグループの女3人組。ちょっと素っ気ないけど、気は良さそうな先生。
みんな、転校生の梓にまだちょっと距離はあるものの、すぐに馴染めそうな感じのクラス。
もうすぐ修学旅行もあるし、楽しい高校生活を送れそうだ。
早速、学校内を案内してもらう。幼馴染の玲が適任ではあるが、なぜか、隼人という男が率先してその役をかってでる。どうやら、梓に一目惚れしてしまったみたいだ。
数日後、隼人は梓を放課後に呼び出して、告白。
そんな経験が無い梓は面喰らって、一日待ってくれとその場を去る。
フラれたのだろうかと、頭の中でグルグル不安が渦巻くが、翌日、梓の答えはOK。
二人の甘酸っぱい楽しい時間が始まる。
が、ここで、大きな問題が。
隼人は舞香という女の子と付き合っていた。
隼人にベタ惚れで、家柄も容姿もいい舞香にとっては、自分がフラれるという考えは持ち合わせていない。
もちろん、隼人は梓に告白する前にけじめをつけようと別れ話を切り出しているのだが、舞香はそれで終わりにするつもりは無かった様子。
そんなことを知らない梓は、隼人とラブラブの学校生活を送っているので、舞香も黙っていられない。
いつの間にやら、周囲の生徒からも、舞香から隼人を奪ったひどい転校生、梓という形になってしまう。
このことを知った、隼人は舞香に梓を傷つけるようなことをするなと言いに行くが、それなら自分と付き合って、梓とは別れるように返される。
舞香の友達は、完全に舞香の味方で、このままでは梓は確実にクラスののけ者になってしまう。
隼人は梓に別れを切り出す。
本当の理由を話すわけにはいかない。付き合ってみたら、あんまりタイプじゃなかった。もう好きじゃないと言い放つ。
自分のことが好きじゃないのか、好きにもうなってはもらえないのか。梓の頭の中は、切なさや悲しみ、悔いでいっぱいいっぱいになってしまう。
ショックで梓は学校も休んでしまっている。
隼人は舞香とまた元に戻ったかのように仲のいい姿を見せる。
舞香の友達は、また楽しそうにしている舞香の姿を見て、安心しているみたいだが、隼人の友達や玲は、その不自然な姿に、隼人に対して真相を突き詰めようとする。
最初は、自分の気持ちを正直に話さなかった隼人だが、友達や玲が本気で心配し、梓のことを想う姿に触れ、本当のことを全て話す。
どうすることがベストなのかは分からない。
でも、本当の気持ちを梓に伝えたい。そうすることによって、梓に迷惑がかかるかもしれないが、自分の気持ちを分かってくれる仲間たちがいることに後押しされたのか、隼人はもう一度、梓と向き合う決断をする。
電話で梓と話し、自分の本当の気持ちを伝えた隼人。
それを受け止めて、喜ぶ梓。
翌日、久しぶりに二人は学校で再会するはずだった。
でも、あの電話の直後、隼人は事故にあったらしい。命に別状は無いが、病院に運ばれたのだとか。
自分のせいだと、右往左往する梓に、舞香はそんな悩んでつっ立ってないで早く病院に行くべきじゃないのかと厳しく言い放つ。
隼人はもう一度、舞香とも話をしていた。その中で、舞香も、別れることに納得したみたいだ。本当は舞香も分かっていた。隼人の目がもう自分に向いていないことを。好きだから別れない。プライドも高い舞香の当たり前の考えだったが、好きだから隼人のことを想い、別れる。そんなつらい決断を彼女もしたようだ。
病院に駆け付けた梓。
先に様子を見に来ていた先生から、隼人が大丈夫なことと、ずっとうなされながら梓の名前を呼んでいたことを知らされる。
みんな、気を効かせて、病室で二人っきりに。
そこで、二人は相手の目を見ながら、互いの想いを伝え合う。
数日後、隼人はクラスに戻ってくる。
ちょうど、修学旅行の打ち合わせをしている最中。
友達と以前のように騒ぐ隼人に舞香は、厳しくダメ出し。
女心が分かっていない。あなたが真っ先に向かうべき人がいるはず。
梓と話をしていた玲はわざとらしく席を立ち、隼人の友達も舞香たちとお喋りを始め、二人を無視する。
隼人と梓は、素直になれず、一度は失いかけた大切な互いの想いを・・・
といった感じの、もう観ていて恥ずかしくなってしまうようなお話。
漫画かっ、とツッコミたくなるような話だが、女子高生が脚本から描いた作品であり、これもまた一つの高校生の日常なのだろう。
おじさんの私には、何ともむずがゆく、心を掻きまくりたくなるような心持ちで楽しませてもらった。
開演前、知り合いのスタッフの舞台監督さんと少しお話をした。
この高校演劇祭で若い高校生と触れ合えて、とても楽しく、考えさせられることが多いらしい。
その人も20ちょっとぐらいの歳なので、そんなに若さは変わらないでしょと聞くと、彼はこう答える。
高校生、大学生、大学でたての社会人。みんな若いんだけど、その熱さが異なる。
多分、高校生は、自分の気持ちにストレートなんだと。
大人になると、周りや相手のことを、必要以上に気にしたり、関係性を重視したりするようになってしまう。そのことが、人間関係を調和はさせるが、自分たちの本当の想いをぶつけ合うことを邪魔しているのかもしれない。
言い合いなっても、ケンカになっても、自分の気持ちをそのまま伝え合う。そんな姿がとても心地いいらしい。
観終えて、この作品がまさに、そんなストレートな気持ちを思いっきりぶつけてきた作品になっているのではないかと感じる。
作品に登場する人物は、人との付き合い方がとても不器用だ。不器用というか、計算して物事を運ぶということをあまりしない。本当ならもっとうまくやれるはずだ。私からするととても幼く稚拙に見える。
でも、この稚拙さこそが、自分の本当の気持ちを、何も装飾せずに、ストレートに真剣に伝えようとしている最大の魅力となっているのだろう。
周りのことを意識して、誰かがこうだから、こう考えるべきでないとか思うべきでないとか。
そうではなく、自分の気持ちに正直に純粋に。
それがぶつかりや、スレ違いを引き起こすにしても、この時期だからこそ、そうあるべきなのかもしれないし、若い高校生はそうして時には傷ついたりしながらも、自分の大切なものを掴むべく、時を過ごしているのだろう。
素直な想いが幸せを導くこともあれば、それが傷つけ合いの材料になってしまうような多感な高校生の残酷な世界。
鈍感な男、鋭くストレートな女。
巧妙さが無いのか、揺らぐ気持ちに流されたり、思いっきりぶつかってしまったり。
自信があるようで無い。不安の中で懸命に自分を見詰め、人を想う若い人の姿。
ちっぽけなプライドが素直になることを妨げ、失ってしまうもの。
高校生のごく普通の日常を描く中で、そんな潜む厳しさや揺れ動く感情を浮き上がらせている。
ただ、その演劇的な手法に関しては、素人なので深くは言及できないが、拙いところが多々あるように感じる。
シーン転換。学校の日常を描いた背景を映すようにしているみたいだが、ちょっと無理矢理な感じがあって違和感が残る。
6人をバックに心の中の世界を描く演出。脳内世界、心の奥に潜り込んでいるといった空気が弱い。単に悩んでいる人がそこにいるといった印象しか受けづらい。
全体的に緩い。日常ってものを真正面から描いているから仕方がないところはあるのだろうが、もう少し緩急、起伏をつけないと盛り上がりに欠ける。緩さがいい意味で繊細な心情描写ではなく、弱いとか盛り上がらないといったマイナス要素の方を少し出してしまっている。
梓、岩本彩美さん。素朴な雰囲気だけど、自分の想いにきちんと芯がある女性像を創り出す。
隼人、岸梨花さん。ちゃらさ、幼稚さ、不器用さ。女子高生が見る男子はこんな感じなのだろうか。
強く振る舞ってるけど、自信の無さや不安で、心の中はいつも戦っている感が出ている。
玲、北地志帆さん。隼人のグループ、舞香のグループ、梓という3集団の架け橋的な存在キャラなのだろうか。一番、冷静に状況を把握するしっかりした感があるが、もう少し、この役の意味合いが明確に分かるといいように思う。
先生、森畑美奈子さん。悟ったカッコよさ。一人だけ大人を演じないといけない。その感じは、違和感なく演じられている。でも、ちょっとそんなに恋愛の経験豊富さを滲ませていない、高校生の登場人物と同じような不器用さが醸されてしまうのは仕方ないか。
舞香、田中春菜さん。お嬢様風の根深い、ちょっと嫌な感じのキャラから、最終的に一番感情移入しやすいかっこよさを醸すキャラへ。見つめ合って想い合う。その視線がいつかズレることもあるだろう。その時の切ない悲しみを綺麗に表現される。でも、その見つめ合った時に感じた色々な気持ちは全て思い出に刻まれて、その人の視線の魅力となるのだろう。ラスト、最初の登場時よりもいい女に見えることが、そんなことを感じさせる。
隼人の友達、豊川葵さん、足立佳代さん。
えらいハイテンションで男子高生のおバカさを引き出す。豊川さんはいつも舞台の中心に位置するムードメーカーのよう。弾け過ぎているのを足立さんがけっこう冷静に抑えるみたいないいコンビっぽい。
舞香の友達、明石楓夏さん、黒田唯奈さん。しっかりと貫録ある力強さを見せている方と、ふわ~っとした緩さを醸す方がいらっしゃり、顔は覚えているのだが、名前がどちらか分からず。等身大の女子高生なのでしょう。
あと、中等部の方かな、6人が、上記した学校風景や心の世界を創り出されている。上記にはあまりいいことを書いていないが、心の世界の語りなどは非常にしっかりとリズムを刻んで通る声でされていた。
言いたいことを言えなかった。あの時の大切な想いを伝えられなかった。
歳を経るうちに、そんな忘れ物をしたことすら気付かなくなってしまうのかもしれない。
だから、若い高校生なら、まだ、そんな大切な忘れ物を取りにもいけるのだろうから、走り出せばいいんじゃないかな。
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