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2014年7月13日 (日)

キリコの諷景【clickclock】140713

2014年07月13日 金比羅 FreeStyleStudio (60分)

リズムにのせて奏でられる言葉から描かれる、もう会うことが出来なくなった人への想い。
共に見た過去の風景を思い起こし続けて生きるのではなく、死と決別して、自分にふりそそがれる光から、自身の未来の風景を創り出す。
切なくも、出会いへの感謝、死への慈しみ、未来への希望を祈るように紡いだ素敵な作品でした。

宇宙の時間が止まり、太陽はその輝きを失う。
妹と共に過ごした故郷の向日葵畑。失われた太陽の光は、その種の中に眠る。
キリコは都会で働き、病気の妹に薬を届けるため、故郷への列車に乗り込む。
葬式帰りの女性、牧場を追い出された後で一緒になった愛し合う男と女、宇宙を研究する科学者とその助手。
列車の乗客たちと一緒に、巡る風景と共に、その思い出の記憶を巡っていく。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
刻まれるリズムにのせて、描かれる思い出は、列車の到着と共にある悲しい過去の真実へとたどり着く。

よく分からないところは多いのですが、列車は過去へ向かっているようです。
境界塔という人と神の世界の境界を築く風景を越えてからは、今は亡き、神となった妹が見る過去の風景をたどっているような感じです。
登場する女性の乗客は、キリコの過去の分身になっているのかなあ。
妹の死を慈しむ葬式帰りの女性、出会えたことに感謝の意を示す牧場の女性、失われた太陽が復活する奇蹟を願う科学者の助手の女性。
妹はそんな過去のキリコの姿と共にいることは出来ますが、今を、未来を生きるキリコとは決別しないといけません。
これからのキリコ、キリコが見る風景は、妹とは共有出来ないわけです。
二人の目に、かつての太陽の光によって映し出された過去の風景は、向日葵の種の中に眠った状態ですが、その種から向日葵は、再び輝き始める太陽の光を浴びて育ち始めるのでしょう。
その向日葵が吸収する光は、キリコの未来を映し出すためのものであるはずです。
悲しみから、共に見た風景を種の中に封印するのではなく、そこから、生き残った者は、新たな風景を描き出していかなくてはいけないといった感じでしょうか。

キリコは折り返しで未来へと向かう列車に乗り、妹と決別します。
それは妹との数々の思い出の記憶である風景を消去するのではなく、新たに注がれる光から、キリコ自身の風景を過去の光と共に創り出していくことのように感じます。
別れによって、もう一緒の風景を見ることは出来なくなった。その悲しみから、過去に共に見た風景だけを思い起こして生きていたら、これからの風景を目にすることは出来ません。それが太陽が輝きを無くしたような表現なんでしょうか。でも、太陽はいつの時も光を放っており、自分が俯いてしまっているだけなのかもしれません。
再び、頭を起こして、前を見つめることが出来るようになったキリコにはきっと、輝く太陽の光がふりそそぎ、彼女に美しい風景をまた見せるように思います。
切ない想いはぬぐえませんが、それでも、生死によって分かつことになったとしても、互いに出会って共に過ごした時を大切にしていくことを願う優しい話だったように感じます。

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