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2014年7月 6日 (日)

Bitter Sweet Samba -Life goes on-【TEAM☆RETRIEVERS】140706

2014年07月06日 インディペンデントシアター1st (95分)

シェアハウスに住むちょっと風変りな男女7人の姿を描いた作品。
その姿は、男女として、考えとして、生き方として共感できたり、反論を抱いたりするもので、ちょっと自分を見ているような感覚がこっ恥ずかしかったり。
色々なことを抱えて生きる自分たちが、同じく色々なことを抱える人たちと出会って、互いを見詰め合う中で、出てくる愛おしさみたいなものが感じられるような話だった。

あるシェアハウスで共同生活をしている男女7人。
グルメ雑誌に記事を書く仕事をしている女性,、香夏子が
、みんなのまとめ役。三十路間近で、女性陣では一番年配だ。毎月恒例になっているらしいが、今月も締め切りに追われて、共同スペースのリビングで徹夜。それでも、まだ終わらず、ピリピリしている。
もう、諦めて寝るなんて言っている香夏子を、なだめながら励ましている女性、陽菜。一応、ギリギリ平成生まれのゆとり世代らしい。と言っても、大人らしい一面があるので、香夏子の信頼のおけるいい話相手になっているみたい。大阪弁でちょっと荒い感じ。遠距離恋愛中。
もう一人の女性、桃香は、まだ幼い、完璧な平成生まれ。あまり、人付き合いが得意ではないらしく、ここに来た当初は人の目を見て話すことも出来なかったようだが、居心地がいいのか今では、みんなと仲良く楽しんでいるみたいだ。店長に助けてと言われるがままに、休み無くバイトのシフトを入れたりする生真面目なところがあるようだ。

働きもせず、自由気ままに暮らしているのが駿介。お調子者で、締め切りに追われ切羽詰った香夏子をからかったりするものだから、マジギレされてしまっている。何でか分らないが桃香に想いを寄せられているみたいだが、気付いていない様子。
かつてはNo.1ホストとして活躍しながらも、今はミュージシャンを目指しているという大地。駿介と一緒になって、ギター片手に騒ぎ倒すものだから、香夏子に本当に殺されそうなくらいにしばかれる。そんな香夏子に想いを寄せている。ちょっとマザコンの一面があるらしく、年配の女性に甘えたいという願望があるのかも。もちろん、香夏子には、男としては見られておらず、全く相手にされていない。
大学生で、今時の若者っぽく、ゲーム機を手放せない、ちょっとオタクっぽい隆裕。気が弱いのか、駿介と大地の騒ぎの巻き添えを食ってしまったりする。パソコンはお得意みたいで、香夏子の徹夜で作成したファイルが破損した時も、見事に復旧させて、感謝される。
深夜のラジオ番組のDJをしている栗林健太郎、通称、栗健。7人の中では一番の年配で、常識人。さすがの香夏子も、この人の言うことならおとなしく聞き入れる。他のみんなからも、頼りにされる、ちょっと若いがお父さんみたいな存在。ラジオDJであることを自分からは話していないみたいで、また、シェアハウスの基本ルールとして他人に干渉しないということもあって、知らない人もいる。女性陣は、さすがは女で情報通なのか、知っているみたいだが、男性陣はいつも朝に帰ってくる人で何をしているのかは分からないといった状態。
一幕では、こんな風変りな面々の騒がしくも、みんなの楽しい生活が、香夏子の締め切り騒ぎとして描かれる。

二幕は、男性陣による恋愛話。
女のことが全く分かっていない駿介。恋愛を理論でしか知らない隆裕。
女のことをホスト時代に知り尽くしている大地。年の功といった感じで、これまでに数多くの悲喜こもごもの経験を持つ栗健。
こんな男性たちが、恋愛論をくみかわす。
キーワードは松山千春の恋。いつまでも、女が待ってくれると思うな男よといった感じだろうか。

三幕は、今度は女性陣による恋愛話。
男性陣の噂話から、タウンページに中に挟まっていた千と千尋の神隠しDVDのパッケージの中に入っていた熟女AVに異常なまでの嫌悪を示す。
香夏子の仕事と恋愛に関する考え。幸せとは何か。お金、安定した生活。幸せを手軽に買えたらいいのになんて、恋愛に対して悟りきってしまったような考えを述べる。燃えるような恋愛なんてどこか遠くにいってしまったみたいで、やはり歳を経て、消えてしまうものがあるのだろうか。
桃香の駿介へのもどかしい片想いへのアドバイス。聞けば、完全に一方向の恋になっており、香夏子と陽菜は、おばちゃんのように男を落とすためのステップを熱く語る。
遠距離恋愛が上手くいっていない陽菜に見せる友情。でも、その彼氏から電話がかかってきて、今度ハワイに一緒に行こうなんて言われたら、もうすっかり陽菜はご機嫌。友情なんて、あっさりと男との愛情に負かされてしまう。

二幕、三幕の対比は非常に面白い。
男と女の根本的な違い、本性を見事に突いているのではないだろうか。
男が恋愛に対して、一般論的な感じで話すのに対し、女はあくまで自分たちに関わる個人視点で話す。
理屈っぽさが、独りよがりで軽薄な感覚を得る男の恋愛論に対して、実学的に感じ取れる女性の恋愛論はより現実的で深みがある。
現に、二幕の会話はだんだんと、退屈になってくるが、三幕はどんどん面白くなってきて、まだ色々とご意見をいただきたいような気持ちが芽生える。

四幕は、隆裕が酔いつぶれて、みんなで介抱するシーンから始まる。
どうやら、酒が飲めないはずの隆裕を男性陣たちの飲み会で調子に乗って飲ませ過ぎてしまったらしい。
どうして、こうなることが分からなかったのかときつい表情で怒りを示す香夏子。同調して男性陣を責める陽菜と桃香。
観ている私は男だから、よく分かる。分かっていても、そうなっちゃたりするのが男。基本的に飲んだりしたら、大人でいられなくなってしまい、子供心というか幼稚性がより顕著に出てしまうから。
睨みつけられて萎縮する男性陣。何だか、自分も叱られている感じでちょっと居心地が悪い。
でも、話を聞くと、これには大事な理由があったみたいだ。
栗健がDJをするラジオ番組の打ち切りが決まった。それに伴い、栗健は、ここを出て行く決意をしたらしい。
駿介も大地もDJのことは知らなかったのだが、隆裕は、受験勉強の時にでも聞いていたのか、ここに来た時にすぐに気付いていたらしい。そんな憧れの栗健のラジオが終わり、栗健自身もここを去ろうとしている。
でも、こんなことになって、一度全ての環境をリセットして、また頑張ろうと考える気持ちが分らないでもない。
だったら、飲むしかないだろう。栗健のためにも、自分のためにも隆裕は飲むしかなかったのだろう。

香夏子は納得がいかない。
ラジオ番組が終わる。それがどうして、イコール、DJを辞める、ここを出て行くことに繋がってしまうのか。
栗健は語る。
香夏子も仕事に生きる女性なので、必要とされていること、求められていることがいかに大切なことかは分かるはず。それを失った時に、男としてそこそこの歳である栗健が、新しい道を進んでみようと、一大決心をしてみたくなったことを。
香夏子にとって、栗健は頼れる存在だった。甘えていたところもある。でも、そんな大切な栗健がした決意ならば、ありがとうの一言で送り出し、自分もまた新しいステップを踏もうと考えられるようになったみたい。
二人は固い握手をして、これからの互いの健闘を誓う。

最後は、この後のシェアハウスの面々の姿がフラッシュで描かれる。
そこには、こうして繋がった絆は、これから先、どうなろうと切れることは無い。そして、そんな絆は、また必ず、各々にとってより良き人生の道を生み出してくれることを描いているようだった。

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