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2014年7月11日 (金)

けれどスクリーンいっぱいの星【劇団未踏座】140711

2014年07月11日 龍谷大学深草キャンパス 学友会館3階大ホール (90分)

有名作品らしく、事前に簡単なあらすじと他劇団の公演での感想をネットで調べて観劇。
だいたいをまとめると、とにかく動きまくって、セリフもまくしたてての勢いあるコミカルな話といった感じみたい。メタ構造が巧みで演劇作品としても評価が高いようだ。
若い学生さんたちの公演だから、パワフルで熱量豊富な仕上がりをイメージしていたが、観終えた感想はちょっと異なる。
ずいぶんとスマートで、バランスのいい掛け合いが成されており、勢いだけに任せたような形には全くなっていない。それでいて、展開はきちんとスピーディーで、メリハリのある盛り上がりを実現している。
ここは何度か拝見していると思うが、こんなに技巧色を押し出す魅力を醸すところだったかな。
何とも、分かりやすく、劇団の巧みな技を感じる気持ちのいい観劇だった。

<以下、若干ネタバレしていますが、有名既製脚本でネットで色々と載っているので、白字にはしていません。ご注意願います。公演は日曜日まで>

あるアパート、常盤コーポラス23に住むサラリーマンの男。
日常生活を営む中で他人に鬱積する感情。こんなものが爆発して、人に飛び蹴りでも喰らわしてやれとみんながなってしまったら。
相討ち。行き着く先は世界滅亡。これを防ぐにはどうしたらいいのか。相討ちではなく、友達になる。想い合いが世界を救う。
そんな空想を頭の中で繰り広げるにとどまらず、もう口に出てしまうぐらいになっているようだ。
そんなちょっと生真面目で変わった男と一緒に住む、ウェイトレスの女性は、いつも細かいことは気にしない明るい笑顔で男の悩みを吹き飛ばしてくれているみたい。
いつものように二人で座って平和にみかんでも食べている時、ふと、この緩慢な日常に疑問を感じ始める。
ドラマを作ろう。それも、愛と勇気、何だったら夢と希望の感動の物語を。
アパートの管理人である男、アパートに出入りしている新聞勧誘員の男、聖書販売員の女性も、そんな話を聞きつけ、5人はサラリーマンの創るドラマの世界に入り込んでいく。

地球を守る防衛軍。管理人がキャップで、残り4人が隊員。
敵は、・・・
自分たちの中に潜む別人格を実体化させたもう一人の自分たち、通称、アナザー。
彼らの目的は、自分たちを滅ぼし、世界を滅亡させること。
かくして、自分たちを、世界を守るための戦いが始まる。

この後は、アナザーに仲間の一人を殺されて、劣勢に追い込まれるものの、アナザーの弱点が醤油であることが発覚。
その争奪をかけて、多くの市民たちが犠牲になる。そんな悲しみを乗り越え、残された者たちがアナザーとの戦いを繰り広げます。
メタ構造になっていて、みんなで作品を創り上げていく上での表裏を見せながらの展開。仲間の仇、恋愛などをわざとらしく盛り込んで、このくだらなくも深刻な戦いに引き込まれるようになっているみたいです。

アナザーが鬱積した感情を持つ自分たちが生み出した存在ならば、その戦いは相討ちになってしまい、サラリーマンの男が空想するように自分自身の破滅が全てに起こり、世界の破滅へと繋がる。
防ぐ手段は、分かち合い、つまりは自分自身としっかり向き合うことだろうか。
それが、どんな状況であろうと、日常生活の中に楽しみを見出し、ハッピーエンドを迎えるための想像力、そして、それを現実化させるための自分自身の力や助けをもらえる仲間の存在を示唆しているのかな。

子供の頃に遊んだヒーローごっこのような感じの戦いの展開。
あの頃は、そう言えば、ヒーロー物という元ネタありきだけど、自分たちで友達と一緒に遊びのための話を創ったんだっけな。
楽しかった。間違いなく。
別に、毎日、学校に行って帰るというだけで、夢や希望に溢れる日常なんかでは無かったはずだ。その点では、大人になった今とさほど変わったようには思えない。
それでも、自分や友達との想像力や行動で、大きな夢と希望に溢れる話を、それこそ毎日、遊ぶために創っていたんではないか。
何で、今、出来なくなったんだろう。
もしかしたら、観劇することにここまで異常にはまった理由の一つはそんなところにもあるんじゃないかと思ったりする。
仕事や学業の日常の中で、色々な人が集まって、流行りネタや経験したことを基にして、必ずしもではないが、愛と勇気の感動物語を創るんだものね。
鬱積して、嫌な自分が出てきたんだったら、それと対決する自分の姿を想像とかして、夢や希望を語れる好きな自分を生み出してあげればいい。
それを実現した姿が一つの作品として生み出されており、それを楽しく感じて、勇気づけられているのかもしれない。
そんな退屈でくだらない日常に失望する人たちへの激励が込められているところは、この作品中の登場人物と作品を観る客が同調しているように感じる。

醤油はずいぶんとナンセンスだが、何か意味があるのかなあ。
アナザーは日常生活に鬱積する感情から生み出された者たちなら、日常の魅力に気付かれてしまうことで、自分たちは消えてしまうのだろうから恐れるはずだ。
そう思うと何となく、醤油はご飯でもコロッケでも、それこそだいたいの食事には合うような調味料で、退屈と思ってしまうありきたりの日常を味付けして、おいしく楽しくしてしまう驚異的な存在のようにも思う。

役者さん方のバランスがとても良くまとまっており、安心して楽しんで観ることが出来る。
その中でも、サラリーマン、えらっしーさんの落ち着いた感じ、ウェイトレス、保田菜央さんの純粋な楽しそうな笑顔、サラリーマンのアナザー、立川潤さんの露骨な悪役っぷりはキャラが立っており、目を惹く。

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