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2014年7月31日 (木)

ぶるはる【HPF高校演劇祭 鶴見商業高校】140730

2014年07月30日 シアトリカル應典院 (70分)

初めて拝見する高校だが、会場は満員御礼。立ち見やモニター観劇の方もいらっしゃったようだ。
確かにそれだけの人を集めるだけの、高校時代に経験するだろう自分探しの苦悩が会話から見出せる高校生ならではの作品が仕上がっている。

みんな、色々なことを胸に抱えながら、頑張ろうとしている。
結局、人は弱い。ましてや、若い高校生たちは弱い。だから、それを受け止めて、どうしたらいいのかを考えてみればいい。
一人で戦えないなら、家族や仲間がいる。決められたように、勉強やスポーツで青春を謳歌しないといけないわけでも無い。
そんなことに気付いて、人生の中の自分自身の大切な時間をどう過ごすかを自分が決める。
自分のための青春を見つけ出すまでの物語のように思う。

高校生の加奈。
特に勉強やスポーツに秀でているわけでもなく、何か特技があるわけでも無い。うち込めるものもなく、部活にも入っていない。
自意識過剰なのか、被害妄想があるのか、クラスの人が話していたり、笑っていたりしたら、自分のことを言われているのでは、笑われているのではないかと不安になってしまう。
だから、クラスに仲のいい友達もいない。いじめられたりしているわけではないが、浮いていることは間違いなく、教室に自分の居場所を見つけることが出来ないでいる。
ある日、学校を休んだら、そのまま、学校に行けなくなってしまった。意を決して、学校へ向かおうとしても、外に出るとどうしても足がすくみ、気分が悪くなり、頭が混乱して、部屋に逃げ帰ってしまう。

話は、学校を休む加奈の部屋に、家族やクラスメートたちが訪ねて来て、そこでの会話から、加奈がみんな抱えるものを持っている中で頑張っていることを知り、そして自分自身を深く見詰めることで、もう一度、部屋から出て歩み出すまでを描いている。

お母さんは、訪ねてくるクラスメートに自分の好きなハッピーターンを得意気に振る舞ったりと、明るさを失わない。心配だけど、何とかなる精神でこれまでもやってきた強さや、娘への絶対的な信頼があるのだろう。
お姉さんは、自分が高校の頃は学校に行くのが楽しかったけどみたいなことを言って、姉貴面して話してくる。姉は打ち込むことがあって、いわゆる青春していたのだろう。自分の時とは違うので、加奈の気持ちがいまひとつ理解できないところがあるようだが、それでも、高校生活を経験したことがあるので、何か感じることもあるのだろう。加奈を全否定はせずに、何かあればまあ、私がいてるよぐらいの姿を見せている。
弟の修二はまだ中学生。俺だって色々と大変なのに、姉ちゃんは休めていいよなあみたいな生意気な口を叩いてくる。ズケズケと言ってくるので、加奈もイラっとしてすぐケンカになってしまうが、そんな時間の方が加奈にとっては、一人で悩んでいるよりはましみたいだ。

幼馴染の凌は、相手を思いやることが出来る優しい子。何をしてあげばいいのかは分からないが、自分と同じようにきっと、加奈も青春出来てないんだろうなと思ったのか、青春(ぶるはる)という本を買ってきてプレゼント。勉強は苦手のようで、自分は本を開けもしていないようだが。自分も頑張ろうと思っていた、打ち込んで青春しようと思っていたサッカー部を膝の怪我で辞めざるを得なくなり、今、くすぶっている。加奈とは違う状況だが、一緒に現状打破できればと思っているようだ。
委員長の杏子は、クラスのリーダーとして頑張っている上に、ソフトボール部のキャプテンも務める。いわゆる文武両道の優秀な子。ソフトボール部の大会で表彰された時は、一人の力ではなく、みんなの力があったからだと思うという殊勝な言葉を語っている。上っ面で言ったのではなく、本当にそう思ったらしい。凌は自分もスポーツをしたかったこともあってか、そんな杏子に憧れている。でも、この杏子、凌にずっと感謝の気持ちを持っている。まだ1年生の頃、自分のミスで試合に負けた時、頑張れよとチョコを差し出してくれたのが凌だったのだとか。そして、いつも居残りで素振りしたりして頑張っているよなという言葉に、自分のことを見てくれている人がいるのだと感動して、それからずっと頑張ってきたらしい。今でもくじけそうになった時は、かばんに必ず入れているチョコを食べて自分を奮い立たす。そんなチョコを加奈にも食べて欲しいみたいだ。
同級生の誠果は、テンションの高い変わった子。前髪をちょっと赤く染めたりしていて、自分のポリシーみたいなものをしっかり持っているみたいだ。特に加奈と親しかったわけではないが、いつの間にか委員長に勝手に付いてきたみたい。それは、今の加奈がかつての自分と似ていたからだったようだ。自分の居場所が無いことから逃げている。そんな自分がきっと嫌になってしまっている。誠果は加奈と似た経験がある。昔、陰口を言われたことから、自分が揺らいでしまい、学校に行けなくなってしまった。その時、ちょっと変わったクラスメートから、机と椅子が待ってるみたいなわけの分からない手紙をもらったりする。保健室登校になったが、みんなはちょこちょこと遊びに来てくれた。そして、教室には、埃をかぶることもなく、ピカピカに毎日掃除された机と椅子があった。孤立、孤独を感じて、不安になったりしたが、自分には仲間がいて、居場所があることを知った。今でも、不安な時がある。でも、自分の机と椅子がそこにあるなら、そこには絶対に自分の居場所があると思っている。

加奈は家族の温もりを感じたり、仲間たちからの想いのこもった言葉を聞いて、自分をもう一度見詰めてみる。
凌からもらった本、ぶるはるはどこかに投げ捨てた。だって、冒頭からダメ人間が読む本と書かれていて、頭にきて読めなかったから。でも、今なら読める。加奈は部屋に転がる本を手にする。
そして、その本は加奈に語りかける。
自分が今、何をしたいのか、そのためにどうしたらいいのかを、加奈は逃げずに考える。
翌日、学校に行く加奈。加奈を待つクラスメートたち。そこは、確かに加奈の居場所であり、みんなと一緒に、自分だけのぶるはるを創り出していくための時間を過ごす場所となっていた

誰もが本当の自分の姿は見せずにいる。作った姿で必死に過ごす。学校だけでなく、社会はそんなものだと思う。
でも、学校はまだ生き方に巧みさが無い若い人たちの集まりだから、作った姿の内に潜む本当の自分が、どこにいったのか分からなくなって、自分の存在やら何やらがむちゃくちゃになってしまうのではないだろうか。
ましてや、高校生はキラキラしてないといけない。青春しないといけない。何かに打ち込んで輝いていないといけない。そんな考えに囚われてしまうこともあるだろう。
じゃあ、キラキラしていない自分はクズじゃないかなんて不安は誰もが持つ。
自分の輝きが見出せないから、人の輝きを認められない嫌な自分。すぐに比較してしまい、自分というものがしっかり持てない。
そんなことを押し付けられて、立ち止まってしまう。その立ち止まりの一つの形が加奈として描かれているようだ。凌だって形は違えど、道を探そうと今、立ち止まりながらも、奮闘しているみたいだ。

杏子と誠果は、各々の体験から自分が想われていることを知り、居場所を見出しているみたい。
これはきっと、ダメな弱い自分を受け止めることがを出来たからなのだと思う。
自分の弱さを認めてしまうことはとても不安なことだと思うが、そうすることで、自分はたくさんの人から想われていることを知る。決して、一人で戦わないといけないわけではなく、みんなから力を借りながら、進んでいけばいい。そんな経験が、二人の自信や誇りに繋がっているようだ。そして、二人は、自分がそうされたように、人に同じように想いを与えてあげることができている。

加奈は最後にぶるはるを読む。ダメ人間が読む本と書かれている本を。これが、加奈がダメな自分を受け止めたことなのだろう。
青春は押し付けられるものではない。だから、青春していないからといって、逃げる必要など何も無い。
大事なのは、自分自身の青春を見つけようとすること。同じように、自分のしたいこと、するべきことを探ろうと必死に生きている仲間たちと一緒に、自分の手でそれを掴み取ろうとする。
そんな姿こそが、その人自身のぶるはるなのだろうと感じる。

登場する役者さん方はとても多い。大半は生徒役という形で、音響や照明と合わせて、漠然とした学校の教室内にはびこる不安な空気を創り出している。教室の空気は、そこにいる数々の心が生み出すものだと思うので、この演出はとても綺麗にはまっているように思う。

加奈、難波優華さん。葛藤する心の機微の描き方が繊細でとても素敵。ちょっとがさつな女子高生像を映し出しながらも、そこに潜む弱さを醸すたたずまいも綺麗だ。
凌、百田然さん。優しさ溢れる幼馴染。他人の頑張りを認めてあげられ、その結果を純粋に喜んであげられる。自分も頑張っているからこその姿だろう。
杏子、松本彩さん。自分で何事も掴み取れるという自信と経験を持つ。凛としたしっかりした学校で見せる姿は、自分の弱さを頑張りで覆うような感じだろうか。
誠果、森田鯉寧さん。お気楽だが、そうやって何にでも喜べることを大切にしていきたいという経験をしているみたい。悲しみや辛さを知るからこそ、人には純粋に優しい。

姉、藤井幸郁香さん。妹の幼馴染を喰う勢いの肉食女子になっているが、加奈、その弟を見る視線は優しい。最後の最後は味方になってあげられるから、それまでは好きなように悩んで苦しんで頑張れみたいな優しが滲む。
弟、山本帆乃香さん。生意気な中学生。作品中の高校生のちょっと前の姿を映し出す。幼稚だけど、希望には今より溢れて、同じように不安もあった。今とそれほど変わらない姿と確実に経た成長の時間。今の高校生の自分たちが手にしたものを考えさせられるキャラなのかな。
母、木下愛可さん。血の繋がりが無条件に加奈を受け入れているように感じる。母の愛だろう。仲間たちの想いとはまた別次元で存在する大きな想い。

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