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2014年7月15日 (火)

女王たちの脅迫事件【劇団競泳水着】140715

2014年07月15日 Cafe Slow Osaka (40分)

非常に楽しい会話劇。
正直、もう少し、見たかったかな。
40分では、ビシっときまっていいところもあるが、面白かっただけに、もう一エピソードやエピローグがあるんじゃないと欲が出てくる。
ふんわり、淡い温かさの感じられる、人と人の触れ合いのお話。

盗りましたよね。
スーパーを出たところで、そう声を掛けられる女性。
シラを切るが、声を掛けた女性の携帯には、盗った仕返しとばかりに、ボディークリームを盗む姿が盗撮されている。
店が雇った万引きGメンとかではないみたい。
脅迫して金を相手からせしめるということを業としているらしい。
リナさん、このことをネットに流すことも出来ますよ。なぜか、自分の名前まで知っている脅迫してくる女性に対して、リナは逆に警察に訴える手段も無理だと悟り、値段交渉に入る。
相手は、手慣れている様子で、同じように脅迫している人がいる模様。

ある主婦もそうだ。
先日、脅迫したお金を分割で支払い終えた。
でも、支払いのために女に会うたびに、家庭の悩みを相談していたらしい。
生意気な小姑、それに従順なシスコンの夫、離婚したくても子供の存在・・・
女は、そんな愚痴を真摯に聞いてアドバイスしていたらしく、まだこれからもお金を払うから会ってくれとまで言われる仲になる。
そして、世の中には私と同じように悩みを持つ人がいるから、紹介すると。
何やら、代々医師の名家生まれだが、医師にもなれずごく普通の生活をしている頼りない男がいるのだとか。

リナはとりあえず、お金を分割で2回ほど払うが、3回目の支払い時に逆襲に出る。
イズミさん、逆にこのことを私がネットに流したらどうなるかしら。
脅迫していた女性は、自分の名前を呼ばれたことに少し驚くが、ようやく気付いたのかという安堵の表情も見せる。
二人は同級生。
イズミはとにかく目立たなかった子らしく、友達もいなかった。
反して、リナは学校の中心に位置するような子で、イズミは影で女王と呼んでいたのだとか。
リナとは隣の席になったこともあるらしいが、せいぜい、リナはどこかで顔を見たことがあるくらいにしか思っていなかったらしい。
バレてしまったからには、脅迫もこれで終わりかと思いきや、リナはある提案をイズミに持ちかける。
同じ同級生だったアヤコをゆすって、私の代わりにお金を支払わせようと。
アヤコはリナといつも一緒にいた友達で、イズミはNo.2と呼んでいた女性だ。
そのアヤコが浮気をしているというのだ。

アヤコは医師の息子である平凡な男と結婚した。
経済的な裕福さだけを求めていたのか、夫が頼りなく魅力が無かったのか、元々、男癖が悪かったのか。とにかく、浮気をしている。
でも、ある日、夫が急に別れを切りだしてくる。
浮気をして、妊娠三か月の女がいるのだとか。
結婚して、まだ二年足らず。一年もたたないうちに浮気されていたのかと思うと、怒りはおさまらない。
でも、夫のお前だって浮気しているだろという言葉に返す言葉が無い。
いたたまれなくなって、家を飛び出す。

そこに、イズミが得意の盗撮でラブホテルで男と密会するアヤコの写真を見せにやって来る。
いつもどおり、脅迫するのだが、アヤコは、自分の浮気がバレたのはこいつのせいだったのかと逆ギレ。
逆に脅されて、全てを白状させられる。
出会うリナとアヤコ。
どうしてこんなことをするのかと問い正すアヤコ。
二人は、昔、同じ男を好きになって、男に二股をかけられた頃から、疎遠になってしまったらしい。
そんな二人の会話を聞いて、同じ同級生でありながら、未だアヤコに自分のことが気付かれず、蚊帳の外にいるイズミは、そんなくだらないことで友達を辞めたのかと二人に説教。
私なんか、そんな友達すらいなかった。思い出の蓄積も何も無い。あれだけ、共に行動してたくさんの共通の思い出を持つ二人がどうしてそんなことでと。

こんなことになってしまったので、アヤコはもう家には帰れない。
だったら、うちに泊まるかと、ぶっきらぼうに言うリナ。
さすがに、二人っきりは厳しいと思ったのか、イズミも泊ろうと。
イズミはそんないきなりの提言にもびっくりだし、何より名前を呼ばれたりするのは、初めての経験でどうしていいのか分からない。
そうだ、仲間に入れてよ。私はゆすれるような人をけっこう知ってるよ。そんなことまで言い出すアヤコ。
イズミは、混乱して、その場を立ち去る。

残されたリナとアヤコ。
かつての友達だったとはいえ、どこかぎこちなさがやはり残る。
そんな空虚な時間が流れる中、イズミが照れくさそうに戻ってくる。
ゆすれる人ってどんな人なの。
イズミの二人を受け入れる意志を示した言葉に、その場の空気は柔らかくなり・・・

設定は、えらい悪いことなのだが、何とも淡くくすぐったい感のある、温かい話。
色々、みんな悩みを抱えていて、それを聞いてくれる人を欲している世の中。
意地張らずに、誰かに飛び込んでしまってもいいんじゃないの。けっこう、お互い様だったりするから、すぐに打ち解けたりできるものかも。
といった、友達なんてかしこまって作るものでもないし、自然の流れで繋がっていくよみたいなことを感じる作品でした。
作品名の女王は何だろうか。
女王でいる間は、友達は出来ないかもな。人に弱いところを見せることが出来ないから。
人間って、相手だって、自分と同じように弱いところがあるとは思っていても、何か、自分よりしっかりしていて、完璧だなんて思ったりするから、どうしても構えてしまう。女王であることは、そうした構えることの象徴のような気がする。
お互い、女王だから、相手を脅すような形でしたコミュニケーションが取れない。でも、ちょっと相手のことが分かれば、別に女王でも無く、単なる庶民同士だったりすることが分かって、一緒だなと安心してしまうような感じだろうか。

何かラストは犯罪グループ結成みたいな感じになっている。
確かに、冷静沈着なイズミ、打算的で計算高さのあるリナ、思い切りのいい行動力があるようなアヤコは、役割分担の明確ないい犯罪組織を形成しそうだ。
でも、きっと、すぐに辞めるか、実現しないのだろうと思う。
イズミがずっとこんなことをしていたのは、それで人との触れ合いを得たかったことが大きいような気がする。彼女の目的は、もうかつての同級生であるリナとアヤコと、ずいぶんと遅くなったが触れあえたことで達成されたように思う。だから、頭のいい彼女は、今度は、こんなリスクの高い犯罪でせっかく得た仲間たちとの繋がりを失うようなことはしないように感じる。
リナとアヤコも、ずっとあったわだかまりが、これで解消されたのだから、もう今度はこの繋がりを切ることのないように振る舞うはずだ。ましてや、今度は友達初心者の色々と面倒を見ないといけないイズミもその間にいるのだから、二人がそんなことをする間は無い。

イズミ、是常祐美さん。何でも真剣に重苦しく考えてしまう生真面目さが、脅迫だなんて大それたことに結びついてしまう不思議な思考回路。人との触れ合いの魅力に憧れ、その大切さを誰よりも知っていた彼女。後半は、脅迫することも忘れ、二人の仲のことを想う姿にこの女性の真実が浮かぶ。
リナ、渡邊歩惟さん。登場人物の女性たちは、各々、色々な形で女王の姿を見せているが、一番分かりやすい女王となっている。自分が一番で無いとダメだし、落ちぶれる姿などは絶対に人に見せられないプライドがある。それが、イズミとの出会いで崩れていく姿が、女王の殻を破って、虚勢を張ることなく、自分の中にある人を想うことが出来る優しさを露出してきたような感じ。
アヤコ、南志保さん。肉食系で、幸せや地位は、自分で勝ち取っていくような感じか。何か、威圧的なオーラが発せられており、声の大きさも伴って、怖い。男性的で、と書くと語弊があるかもしれないが、ねちっこいことはせずに、何でもサバサバと割り切ってしまうような印象も。人との付き合いに策略とかなど何もいらず、気に入れば友達になるといった感じを抱いたが、どうも夫との結婚とは相反しているような気もする。友達と旦那というのは、別物といったところだろうか。それとも、男と女の違いか。
主婦、片彩眞璃さん。一番、面白いキャラなのだが、イズミが少々暗めの性格なので、陰とすれば、こちらは陽といった感じで、実はよく似ている人なのかなと思う。鬱積する想いがあっても、それを人に話すことで発散できてしまい、その人を見つけることも自らで出来てしまう。いちいち、脅迫したりして人との接点を作ったりと回りくどく無く、単純明快な潔い心地よさがある。まあ、ある意味で、誰もかなわないであろう、まさに女王なのかもしれない。
夫、亀丸卓充さん。まあ、頼りなく、意志薄弱で、優柔不断で、・・・。追い詰められたら、逆に浮気を責めるなんて、あまりにもかっこ悪いじゃないかい。どうして、こんな男の弱いところをかき集めたようなキャラを作ったのだろうか。この作品では女王がメインだから、男は絶対にかなわない屈服すべきくだらない存在にしたかったのか。ちょっと悲しい姿だった。

短い作品なのだが、それだけに色々と想像できて楽しい話。
たとえば、夫は多分、主婦に連れられて、この後、絶対にイズミのところに行くと思う。
で、そこには妻のアヤコがいるわけで。どんな目に合うのやら。
もしかしたら、財産を三人でふんだくって、ハッピーエンドなのかな。

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