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2014年7月22日 (火)

こっからの、距離【空晴】140721

2014年07月21日 インディペンデントシアター2nd (90分)

作品はいつもながらの、人の想いに触れた温かい話です。
それよりも、ここは観劇すると、いつもいつも気分が良くなる。
きっと、作品だけじゃないんです。素敵なこの劇団に集まってくる人たちが、みんなで創り上げたものを見せられるからなのだと思います。公演自体が素敵だってところでしょうか。

<以下、あらすじがネタバレします。大阪は本日まで、その後、福岡で公演があり、期間が長いので、白字にはしていませんので、ご注意願います。素敵な時間を是非、味わいに足を運んでみてください>

おばあちゃんの傘寿の祝いに集まる人たち。
お祝いと一緒に、ある話し合いもなされる予定だ。何といっても80歳のおばあちゃんなのに一人暮らしなので、これからのことを話し合う必要がある。

姉の旦那と息子、妹とその婚約者、隣町の介護施設の営業、隣の家の兄妹、別れた夫の兄の娘が集まる。
でも、肝心のおばあちゃんは行方不明。
部屋には一人で折ると言い張っていたらしい千羽鶴が途中で置かれている。
警察に電話をした方がいいのでは。どこかで事故があっておばあちゃんらしき人が重体らしい。
集まった人たちは、やきもきしておばあちゃんを探す。
その中で、各々が抱える事情が明らかになり・・・

姉の旦那の息子は就職が決まっている。子育てもこれで一段落ということで、姉は旦那と一緒に喫茶店を始め、第二の人生を歩もうとしている。今日も、その新しく始める喫茶店関係の仕事で姉はここには来れないみたいだ。でも、息子はちょっと大学進学の未練も残している。旦那はそんなことには気付かず、自分たちのこれからで頭が一杯。母の今後に関する話し合いも、自分たちの第二の人生の妨げにならないように、うまくまとめるつもりだ。
妹は婚約者を連れてきているが、実はただの職場の後輩。姉は自由に人生を謳歌して、今日もこの場に来ないで逃げている。独身の自分に全てを押し付ける気じゃないのか。その防衛線を張ったようだ。私だって、店長を任せられていて忙しい。姉への不信からか、どうしても敵意を持った話し方になってしまっている。
介護施設の営業は全て嘘。本当は老人を騙して、貯めこんでいるであろう金をせしめる詐欺師だ。人がよさそうな感じなので、おばあちゃんもすっかり信頼して、周囲の人にもあの人はとても親切な人だなんて言っているらしい。いつの間にか、こんな人生を歩むようになってしまった。昔は、ボーイスカウトみたいなところで、子供たちの人気者だった。子供に対しても真摯に向き合って、悩み事にも一緒になって考えてあげられる本当にいい人だった。自分を信頼してずっとなついてくれた女の子のことは今でも忘れていない。
隣の家の兄妹は、家庭環境があまり良くないみたいだ。家にいたくないので、いつの間にか、ここに出入りするようになったらしい。一人で千羽鶴は折るから手伝うなと言ってきかないおばあちゃん。でも、どう考えても大変な作業過ぎる。だから、たまにやって来ては、内緒で自分たちが折った鶴を分からないように加えておくなんてことをしている。妹はあることに気付いた様子。介護施設の営業。彼が、自分が幼き頃に元気付けてくれたお兄さんであることを。そして、詐欺まがいのことをしていることも分かっている。でも、何も言わない。自分が知っているあの大好きだったお兄さんがそんなことをするはずがないから。
別れた夫の兄の娘。ややこしいが、要は従妹だろう。おばあちゃんの旦那は別れたあと、再婚した。でも、そのことはおばあちゃんにも伝えていなかった。それは、子供たちが傷つくかもしれないと考えたから。でも、おばあちゃんはそんなこと全部知っていた。それでも、旦那の想いを汲み取って、子供たちには言わなかった。子供たちも実は知っていた。でも、おばあちゃんが傷つくかもしれないとずっと黙っていた。そんなこともあってか、ずっとおばあちゃん方の親類には連絡をとっていなかった彼女。今日は久しぶりに、おばあちゃんに呼び出されて来た。

おばあちゃんは、部屋に日記のようなものを置いている。
そこには、今の自分の生活、今後の身辺整理のことも考えたことが記されている。
これからのことを考えて、うやむやになっていることを全部、この傘寿の機会に明らかにしようと思ったのだろうか。元夫の兄の娘を呼び出したのも、そのあたりが理由なのかもしれない。
元夫は入院中らしい。大きな手術が必要で、あまり容態も良くない。その千羽鶴だったみたいだ。元夫が亡くなりでもしたら、きっと完全に縁が切れてしまう。そのためにも、今、もう一度、みんなの距離を縮めておきたかったみたいだ。

おばあちゃんは、自分の人生、生活の中で触れ合った人たちのことを常に考えている。この部屋で日々一人の時間を過ごして過去を振り返りながらも、新たに出会う人たちのことも含めて、ずっと想い続けてきたみたいだ。
自分たちも、自分のことだけでなく、おばあちゃんのこと、そして出会ったみんなのことを考えてみよう。そして、そこから、これからをどうするのかを考えよう。自分たちも、各々、心の中に相手のことを想う気持ちはきちんとあったはず。それをもう一度見詰めてみて、その想いに正直な行動をしていこう。
いつでも出来る、いつでもやり直せる。
おばあちゃんが、教えてくれたことは、みんなの心に響き、各々のこれからをみんなで考えるいい機会となったみたいだ。

ちなみにおばあちゃん。内緒で近所のはっこき鍋名人の家にいたみたい。
傘寿のお祝いには、やはり、はっこき鍋をみんなでつつきたいという、サプライズだったのだろう。
鍋をつつきながら、互いの距離を縮め、各々、これからの新しい道を進もうとする。そんな姿がおばあちゃんにとっては、最高の傘寿のお祝いになって、心から喜んでくれるはずだ。

今回は客演に、久しぶりの太田清伸さん。詐欺師を演じる。いい加減で適当で、でも、心の中には温かいものを持つ。面白キャラなのに、泣かされるといういつもながらの素敵な姿。
そして、もう一人、小椋あずきさん。初見だと思うのだが、何てチャーミングで素敵な人なんだろう。絶妙なタイミングの貫録ある言動で笑わせながら、言葉一つ一つに優しい想いを込められる。作品中におばあちゃんは登場しないのだが、この方をおばあちゃんと同調して見るような感じになっているみたいです。いつも、しっかりと向き合ってくれて、やれる、やれると励ましてくれる。そこに、本当の想いが込められている。だから、おばあちゃんの周りにはこんな素敵な人たちがいつも集うんだろうな。80年間ずっとそうして生きてきたのだろう。おばあちゃんと出会ったたくさんの人が、これまでも、これからも自分の道を自信をもって進んでいくに違いない。

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