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2014年7月28日 (月)

忘れらんねぇよ【劇想からまわりえっちゃん】140726

2014年07月26日 近鉄アート館 (115分)

前作と似たような雰囲気のある作品だろうか。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-6.html

純粋に遊びまくる小学生。
ヒーローになりたい。自分を、親を、友達を、誰かをみんな守りたい。そして、最高の世の中を自分が創る。
そんなことをまだ本気で考える頃。
でも、そんなことは夢でしかないと現実を突きつけられたり、力が足りなかったり、どうしていいか分からなかったり、大切な人に理解してもらえなかったり、仲間に裏切られたり、違う夢に向かって進まれてしまったり、・・・
それでも、頑張っていると仲間も増えて、理解してくれる人と出会えて元気付けられたりしながら、楽しくて仕方がない日々を過ごす。
そんな幼き頃の溢れる夢や希望と共にいつもまとわりつく不安や悩みに翻弄されながらも、懸命に走っている人の姿が描かれる。
驚くべきは、そんな幼き少年の姿を、もういい大人の役者さん方が、等身大で描き出す。あの頃の想いを忘れることなく、今もひたすら走っている人たちなのだろう。ご自分方自身を投影したような登場人物たちが、舞台を駆け回る熱き想いに溢れる作品に仕上がっている。

感想は、上記リンク先の最後に書いた前作で物足りないと感じたものが全て、解消されていた。
暴れ回るかのようなハチャメチャな雰囲気を綺麗にエンタメに転換して、かつ想いをしっかり伝えることが出来ている名作だと思う。

つよしたろうは、ごく普通の小学生の男の子。父が急に失踪してしまい、母と二人暮らし。
いつも明るく元気で優しいお母さん。色々と苦労が多いことは子供ながらにも分かっており、早くお父さんが帰って来ればいいなと思っている。お母さんには迷惑をかけちゃダメだとは思ってるけど、勉強はあんまり出来ないし、口うるさく言われるとつい反抗的な態度をとってしまったりもする。こないだも、クラスのみんなが持っているゲーム機が欲しいとおねだりをしてしまった。
お母さんが、そのゲーム機を内緒で買ってくれていた。これでゲームが出来る。お父さんが失踪前にもやっていたゲームも。

早速、ゲームをしようとしたら、おかしな女神に連れられて、なぜかゲームの中の世界に入り込んでしまう。
そこでは、自分は勇者となって魔王を倒さないといけないらしい。
一緒に連れられた男市という奴は、偶然にもクラスメート。お金持ちの上流家庭のお坊ちゃん。ゲームが大好きで、勇者になりたいと毎日、神社にお願いをしに行っているくらいだ。
彼はいいのだろうが、つよしたろうは危険も多そうでちょっと引き気味。でも、女神曰く、クリアすれば、願い事を何でも叶えてくれるのだとか。もちろん、お父さんとまた一緒に暮らせますようにという願いも。それならば話は違う。

いざ、戦ってみると、そんな簡単にはいかない。大したことのなさそうな敵にもボコボコ。
経験値がやはり必要なのだろうか。でも、この世界でそれに当たるのは人間性らしい。
どうやってそんなものを上げていけばいいのか。
そんなことを考えているうちに、夜遅くになる。お母さんが心配しているのでは。
なんて思っていたら、現実の世界にはいつでも帰れるのだとか。
とりあえず、今日はこれで終了。

一方、魔王率いる悪魔たち。
次期魔王になるべく、悪魔王子は、口うるさい側近たちに指導を受けている。
何かにつけて、偉大なる父、魔王と比べられるので窮屈な思いをしているみたい。
人間の世界へ行って、そこで学べという教育方針らしく、王子は日々、学校に通う。
人間どもなど、悪魔に食べられる最下層の生き物。そう教えられている王子は、生徒たちの夢をことごとく打ち壊し、瞬く間に嫌われ者となる。
でも、王子はそんな悪魔の振る舞いに疑問を感じ始めている。

そんな王子がいるクラスに、つよしたろうも、男市も偶然にもいた。
彼らは、現実の世界でも人間性を高めるべく、人のために役立つことをする隊を結成する。
少し反省の色を見せる王子も仲間に入れて。
王子は徐々に、人間は思いやりがあって、優しい生き物であることを知る。
特に、誰にでも分け隔てなく、愛情を注いでくれるみちる先生のことは大好きだ。先生と争い事は辞めて、相手のことを思いやって行動するという約束をしたので、それを守ろうと色々と考え始める。

つよしたろうと男市は、ゲームの世界で、新たに実力あるひでさんという大人と出会い、一緒に旅をする中で少しずつ強くなっていく。ひでさんの実力はかなりのものだが、自分が何者なのかは記憶が無いみたい。
男市はセンスがあるのか成長著しいが、つよしたろうはまだまだといった感じだ。
二人は、ひでさんとの冒険の中で、ひでさんとかつて共に魔王と戦いながらも、今は自分のためだけに生きる男と出会ったりし、正義とは何なのか、人のために生きるということはどういうことなのかを考えたりして、その人間性を高めていく。
王子は、人間世界でどんどん人間の素晴らしさに触れていき、自分も優しく、相手のことを常に考えてあげられるようになりたいと願うようになる。でも、悪魔なので、人間を喰らわなくては生きていけない。人間だって動物を殺して生きているのだから。全ての者を助けてあげることは出来ない。でも、自分だけでなく、一人一人がみんなを助けたいと思えるような世界だったら。みちる先生とそんな話をする中、どんどんと悪魔とはかけ離れた方向に進み始める。

学校で父兄面談がある。
つよしたろうは母子家庭。成績も悪い。先生は冷たく、母に辛く当たる。
男市は、上流家庭出身だから、お金がある。先生も媚びへつらい、受験の心配もしなくて大丈夫そう。
つよしたろうは、ゲームの世界で差をつけられていることもあってか、二つの世界で両方とも優位に立つ男市との関係に亀裂が走る。
もう、ゲームの世界には行かない。有名塾に入って勉強して母親を安心させたい。つよしたろうの想いは友人ではなく、母親に向けられる。

ゲームの世界では、ひでさんと男市は遂に悪魔城まで辿り着く。
そこで、このゲームの真実を知る。
このゲームをクリアすれば願いが叶う。でも、同時に記憶を消されて、ゲームの世界の住人とならなくてはいけない。かつてのひでさんのように。
さらに、ゲームは永遠に繰り返される。全てをリセットした状態で。
勇者たちが高めた人間性や実力も、得た仲間たちの想いも、王子がこれまでに人間世界を経験した中で培った優しい心も、大好きだったみちる先生との約束や思い出も全部。
ひでさん、男市と悪魔王子の戦いの行方は。そして、つよしたろうは・・・

最後は、つよしたろうと男市の願いが同時にうまい具合に叶った形でのエピローグが描かれます。
男市の願いは勇者になること。生活は恵まれていても、両親との触れ合いに欠けていた男市は、新しい人生をこのゲームの世界に求めたようです。
だから、一緒に戦うと、最後は友情を優先して、ゲームの世界に戻って来たつよしたろうを男市は追い返し、悪魔王子との戦いに勝利します。
そして、つよしたろうの願い事であった、お父さん、お母さん、つよしたろうの3人の生活を叶えて、自分はゲームの世界に残ったようです。現実世界で一度も経験出来なかった親子の楽しい生活。男市は経験していないから、それがどういうものなのかは分からなかったのかもしれません。でも、友達のつよしたろうの強い願いから、それが素晴らしいものであることは感じていたのでしょう。その素晴らしさを知っているつよしたろうを元通りにしてあげたい。そんな男市の想いがあったようです。
敗れた悪魔王子は、ゲームのルールに従って、全てをリセットされて、ゲームに残ることになります。彼の面影として残っているものは、現実世界で大好きだったみちる先生にプレゼントしたセンスの悪いTシャツぐらい。もちろん、悪魔王子のことなど誰一人覚えていません。Tシャツを着るみちる先生ですら。でも、不思議とそのTシャツがお気に入りなようです。

生まれ変わった悪魔王子は、また同じように人の想いを汲み取れる優しい悪魔となるのではないでしょうか。そして、きっとみちる先生のような優しい人と出会い、自分のことを想ってくれて、自分も想えるようなつよしたろうや男市のような友達とも出会うでしょう。その中で、彼が今回、答えを出せなかった、みんなを助けてあげられる、みんなが想い合える幸せな世界への道を見出せる時が来るかもしれません。
つよしたろうは、元に戻った楽しい家族との生活を過ごす中で、心には刻まれているであろう友達の想いが彼を豊かな人間へと成長させるはずです。それは、これからの人生でつよしたろうが、また相手を思いやるという行動に繋がることでしょう。
男市は、ゲームの世界に入り込む人たちとの冒険の中で、いつの日か、家族への想いを理解できる日が来るかもしれません。
永遠に繰り返されるゲームの世界ですが、そのクリアのたびに、少しずつ蓄積する人の大切な想いはいつの日かきっと、本当のゲームのクリアと同時に、夢のようかもしれませんが、みんなが幸せに楽しい時間を過ごせる世界が創り出されるようにも感じます。

役者さんは、全員、個性的過ぎて、誰を注目して観ればいいやらで。
可愛い、セクシー、奇抜、狂ってる、一応かっこいいやら、色々とありましたが、一人だけ名を挙げるとするなら福富宝さんですかね。お母さん役です。息子だけでなく、みんなを想える優しさを芯に秘めたような明るく豪快な母像となっています。本当の幸せな世界は、彼女のような純粋な人への愛情を振りまける人が創り出していけるように思います。

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