アメリカンバッファロー【北口裕介プロデュース】140705
2014年07月05日 シアトリカル應典院 (110分 休憩15分)
すごくイラつきますね、この作品。
登場人物の浅はかさが、滑稽というよりかは、嫌悪となって心に残ります。
また、翻訳されているからか、言葉に違和感があり、言葉の重みが全く感じられない。これがまた、登場人物たちの愚かさを際立たせて見せているようで、おいおい、どんだけダメな連中なんだよと。
アメリカンドリームやら、ビジネスやら、愛やら友情やらと語るわりには、ちっぽけなプライドに執着して大したことない金を追い求め、リスク管理一つも出来ない、自分たちの感情コントロールも出来ない無能さを恥ずかしいくらいに見せ、ずっと傍にいる人のことを信じることも出来ない。
腐った連中のクソみたいな一日を見せられたようで、気分が悪くなります。
まあ、これだけ嫌悪感を抱かせるほどに、役者さんの上手さがあったのでしょうが。
<以下、あらすじがネタバレしますのでご注意ください。海外の有名戯曲らしく、ネットで検索したら情報は出てくるので白字にはしていません。公演は日曜日まで>
アメリカのシカゴ。
この地で、ジャンクショップを営むドニー。
過去の繁栄、腐敗、衰退、そして万博による未来への希望といった歴史の中で産まれたガラクタたちが無秩序に並べられている。
ドニーは、ヘロイン中毒だった影響なのか、ちょっと頭が弱いボブという少年を雇い、面倒を見ている。
今は、ボブにある男の見張りを頼んでいるようだが、目を離して帰って来てしまったりして、ビジネスとはみたいな説教をしている。行動力やら、責任やらうんちくを垂れているが、要は色々なことを学んで頑張れば、成功してちゃんとした生活が出来るとボブに生きる道を教えようとしているみたい。ボブも、そんなドニーの気持ちを知ってか知らずか、素直に言うことを聞くだけは聞いている。まあ、行動が伴っていなかったりするのだが。
そんな中、悪友のティーチがやって来る。何やら、昨日のポーカーでいい思いが出来なかった上に、その後、仲間たちと一緒に行った喫茶店で侮辱的な言葉をかけられたとかで怒っている。怒っているというか、自分はそんなことで怒ったりしないと自分を落ち着かせようとするものの、過去のことまで遡って怒りが沸いてきたりと、感情制御が完全に狂ってしまった感じ。どうも、元からそういう感じの人みたいで、まあ、大きなビジネスにはちょっと向かなそうな人だ。かけられた言葉は、さほど気にすることも無いようなことなのだが、貧富の格差や人種差別が横行していた時代らしく、あまりいい暮らしをしていないティーチにとっては重要なことなのかもしれない。
ドニーは、ティーチの気を落ち着けようと、ボブに朝ごはんを買いに行かせる。
戻って来たボブは、あの男を見たとドニーに報告する。スーツケースを持って、何処かへ出かけようとしていたらしい。
ティーチは、それを聞きつけ、ドニーに何かしようとしているのかを教えろと迫る。
あまり、教えたくなさそうなドニーだが、友情やら、これまで一緒にやって来たビジネスなどを盾にしつこく聞いてくるので、ついに全てを話す。
先日、ある男がこのジャンクショップにやって来た。
その男は、インディアンの横顔と、バッファローの刻印が入った5セント効果を90ドルで購入していった。そして、またいいものが入ったら連絡をくれと名刺を残して去る。
ドニーは後から、それが90ドルでは話にならないくらいに価値があるコインであることを知る。
上手く騙された上に、電話をかけろと上からの物言い。これが気に入らず、その男からコインを奪還しようという計画を立てている。誇りを傷つけられたといったところなのだろう。
ドニーは、その家に侵入する役をボブに任せようと思っている。
ところが、ティーチは、それに反対する。これは、大きなビジネス。彼には荷が重い。
詭弁やら正論やらをまくしたて、自分がその計画に参加することを主張するティーチ。
ドニーは、ボブを外す決断をするが、同時にフレッツァーも参加させると言う。フレッツァーは、昨日のポーカーで大勝ちした男で、冷静かつ行動力に優れた、みんなから一目置かれた男。ティーチは、昨日のポーカーの件や喫茶店でのこともあり、疑心を抱いている様子だが、一応了承。
再び、夜に集まることにする。
ボブはドニーに仕事をしたいと願い出るが、今回のことは無かったことにしろと諦めさせる。
ドニーは渋々、了解するがお金が欲しいとせがんでくる。それも50ドル。
一悶着ありながらも、結局はボブに仕事のことを忘れさせるために、50ドルを手渡す。
夜になる。
ドニーはイライラしている。
ティーチが遅れている上に、フレッツァーが来ない。電話も通じない。
遅れてやって来たティーチは、時計が壊れただの言い訳をするが、ドニーのイライラはおさまらない。
まあ、とてもじゃないが、ビジネスに挑む状態では無い。
そんな中、ボブが、目的のコインが手に入ったから、買ってくれだのやって来るので、イライラはピークに。
ボブは追い返し、ティーチとも言い合い状態。
ティーチは、フレッツァーは信用出来ないから二人で行こうと提案するが、ドニーは了承しない。侵入する的確な方法をフレッツァーに任せるつもりだから。
これにティーチは不服を示し、自分がいかにこの仕事にかけているか、リスクを想定しているかをアピールするかのように、どこから手に入れたのか銃をちらつかせる。
銃は必要無いと、またドニーと言い合いをする中、再び、ボブがやって来る。
ボブは、フレッツァーが賊に襲われ、顎の骨を砕かれて重体だということを伝えに来る。
どうもおかしい。
ボブとフレッツァーがつるんでいるのではないか。
あのコインをボブは手にしているし、こんな都合良くフレッツァーが襲われるとは考えにくい。
これまで面倒を見てきたのに。
怒りの頂点に達したドニーはボブを厳しく追及し、ティーチは彼をぶん殴る。
怪我をして、痛がるボブ。
そこに一本の電話がかかってくる。
それは・・・
結局は、ボブは嘘など全くついておらず、手にしていたコインも、コインショップでドニーからもらった50ドルで購入したものだったみたい。
頭の弱いボブは、コインを取り戻したいというドニーに対して、その結論だけが叶えばドニーは喜ぶと思ったのでしょう。
確かにコインを取り戻してもっと高く金にしたいのか、誇りを傷つけられたので騙した男を懲らしめたいのか、ドニーの目的には幾つかの要素が入り込んでしまっています。
前者ならば、少々、損はしますが、何百ドルで売りつけて大儲けすればいいわけで、ボブの取った行動は、ある意味、冷静な儲けビジネスのスタイルです。後者ならば、コインなどに目を奪われず、奴を非合法にボコボコにでもしてやればよかったわけです。
自分の達成したい目的のために何をすればいいのかが、ごちゃごちゃになってしまっており、こういった事態を引き起こしたのかもしれません。目的を明確にする。こんなところを見ても、完全にビジネスセンスの欠如が見られますね。
まあ、ボブはボーっとしていて何を考えているのかよく分かりませんが、ドニーに親しみと恩をきちんと感じていたのは確かで、そのために出来る行動を自分で考えてやったことは事実。
ティーチもウザい奴ではありますが、実は壊れたとか言っていた時計は、銃を手に入れるために手放したらしく、ドニーと本当に協力してこの仕事をこなそうとしていたのでしょう。
裏切りと信頼が交錯する中で、ようやく見えてきた各々の人の姿と相手への想い。
くだらん一日ではありましたが、こんな腐った世の中で、そんなことに気付いたことは、利益を得ることにしか目がいかなくなってしまっているドニーやティーチに厳しい現実と共に、ささやかなこれからの夢を見せたのではないでしょうか。
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