窓辺の金魚、宇宙の辻さん【家和○組】140720
2014年07月20日 インディペンデントシアター1st (100分)
とにかく面白かったですね。
めちゃくちゃな設定で、ストーカーみたいな深刻な犯罪をこんなにコメディーにしちゃっていいのかといったお叱りを受けそうですが。
そのあたりは、相手のことを想う、見守りたいといった、本当の根源部分だけに焦点を当てて描くようにしており、うまい具合に楽しい設定を創り出しているみたいでした。
出会いと別れ。そして、そこから導き出されるこれから。
人が人を想う純粋な気持ちを大切に描き、そこから生まれる仲間たちとの楽しい時間を伝えているような話でした。
美大を卒業して、イラストレーターとして働くあずき。
ちょっと頭は悪いみたいだが、真面目で一生懸命な優しい子みたいだ。
イラストレーターと言っても、大した仕事は無く、人付き合いが苦手なのだが、生活のためにとスーパーのレジのバイトをしたりしている。
生活費はギリギリで、直に家賃も払えなくなるし、電気も止められてしまいそうな状態。
そこで、彼女はある策に出る。
もう3ヶ月ぐらいだろうか。自分に3人のストーカーが付きまとっていることを知ったのは。特に悪そうな人では無い。毎日、部屋を覗いたり、ゴミ袋をあさったりと基本に忠実なストーカー。
彼女は、そのストーカーたちと、家に招き入れる代わりに、毎月お金を支払わせるという契約を結ぶ。もちろん、拒否すれば警察に通報されるので、ストーカーたちに拒否権は無いのだが、外側からのストーカーが、内側からのストーカーになり、レベルが上がったぐらいの感覚でみんな喜んでいる。
3人のストーカー。
高松さん。全身タイツを着込み、ちょっと変態っぽいが、普通のおっさん。どこで何をしているのか知らないが、お金はけっこう持っているみたいで、電話一つで何人かを動かせるぐらいの地位もあるらしい。
早乙女さん。着ぐるみみたいな可愛らしい服を来ているが、武闘派のレズビアン。彼女も何をしているのか、お金には苦労していないみたい。
辻さん。町役場に勤める真面目な公務員。町民のためにと真摯な態度でいつも向き合い、熱心に仕事をする。お金はあまり持ってないみたいだが、得意の機械いじりで、あずきのパソコンを修理したりと役に立っている。あずきには、かなり真剣に惚れ込んでいるみたいで、仕事に悩むあずきの癒しになればと思ったのか、大きな金魚のぬいぐるみが入った金魚鉢をプレゼントしたりしている。けったいなものだが、あずきの部屋の窓辺に置かれている。
部屋に招き入れられたと言っても、3人のストーカーに与えられた場所は、乱歩の人間椅子のように、ベッドの下、クローゼット、本棚の裏。
来客があれば、全員、ハウスの指示で、持ち場にすぐ戻らなけれないけない。
そんなあずきの部屋に、色々な人が訪ねてくる。
運送屋のお兄ちゃん。赤いジャージ姿で女子力0のあずきなのに、なぜかちょっとおかしな人には好かれるみたいで、一目惚れされて、部屋にも上がり込まれる。これ以上、付きまとう連中が増えるのも困るので、追い返すが、男は未練たっぷりの様子。
今は東京で活躍し、キャリア官僚や芸能プロデューサーの彼氏を持つかつての美大仲間。彼氏はいないし、仕事もうまくいっていないあずきは、見栄を張って、スペースシャトルの運転手をしている彼氏がいるなんて嘘をついてしまう。後には引けないので、辻さんをその彼氏にして、仲間に会わせる。幸い、あずき同じく、かなりのおバカさんだったので、うまく騙されてくれる。ただ、仲間は妙に年収などお金のことを聞きたがり、部屋を物色して、どれだけいい暮らしをしているかを確認したりしている。
荒々しい女性刑事。近隣で盗賊団が出没しているらしく、聞き込みにやって来る。と言っても、警察でもその正体は把握出来ていないらしく、あずきは部屋にいる3人組を疑うが、自分たちはれっきとしたストーカーだと強く言い張られる。なんでも、ストーカー協会とかいうものがあって、厳しい規約の下で活動をしているらしく、それはもうスポーツとも言えるものなのだとか。
ある日、あずきにチャンスが巡ってきた。
ご当地ゆるキャラのイラストを任せられる大きい仕事。
あずきは、その担当者と会うために、いつもとは違うスーツ姿に化粧をして出かけようとする。
打ち合わせの後は、ちょっと食事にも誘われているのだとか。
ストーカーたちは、騙されていると止めようとするが、そんなことを聞くわけもなく、あずきはストーカーたちに絶対に付いてくるなと言い放ち、外出する。
高松さんはどこかに連絡して、その担当者を襲うように指示するが、相当な腕前のようであえなく返り討ちにあったみたい。
夜遅く、あずきはその担当者と一緒に部屋に戻って来る。
仕事をあげるからと、あずきに大人の関係を要求する担当者。
ストーカーたちは力を合わせて、担当者を襲撃。早乙女さんは、元陸上自衛隊らしく、一撃で男を仕留める。
あずきに助かったと褒められるかと思いきや、仕事を得るチャンスだったのにと激怒される。
そんなあずきの態度にストーカーたちは失望して、全員、部屋を出て行く。
残されたあずきと担当者。
変な性癖があるのか、あずきは縛られる。
そして、いよいよという時、担当者は本当の姿を見せる。
彼が、盗賊団だったみたいだ。
なかなかいい部屋に住んでいるのだから、金はあるはず。そう、事前に調べさせてある。田舎から東京にノコノコ出てきて、ホストにはまって泣きついてきたおバカな美大出身のお姉ちゃんたちに。
見栄を張ったのが災いして、こんな状態になってしまった。金などあるはずもなく、しかもストーカーたちも、家を出て行ってしまったのだから。そう話しても、信じてもらえる話では無い。
そこに、運送屋のお兄ちゃん登場。勝手に合鍵を作ったみたいで部屋に入り込んでくる。
救世主登場と思いきや、あずきに興奮して、助ける代わりにエロいことを要求したりしてグダグダしているうちに、見つかってあえなく撃沈。
金が見つからない。それじゃあ、仕方ないので、別のものをいただきますか。
その時、本当の救世主が現れ・・・
まあ、その救世主はもちろんストーカーたちです。
窓辺に置かれた金魚は、ソーラー製のカメラになっていたのです。
と言っても、かっこよく担当者をやっつけたわけではなく、ビビリながら色々やっているうちに、あの荒々しい女性刑事が入り込んできて、辻さんを犯人と間違えたり、高松さんは運送屋の社長で、入り込んできたお兄ちゃんは社員だったりと、ドタバタの大団円が繰り広げられます。
ラストは、辻さんが、普通の生活に戻ると言って、部屋を本当に去ります。
礼を言ってお別れするあずきですが、辻さんのいたスペースはそのままにしておくようです。
窓辺の金魚はそのままにしておけば、きっと辻さんがずっと見守ってくれることでしょう。
そして、もしかしたら遠くへ、それこそ宇宙に行ってしまうかもしれない辻さんは、きっといつの日か、ここに戻ってくるのかもしれません。
ふとしたことから出会い、その相手の素敵なところを受け入れて、仲間になる。楽しい時間。そして、いずれ来るお別れ。
そんな一つの出会いと別れが楽しく、爽やかに描かれています。
その楽しい生活は、ストーカーたちは、中に入り込んでしまっているから見ることは出来ませんね。それは、窓辺の金魚がずっと見続けていたのでしょう。
この作品自体が、金魚が捕えたあずきとその周囲の人たちのある時間の映像なのかもしれません。金魚を創ったのは辻さんですから、今度は自分が主人公の姿を金魚に見せるのかもしれません。
第二幕は、再び、出会うあずきと辻さん。気の合う仲間たちとの楽しい時間の中で、育まれる二人の・・・って感じになるのでしょうか。
| 固定リンク
「演劇」カテゴリの記事
- 【決定】2016年 観劇作品ベスト10 その3(2016.12.31)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その2(2016.12.30)
- 2016年度 観劇作品ベスト10 その1(2016.12.30)
- メビウス【劇団ショウダウン】161209(2016.12.09)
- イヤホンマン【ピンク地底人】161130(2016.12.01)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント