キンギョの人々 vol.3 「穴の宇宙」【突劇金魚】140617
2014年06月17日 突劇金魚アトリエ (75分)
2回目の観劇。
(前回の感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/70-f77d.html)
本当は、今週の日曜日に観に伺って、効率よく2回で、全5作品を観劇ということにするつもりでしたが、何か数日前から始まった新しい演目が気になって、我慢できなくなって当日券で観に行ってしまいました。
この公演、ちょっと中毒性があるんですよね。
公演名どおり、ちょっとキンギョの人たちに会いに行こうかなという感覚と、あの怪しげな空間で穴の中に拡がる宇宙に入り込んで来ようかなといった感じの。
<前回同じく、以下、ネタバレしますので重々ご注意願います。公演期間が長いので白字にはしていません>
・ヨシ子の罰
上記リンク先、前回の感想参照。
生まれながらにして、母を殺すという罪を背負ってしまったヨシ子。
それでも、人として生きるがゆえに、動物を食べ、環境を破壊し、楽しみを得ようとして、さらに罪を重ねていく。
罪深きヨシ子は、自分を罰する姉に救いを求めるような依存の上で生きているみたい。
今回、観て思ったのは、この話で可哀想なのはヨシ子ではなく、姉なのではないか。
彼女は、妹を責め続け、罪を憎み続け、どこに救いを求めることも出来ずに生きていかなくてはいけない。許せばそれで終わってしまう。だから、彼女は許すことすら許されない。
帰りの電車の中で、急に思い出したのだが、途中で頭が付いていかず、読むのを断念したが、太宰の人間失格にヨシ子が出てくるなあ。ヨシ子の旦那は罪やら罰やらを考え過ぎて、狂人になったのでは。何かヒントがあるような気もする。といって、あの作品を読み返す気はとても起こらないが・・・
・捨ててもいいし
弟が生まれてから、夜になったら外出したらダメ、窓に触ったらダメ、スリッパの底を拭かないとダメ、特に隣の弟の部屋は聞き耳を立てるのも、覗くのも、見るのも、話すのも全部ダメ、・・・と、両親から決まりだらけの生活を強いられる14歳の息子。強いられるというかは、したらダメを刻み込まれてしまっている感じ。
そんな息子の部屋に父の友達を名乗る男が窓から入ってくる。
外に連れ出そうとするが、息子からそんな決まりごとを言われて困っている。
もっと幼い子をイメージしていたので、用意していたミニカーなどには興味を示さないだろうと思っていたが、なかなかの反応を示す。
ステーキナイフでちょっとビビらしてみようと脅してみたら、それにも興味津々。
両方くれたら、ついて来るというので渡して、車に乗り込む。
男はこの子の父の会社の従業員。ひどい扱いを受けているらしく、その復讐だ。正義、世直しを大義名分にこの誘拐を正当化しようとしている。
車の中から、父に電話。身代金はかなり安く設定したのに、返事は好きにしろと。
息子は両親に子供が出来なかったのでもらわれた子で、血が繋がっていないらしい。
でも、弟が奇跡的に生まれてしまったというわけだ。
慰めに入る男に、息子はそのハンドルを掴み・・・
結局、事故を起こして、妄想世界に入り込みます。
事故で息子の脳に刻まれたしわはリセットされてツルツルになったみたい。
男と息子は、何をしても、何を考えてもいいというように、新しい脳にしわを刻もうとします。
あかんことをしないのが正義。
何かをしないという決まりの中に生きることは確かに正しいことのように思えますが、同時に自分の望むことすら否定して、その決まり事の枠にはめ込んでしまうみたいです。
今回は演目に入っていませんでしたが、前回拝見した俳優の謎という作品も似たようなことを伝えているような気がします。
自分は血が繋がっていない子だから、弟は大切な存在だからといった自分ではどうしようもない植えつけられた設定の中で、どう自分が輝くかは、自分が思っていることを思いのままにというところに行き着くようで、そのようにやり直しを図るような形のラストを迎えているようです。
自分を縛り付けていた弟も実際に覗いてみれば、自分を否定するような大したものでもなく、こんな環境においても、自分の道は切り開けるという教えでしょうか。
・穴の宇宙<黄色>
上記リンク先、前回の感想参照。
人間は自分の中に宇宙を持つ。その宇宙は、誰かに育ててもらうものではないから、親にちゃんと育てろと言ってもそれはちょっと違う。だって、宇宙だから勝手に育ち、拡がり続ける。
拡がり続ける宇宙の最後までは見届けられない。寿命があるから。
人類が見る宇宙の概念と同じように、自分という個人が見る自分の中の宇宙が同調されているのでしょうか。くだらんことにイラっとしたり、それこそラッパを思いっきり鳴らして怒りをぶちまけたくなったりするけど、何か自分が壮大な宇宙の一部、周りの人たちも各々がそんな宇宙を持っていて、それが融合して、この宇宙が存在しているような感覚が、不思議と心地よく感じます。
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