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2014年6月 3日 (火)

あの町から遠く離れて【A級MissingLink】140602

2014年06月02日 ウィングフィールド (100分)

当日チラシのキャスト表を見て、前回拝見した試演ではいなかったよなあという登場人物がいて、どんな感じに変わったのかと思いながら観始めたが、相当変わってしまっているみたいだ。
試演の感想:http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/post-5.html

どこがどうなったのかはよく分かりませんが、すごく観やすくなった印象です。相変わらず、おかしな展開に惑わされますが、比較的スッキリと話に溶け込んでいけるような感じでした。
結局、感じるのはどこかにたどりついたみたいなこと。戻って来た、帰って来た。ずっと彷徨っていたから。
だから、これからを見ることが出来るし、考えることが出来るし、行動に移すことも出来る。
では、どうしていきましょうか。
その答えを見出していこうとしているような作品のように感じます。

かなり話は変わっているのだが、また改めてあらすじ書くのもしんどいのと、筋は変わらないのだろうと踏んで観ていたので、頭が記憶モードになっておらず、あまり覚えていなので、省略。
まあ、その代わり、とても気楽に観れたような気がするが。

試演で拝見した時とざっくり比較するとこんな感じだろうか。

前回は、設定が秀人の実家が瀬戸内で、有紀が山口。二人はフェリーで大阪に戻り、片や東京へ、片や山口へみたいなややこしさがあったように思うが、今回は千葉と大阪といった簡潔化しているみたいだった。作品名のあの町はどこかは分からないが、まあ3.11のことを考えるなら、震災の根源地であろう。そう思うと、あまり遠く離れなくなって、近づいたところ、もしくはその源で話は進んでいるような感じである。距離を置く必要が無くなってきているような感覚であろうか。

秀人と有紀はじめ、フェリー乗った親戚の人たちは、突発的な事故にも関わらず、無事に救助されて帰還。この事故が3.11後の国の隠蔽などの気風を皮肉った感じは変わらず。
登場人物は増えていて、親戚のおじさんの他に、おばさんも出て来て、何やら恋愛ロマンスが芽生えたりして、結婚にまで至る。秀人と有紀の到着点は離婚なので、対照的になっているのだろうか。ただ、離婚否定は、前回同様に感じられず、むしろ、どういう結論であろうと、どこかに着地させないと先へは進めないから、それはそれでいいみたいな感じである。おじさんとおばさんの結婚話は、事故の深刻さが抑えられ、ほっこりと微笑ましい雰囲気を創り出す。前回の移動動物園の役割だろうか。下記するが、この作品は、最終的に人々がどこかに落ち着き、そこからまた世界を拡げていくような印象が強いので、移動という彷徨うイメージよりは、結婚や、まあ残念であるが離婚という一つの結論にたどり着いた今回のようなイメージの方がはまる気がする。

前回はおじさんが映画のプロット創りをして、ゴドージラが出てくるが、こちらは、脚本家のおばさんが創るゴドーを待ちながらを演じようとする人たちの話となる。
実家がコンビニで妹に店長を任せる演出家の男が、元同僚で素人の子と一緒にゴドーを待ちながらの上演に向けた稽古をする。二人の会話の中で、ゴドーが何なのか、何を待っているのかみたいな問答がある。演出家の男は3.11の時に、ゴドーが来たと思ったのか、10年間潜めていたある女性への想いを告白し、警察に通報されるというトラウマを抱える。これは脚本家が創る虚構であるが、元ネタとして有紀の経験を組み込んだことになっており、リンクさせている。ここが何を意味しているのかは、ゴドーだけに難解極まるが、来たるゴドーが、待っていたのかどうかもよく分からない人たちの、これからへの行動を起こすきっかけになった。自分たちのことを知るきっかけになったみたいな感じだろうか。ゴドーが天使なのか悪魔なのかは知らないが、やって来たゴドーによって、少なくとも待っていた人の身に何かが起こった。そこで話はお終いではなく、それからがある。演出家の男はコンビニで店員として一からやり直すことになり、妹は新店舗の店長となって活躍するみたいな、先を描く作品となっている。

軍医と負傷兵の話。
前は秀人が見た夢の世界。秀人の祖父が絡んだ話であった。
今回は有紀の夢の世界。冒頭でフェリーに乗る前に有紀は生き残った負傷兵と話をしている。
前はおじさんが創ったゴドージラの話に、生き残って活動屋となる負傷兵が絡むが、今回はゴドージラの話は独立しているみたい。それか、生き残った負傷兵が自ら活動屋として撮った作品みたいな感じとなっている。前は、このあたりがとても混乱したのだが、今回は何かスッキリした印象がある。まあ、それでも少々混乱気味であるが。
負傷兵は、無事に帰還し、老人になるまで生きながらえている。
潜水艦の魚雷により、帰還船と共に沈んでしまった軍医も浦島太郎となり、戦後70年を経て無事に帰還するみたいな話も組み込まれる。そして、よく分からないが、その後、玉手箱を開けてお爺さんにではなく、ゴドージラになるみたいな話だった。
ゴドージラが生き残った活動屋の作品ならば、命の恩人でもあり、一緒に帰還できなかった軍医の帰りたかった想いを汲み取っているのだろうか。帰りたかったという願いと、帰ることが出来なかった怒り、憎しみがゴドージラの破壊的行動を生み出しているかのようにも感じる。

ゴドージラは科学技術の結晶であるアトムと戦う。
秀人もこの作品ではロボット工学の技師であり、ロボットを研究する施設もちょこちょこと話の中に顔を出す。
科学技術による未来の希望が見えたのだろうか。
科学技術は、原発事故直後は、何かそんな問題を引き起こした根源みたいに否定的な感じだったように思う。
ゴドージラみたいな、人間自らが作りながら、人間に被害を及ぼす脅威として育った破壊のイメージ。これに対して、科学技術の平和への利用の象徴みたいなアトム。
でも、その力は依然、破壊の方が強いような描き方をしている。だから、アトムは、ゴドージラの弱点を探し出さないとその動きを止めることは出来ていない。科学技術の長所、短所を冷静に分析できるようになったような印象かな。

全体的に感じるのは、帰って来たといったことだろうか。
フェリーに乗っていた人も、軍医や負傷兵も、演出家の男も、色々なパターンだが、みんな元の場所、帰りたかった、帰るべきだった場所に戻って来ているようなラストを迎えているような気がする。
何か、散り散りになって、どこにも帰れなくなっていたのが、みんなどこかにその帰り場所を見出したような感じ。
ようやく定着できる。そして、そこからまたこれからを拡げていける。
選択肢のある転換点へとたどり着いた。
どうこれから拡げていくのかは、この作品の交錯した幾つかの話の中にその方向性が隠されているように感じる。

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