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2014年6月22日 (日)

AUDITION Aキャスト【劇団ガバメンツ】140621

2014年06月21日 B-SQUARE (90分)

ガバメンツの番外公演。
作品名のオーディションの設定を活かして、オムニバスのような3作品が演じられる。
様々な背景や個性を持つ若い役者さんたち。
そんな人たちを通じて、舞台に立つことへの執念みたいなものを、大きな魅力や誇りと共に、自虐的な観点も絡めて描いたような作品。
個性的な役者さんが揃っているだけに、その創り出される作品も個性的で、各々の面白さを楽しめる。

<以下、ネタバレするので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、日曜日まで。もう一つのBキャストを含め1回ずつ公演があります>

かつては人気俳優だったようだが、今は少々、落ち目の佐津久太郎。
それでも、プライドは捨てられないのか、大きな劇場で自身のプロデュース公演をすることに。
何でも、マクベスとロミオとジュリエットを融合させた大作らしい。
そのオーディションに8人の若い男女が集まる。
特技を披露したりするのだが、気合が空回りしているのか、一人が体が柔らかいと言えば、こぞってみんなも真似をする。
もっと個性をPRしろと、頭を抱える久太郎。
エントリーNo.1の女性は、早々に見限り、会場から追い出す。
もちろん、オーディション費用の5,000円は忘れずに徴収。

残った7人。
No.2。専門学校を卒業したばかりで、初オーディションにテンションが上がっている。これまでの成果を見せる場を与えられたというだけで満足して、合否までに頭は回っていない様子。というか、そんなことより、新発売のお菓子が売り切れてしまう心配で頭がいっぱいみたい。
No.3。数々のオーディションを受けながらも、いつも最終予選でダメになってしまう。自分に何が足りないのか。向いていないのか。もうあきらめて辞めた方がいいのか。これで最後と背水の陣で臨むこのオーディション。誰よりも必死な姿を見せている。
No.4。所属していた劇団を辞めて、新しい道を歩もうとしている。こんな大きなオーディションは初めての経験で、勝手がよく分からず、不信や不安を表に出しながらも、やらなければならぬと真剣な面持ち。
No.5。唯一の男。ということは、マクベスとか男の役は自分になる可能性が高い。そんな根拠の無い自信が、すかした横柄な態度に結びついてしまっている様子。他の参加者にはもちろん、時折、久太郎にまで高飛車で見下した言動をする少々やんちゃな男みたい。
N0.6。No.2の子に連れて来られただけで、終始、真剣味に欠ける。遊びにきているような感じで、久太郎の自分に酔った話の腰は折るは、緊張感高まる空気を平気で壊すはで、トラブルメーカーとなっている。
No.7。ベテランの貫録を見せる。経験が豊富なのか、落ち着き払って、秘めた確実な自信があるみたい。未熟な他の参加者たちとは一線引いた存在で、本人も一緒にされたくはないという大きなプライドも漂う。

久太郎はそんな7人にそれぞれ課題の脚本を渡し、演じさせる。
最初は、No.2、4、5。プリン松さん、宮崎サカナさん、亀井伸一郎さん。ご存知、カメハウスの面々だ。
題目は西遊記。過去に何度も再演され、幾度となく向かう天竺。その終わりの日は来るのか。
有名な金角、銀角、そして牛魔王、羅刹女の話を全て組み込み、数々の登場人物を3人だけで演じさせる。
勢いのある悟空の亀井さんを中心に、沙悟浄や羅刹女と個性的なキャラを演じて芸達者っぷりを魅せる宮崎さん、猪八戒に三蔵法師、その他もろもろで飄々とした可愛らしさを醸すプリン松さん。
息がぴったりのハイテンションでスピード感溢れる作品を創り出す。
ただ、この作品の中では、個々が認め合っていないので、きちんとしたものが出来ていないことになっている。個々の能力は高いが、互いにそれを引き出し合うような関係性を築き上げるまでに達していない未熟な役者さんのようなキャラなので、それがドタバタした三蔵法師一行の話になってしまっているというようなところに3人のオーディションでの姿を同調させているのだろう。
それにしては、同劇団員だけに、チームワークの高さのためか抜群の出来になってしまっており、少し、この作品自体の協調し合えていないことを感じさせるには整合性がとれていないように思う。

続いては、No.3、6の友達コンビ。片や真剣、片やお遊び。でも、互いにこの状況なら二人でするしかないといった既に壊れること間違いなしの設定が面白い。
題目はアニー。これまた、何年も公演が続けられ、毎年、新しい魅力を持つ少女アニーが生み出され続ける作品。
孤児院出身だけど明るく元気に力強く生きる少女アニーのモデルとなった女性が、アニーのオーディションをする中で、姉を名乗る女がやって来るという話。
少しでも良きアニーをと真剣に選ぼうとする女性、中野梨央さん。その姿は、このオーディションで、不遇の環境の中で、より良き自分を認めてもらいたいという必死な想いに通じた執念と同調する。
それに対して、姉の合田ひかりさん。金目当てなのか、アニーへの本気の想いなのか、本当の想いをはぐらかすようにふざけ続け、二人のズレをジワジワとした笑いに変えていく。
合田さんは多分、初見だと思うのだが、こんなにまでお調子にのった軽薄なキャラはなかなか見られず、相当に目を惹いた。

最後は、No.7と久太郎。実は二人は元恋人同士。同じ劇団だったらしい。No.7がバーテンダーと浮気をして破局を迎えている。今は、そんなバーテンダーとも別れたというNo.7の言葉ににやつく久太郎。よりを戻せるとでも思ったのか、かつて二人が演じた作品を、久しぶりに演じることに。
話は嫁と姑を描いたもの。よく言われる嫁姑問題もなく、互いに尊重し合っていい関係だという嫁と姑へのインタビューをする中で、その過去の話から、ケンカをする以上に冷たい二人の絆が明かされていく。
そして、その冷淡な関係は、身籠る嫁の子供の将来の嫁と自分にも引き継がれるであろうという、他人同士が結婚する以上、永遠に続くであろう義理のお母さんと義理の娘の不可解な絆を意識させるブラックなオチで締める。
西岡裕子さんと近藤貴久さん。
見事な掛け合いで安定した面白さ。
嫁姑は、演出と役者さんみたいなものなのだろうか。本当に心を通じ合わせてなくても、二人の関係は成立し、作品も出来る。でも、それはこの二人のように、形だけの家族で、結局は他人という感情で、互いの尊重は見られない。そして、そんな感情は、成功体験を得ていないから、ずっとそういう関係を作り出し続けるみたいな。そんな二人の関係を、こんな嫁姑に同調させているような感を得る。

結局、オーディションは、No.3、5が不合格。個性が無いのと、横柄な態度が原因。
残りの者はアンサンブルで合格となるが、異常なほどのチケットノルマや、このオーディション自身の怪しさ、つまりは久太郎の魅力の無さに嫌気がさして、みんな出て行ってしまう。
最後に残ったNo.3。
今回もダメだった。何回、オーディションを受けても全て不合格。それでも、舞台に立つことを諦めきれない女性。そんな女性に、たとえ落ちぶれても舞台に立つことに執着し続ける久太郎が、それでも、それでも、何回もやるしかないということを語る。
ラストは、女性がしぶとくまだまだ、夢を諦めず、奮闘する姿で締められる。

熱意や夢とかだけで、食っていけるほど甘くないのはどの世界でもそうだろうが、土俵に立つのにも一苦労するこの舞台の世界。
その世界で頑張ろうとする若い方々の姿を通じて、想いを持ち続けることの大切さを願うような、そして、それぐらいの執着を持たなければ、舞台に立つことは出来ないという厳しくも優しいメッセージが込められている感じ。
恐らくは、技術や腕を磨いて、自分を高めていれば、舞台が成功するわけでは無く、周囲の人との連携や相手の魅力をより引き出してあげるくらいの力も必要。
オーディションはそんな力も見抜くためにいい場なのだろうか。
よくよく考えれば、普通の仕事だってそうかもしれない。資格や勉強で自分を高めても、それを発揮する場には必ず周囲の人たちがいる。あくまで、自分の努力はそのための必要条件に過ぎず、本当に自分の力を認めてもらうためには、もっと多くの視点で自分や相手、物事を見る必要があるのかもしれない。

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