星屑【Danie Lonely】140614

2014年06月14日　イロリムラプチホール　（90分）

舞台に溶け込んでしまうような4人の男の会話劇。
気付けば、4人と一緒に空を見上げている。狭い劇場だ。もちろん、そこはすぐ天井。
でも、観に行けば分かる。
瞬く星空の下で、今を生きている自分たちが感じられる。
色々な喜びや悲しみを抱えて、出会いと別れを繰り返して生きる私たち。
見える星空には、燃え尽きて消えゆく星屑たちがあることも知っている。
それでも、いやだからこそ、今の日々がいつまでも続きますように。
消えゆく星たちに祈りを込めて、これからの未来を輝かせる星たちに希望を託す。
きっと星空は、夢いっぱいに輝き続ける。
素敵な空間と時間をもらえる作品。
にしても、ここの4人の役者さんは、ちょっと素敵過ぎるなあ・・・

＜以下、若干のネタバレがあるので公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで＞

冷戦が続く二国間の国境警備隊。
けっこう長くここで働く二人。国に彼女を残している少しいびきがうるさい男と、ギャンブルで借金地獄に陥りリセットするためにここに派遣されて来た男。
最近、新人が入って来る。真面目そうな男だが、美人局にあったこともあるようで、まあそこそこの遊び人みたいだ。
それと、敵国に派遣されているのによく遊びに来る男。妙な説得力のあるテンポと声で話すので、語る言葉に重みがありそうだが、実は大したことはいつも言っていない。
国境と言っても、もう長く両国が動く気配は無い。
時折、警報がなったりするが、大概は誤報であり、みんな自由気ままに、オセロやトランプをして暇を潰しながら日々を過ごしている。
そんな、ある日、巡回をしばらく禁止する指令が降りる。することは巡視だけで、外に出ることも出来ない。と言って、何か動きがある気配も感じられない。
4人はそんな中で、自分たちのこと、戦争について語り合う・・・

語る内容は、暇なんだろうなというとりとめもないこと。
カマキリのメスはオスを食べる。この二人は夫婦なのか。他人ならば、そんなことが許されるのか。許されるような事例を考えてみる。要は正当性があれば、普通に考えれば残虐なこういう行為が許されるのだろうか。正当性とは正義が悪を倒すような場合か。
本当に戦争が起こったら、自分たちはどうなるのか。戦場へ向かうのか。いや、自分たちは警備員。警備をすることで人を守っているから、軍人とは違う。でも、軍人も戦うことで、人を守っているのではないのか。
空には瞬く星空が拡がる。巡視用の双眼鏡で覗くと美しい景色が映り込む。宇宙の終わり。やはり、宇宙戦争だろうか。ミサイルの撃ち合いか。こちらは何で対抗するのか。シャボン玉。だって、この真っ暗な夜空にはきっと似合うと思うから。

シャボン玉をしたいな。
よく遊びに来る男の胸にかかっているネックレス。プルタブの大きなものみたいで、シャボン玉にちょうど良さそうだ。でも、大事なものらしい。もう10年も前の仲間の思い出。
もう潮時なのかもしれない。こんなことを続けるのも。
その思い出の品でシャボン玉をみんなで飛ばす。夜の闇に浮かんで消えるシャボン玉はことのほか綺麗だ。
きっと始めからこうして使うものだったのかもしれない。手榴弾のフックとかではなく。

星空に一際輝く場所を見付ける。流星群だろうか。それとも、ついに宇宙からのミサイル攻撃が始まったか。
男たちは、浮かんでは消えるシャボン玉を空に向かって飛ばし続ける。
その時、警報音が鳴り響く・・・

子孫へと生を繋げるために食べられてしまうカマキリのオス。子供を産んで死んでしまうメス。
最大限の輝きを最後に燃え尽きて、屑となる星たち。
生み出されて一瞬の輝きを見せて消えるシャボン玉。
怖い人の登場で一瞬で消えてしまう美人局の恋愛感情。
世界を一瞬で破滅させる宇宙からのミサイル。
たった一つの輝く爆発で失われる人の命。
無理矢理だが、不条理に消えてしまうものが会話の題材になっているように感じる。
そんな消えていくものへの祈りを込めて、私たちの目は未来への希望を夢見る。
新たに生み出される命、美しい流星群となって夜空を輝かせる星屑、宇宙からのミサイルに対抗できるかのようなはかなくも力強いシャボン玉の輝き、新たに生まれる愛情、失われた命から生み出される平和への願い。
消えゆくものたちは、全て、これからの夢を生み出す。
私たちはそれを受け取って、未来へと繋げていかなくてはいけないのだろう。