引っ越し【401号室】140606
2014年06月06日 カフェ+ギャラリー can tutku (85分)
作品名とチラシの雰囲気、ご出演される役者さんのイメージから、引越しにまつわる出会いと別れのハートフルコメディーと勝手に決めつけて観に伺った私が悪いと言われれば返す言葉は無い。
今から思えば、開演前に舞台セットを拝見した時から不安はあった。
始まって、10分ぐらいで、ひどいじゃないか、こんな想像力や感性豊かな人じゃないと厳しい難解な作品だなんてと思いながら、半泣きの観劇。
ここまで掴めない作品も久しぶりだなあ。
難しいながらも、何か分かった気になることも最近では多くなってきたから、感性が強化されたのかと思ってたけど、勘違いだったんだなあ。
調子にはのってないと思うけど、思いっきりぶん殴られて、鼻へし折られた感じですね。
こういう作品に出会うと、是非、多くの方に観ていただきたいと思う。
それは、どういう視点で観れば紐解けるのかをSNSなどの感想から知りたいのと、同じように苦しみを味わった人と同調し合いたいから。
今週は、先週ほどの公演激戦では無いはず。強く、観劇をお薦めしておく。
上記したように、本当に私には分からなかった。
真っ白い壁の部屋。壁には穴が開いていて、奥深くに通じているみたい。
床は最初は素足でようやくデコボコを感じるくらい何も無いが、紙屑で覆われることになる。
あるものと言えば、ゴミ箱、大中小の木枠に、中に入って篭れるくらいの石のかまくらみたいなもの。これにも穴が空いていて、篭っても部屋の様子は見渡すことが出来る。
そこに男女5人。
目的も無く何処かを目指す。引き返すのも嫌なので、違う駅を見つけようと歩き出す。
どうも、一人の男の脳内世界みたいだ。
何が原因なのか知らないが、同じ過ちを繰り返すはで、上手くいかない自分に嫌気がさしたのか、自分は誰で、どこにいるのか分からなくなってしまった様子。
そこで出会った誰とも分からぬ4人が共にどこかに導いてくれるような感じ。
床に散らばる紙屑は記憶の欠片みたいで、日常生活の日記のようなものや、その時の感情一つ一つが刻まれているみたい。
脳だから、そんな欠片は整理整頓されて引き出しに丁寧に分類されていそうだが、実際はこんな感じで散乱しているようなイメージなのだろう。点と点で線、線と線で面、面と面で空間みたいな、物理学的な理論では、人の脳は構成されていないし、単純に記憶が整然と組み上がって人生が形作られてはいないようなことを示唆しているのか。
紙屑はゴミ箱に捨てられる。でも、また床にぶちまけてしまったりする。
記憶を捨てて忘れても、また何かのきっかけでひょっこり顔を出してくるみたいな感じか。
では、本当に捨てた記憶はどこに行くのか。それが壁の穴に通じる奥深いところみたいに思う。
4人はそんな奥深くに追いやられた記憶の欠片なのではないだろうか。
自分でももう分からない記憶たちと出会う。それが本当に人生を振り返ること。
すぐに取り出せるゴミ箱に捨てた記憶をまた掘り返すことではない。
男は、本当はこの記憶の欠片が散乱する脳の部屋から引っ越そうとしていた。でも、結局、また戻って来てしまう。
そして、そんな奥深く潜む記憶と向き合ってみようとしたのかもしれない。
部屋のかまくらみたいなところにはよく篭っていた。そこだけは、部屋に散乱する日常の出来事や抱いた感情が刻まれた紙屑は無いみたい。
何かムシャクシャした時に、そんなところに逃避するスペースは誰でも持っているのだろう。でも、そこからは、部屋の様子も分かるからいずれは出ないといけない。
引越しは出来ないし、逃げ場も一時しのぎに過ぎない。
だから、出来ることは今の部屋を綺麗にすること。自分が何を捨てて、何を部屋に散らかしてきたのかを理解しないと片付け方も分からない。
そんなことと向き合って、綺麗になった部屋で、文字通り、心機一転、前へ歩み出す男の姿が映像と舞台上で描かれて締められているみたいだった。
よく分からないが、立ち止まって閉鎖空間に追いやられた男の、外への脱却までの道のりを脳内世界として描いているのだと思う。
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コメント
いや、あれは酷かった。そんなに気にかけることもないと思います。
投稿: | 2014年6月 6日 (金) 23時27分
>???さん
コメントありがとうございます。
あなたも、厳しい観劇になりましたか(゚ー゚;
まあ、演劇らしい作品なのかとは思いますが、なかなか理解して楽しむということにはたどり着けませんでした。
色々と観ていたら、こんなこともけっこうありますよね。
お互い、これからも観劇ライフを楽しみましょう(゚▽゚*)
投稿: SAISEI | 2014年6月 7日 (土) 08時37分