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2014年6月 1日 (日)

二時間に及ぶ交渉の末【匿名劇壇】140601

2014年06月01日 シアトリカル應典院 (80分)

嘘が愛や夢や希望へと繋がった。
嘘だと思って観させられるからなのか、面白いけど、何か騙されたような気持ち悪さが残る。
と言って、観終えた今、心地いい気分もあり、本当にどう感じているのか、よく分からない状態だ。

ただ、普段、観劇して、感動して涙する時に観たものと、本当は何も変わらないようにも思う。
あれだって、嘘で創られているのだから。
でも、この作品は観終えても、涙は出ないし、めでたし、めでたし、良かったなあと強く感動もしない。
残るのは、凄いものだという感心と、面白いものだという演劇作品への興味。
これがメタフィクションの威力なのかと思う。
良いところも、悪いところも含めて。
演劇を斜に構えて客観的に見ながらも、真摯に真正面から向き合っているような感覚だろうか。

怪人を必要以上に惨殺する仲間に、少し控え目にするべき、まずは話し合いからと説得する戦隊のリーダー。
地球を破滅させることを承認するよう地球人に迫る宇宙人。
別れを切り出すけど、計画していた旅行には一緒に行きたい男と、訳が分からないと思いながらも別れたくはない女。
劇団員との恋愛から劇団が解散し、借金を抱えているために飛び降り自殺をビルの屋上から試みる劇団主宰とたまたま、休憩中にそんな男と出くわし、止めざるを得ない状況の女。
劇団を辞めることをほのめかす女優と、主宰の威厳を保ちながら、辞めないように説得したい男。
人質をとって立てこもる劇団女優と、人質解放、投降を呼びかける交渉能力に著しく欠けた交渉人。
多額の空気清浄機を買わせようとする女とそれを値切る男。

基本、この7つの交渉現場が切り替わりながら進み、いつの間にか繋がるという、こちらは定番のパターン。
ただ、この作品はそんな巧妙な話の仕掛けだけで魅せるようなことはしておらず、その交渉の中に含まれる相手との妥協点を見出すためのやり取り自体が、一つの演劇みたいな心情の探り合いみたいに感じさせられる。
そして、そんなミニ演劇たちの嘘が、この演劇作品自体の嘘の要素になっているみたいな感じか。
嘘を集めて、交錯させて出来上がった大きな嘘は、実は本当なんじゃないのかみたいな錯覚に陥り、何を観ているのか混乱させながらも、そんな演劇の魅力を存分に味あわせてくれるような作品ではないだろうか。

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