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2014年6月29日 (日)

ゆきむら【劇団そとばこまち】140628

2014年06月28日 ABCホール (130分)

そとばこまちのこの時代劇シリーズはなぜか、なかなか縁が無く、ようやく観ることが出来ました。
いつもは、自劇団のアトリエだったので、こんな迫力ある舞台も創られるのかとびっくり。
分かりやすい話に、キャラを立たせた数々の登場人物。
殺陣にダンスに、ちょっとした笑いと、楽しいエンタメ要素をがっつりと入れ込んだ、盛り上がりの舞台でした。
やっぱり、この時代の強い信念を持つ人たちの姿は、かっこいいですね。
心が痺れて、熱い気持ちになります。
華やかな舞台を存分に楽しみました。

真田幸村に焦点を当てて、関ケ原の戦いから大阪の陣で、豊臣が滅びるまでを描いています。
特に大きな脚色は無く、実際の史実がどうなのかはよく知りませんが、私が知る正統派の真田幸村でした。
日本史の勉強にでも使えば、グイグイ惹きつけられて、勉強って楽しいとなるように思います。

強いて言えば、真田家家臣の猿飛佐助と徳川家家臣の服部半蔵という忍びの世界での対立にも焦点を当てて、ラストは佐助の変身の術がトリッキーなラストに使われることぐらいでしょうか。
佐助は南園みちなさんがされています。もちろん役としては男なのですが、女性であることをわざと完全に消していないキャラ作りになっているような感じです。そのため、幸村への忠義と幸村からの信頼の強い絆で結ばれた主従関係が、少し恋愛関係にも見えるような不思議な雰囲気に感じられました。ちなみにちょっとしたシーンですが、幼少の佐助は大朋ゆりえさんがされており、可愛らしい子供のような姿がこのキャラに愛着を沸かせます。
半蔵は、ドヰタイジさん(STAR☆JACKS)。忍びの動きや剣さばきが見事なぐらいにはまっており、いつも以上のかっこよさです。そして、佐助と同じく忍びの霧隠才蔵は川内信弥さん(劇団レトルト内閣)は、これまたびっくりの男前で、謎多き忍術の極意をさずかった者というオーラを漂わせます。

あとは、幸村が主人公なので、豊臣、特に秀頼はとってもいい人になっていて、家康は逆に狂気的な権力主義者となっているようです。
秀頼は田中尚樹さん。戦いを嫌い、平和を愛する人で、生まれた時代の悪さを感じさせる不運っぷりと、千姫にゾッコンのちょっと人の上にはやはり立てんなという頼りなさと、最後に千姫、母や家来たちのことを第一に想う優しさを醸す時代に揺れ動かざるを得なかった悲しき運命の人を描いています。
千姫を演じる佐藤美月さんは、数多くのダンサーを従えて、アイドルのような登場で舞台を盛り上げますが、家康に翻弄されながらも、秀頼を真摯に愛するこの時代の悲しき女性の姿を映し出します。
淀君は中西邦子さん(劇団925)。きついイメージのあるキャラですが、そちらは少々、抑え気味で、それよりも子を想う母の印象の方が強い感じ。
家康が、まあ権力に狂った姿で。川下大洋さん(piper)が演じます。どこまで権力に執着すんねんといった嫌悪感たっぷりの嫌味なキャラです。普通は秀吉がこんな感じのイメージなのですが、この作品では、秀吉は出てこず、まあ豊臣家は悲運だったという印象を強めているのかもしれません。
嫌味と言えば、大野修理を演じるくぼたゆういちさんでしょうか。含みを持たせた汚き姿は、豊臣家の悲運は全てこいつに原因があるんじゃないかと責め立てたくなるような腹立たしさを醸します。

肝心の幸村は、福山俊朗さん。前半はおとぼけキャラ色も強いですが、話が進むうちにどんどん、あの忠義を尽くす男、幸村へと変わっていきます。真紅の衣装を身に纏い、六文銭の旗印を掲げる姿は、あの時代のかたくなまでに自分の道を突き進み、世を変えようとする強き男を浮き上がらせます。
父の昌幸は、上田泰三さん(MousePiece-ree)。知っていることと言えば、相手を翻弄する知将として、数々の不利な戦で勝利をおさめた人。要はくわせものとして恐れられていたということぐらい。この飄々とした余裕と、忠義やらお家を守るという厳格さが同居したような感じはとてもはまっているように感じました。
兄の信之、竹村晋太朗さん(劇団壱劇屋)。徳川につくように昌幸から言われた人ぐらいしか知りませんが、こんなに豪快な人だったのでしょうか。この作品からは、父、昌幸の余裕で豪快なことをするところだけを継いだ感じで、その分、浅はかさが露出してしまいそうな感じでしょうか。

と、全員書くにはあまりにもキャストが多過ぎるのでこれぐらいで。
時代劇というかは、あの時代の人たちに焦点を当てた人間ドラマ。
自らの信念をしっかりと抱き、時代にぶつかっていった人たちの姿を、楽しいエンタメとして描く、素晴らしい作品でした。

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