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2014年6月 8日 (日)

執行の七人【劇団太陽族】140607

2014年06月07日 シアトリカル應典院 (90分)

学校のPTA役員会の生中継みたいな作品。
とにかく、たくさんの抱えている問題が出てくる。
学校のことだから、自分には関係無いとは言えないように話は進む。あらゆることが今の社会にも通じていることを見せつけられる。
当然、答えは出ない。より多くのことに気付かされて、持ち帰って勉強して考えなさいといった、授業みたいな作品だった。

<以下、ネタバレしますので公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

水曜日の10:30。
舞台となる小学校では3時間目が始まっているぐらい。
ここから、3時間目が終わって、4時間目を経て、給食の時間となりちょっとしたぐらい、だいたい12:30ぐらいまで、PTA役員会が開催される。
学校の方針で、PTA役員の任期は1年で、毎年、一掃されて新役員が選出される。
今年の役員は7人。
既に簡単な自己紹介をする軽い顔合わせは1人を除いてしているみたいだが、今回が初めての本格的な会議となる。
会長は、ジュニアユースバスケットチームの指導経験もある活発そうな若い女性。副会長は、唯一の中年男性。
他のメンバーは、大阪っぽいコテコテのおばちゃん、キャリアウーマンっぽい人、お嬢様風の人など、個性的ではあるが、まあよくいる子供を持つお母さんって感じだ。
最初なので年間行事の確認から始まる。
ところが、事前の顔合わせに仕事の都合で参加できなかったキャリアウーマンっぽい人が、行事に無駄があるから仕分けをみたいな発言をしたことをきっかけに、PTA活動にまつわる学校の問題から、自分たちが抱える問題、さらには社会問題にまで話が飛躍した議論が繰り広げられる。

議論は実際の上演時間は90分なので少しズレてはいるが、ほとんどリアルタイム。
まだ、様子見状態のぎごちなさが残る中で、いきなり白熱してしまった場が3時間目と4時間目の間の休憩で、一度リセットしたり、そんな自由な時間が新たな問題を引き起こして、4時間目という給食時間という休息のゴールを目指して頑張らんとばかりに、さらに白熱した修羅場を迎えたり。そして、紛糾していた人たちが、給食時間となり冷静さを取り戻す。
途中、外は雷雨が降り出して、最後には小雨になったりと、めまぐるしい変化の中で7人の姿が描かれている。

内容はあまりにも豊富。
NPO法人化した劇団が防犯ワークショップを開くことで利益を得ている問題から始まり、いざという時に暴漢を倒せるとは思えない老いた警備員の雇用や使い物にならない防犯用具を設置して体裁を保ち、責任を逃れようとする学校の実態。危機を煽り、利益へ結び付けるビジネス構造。
他校との対外的な体裁による、無意味な行事。
国家や国旗に対する偏った考え。
ヘイトスピーチをはじめとする在日問題。反日運動に対する考え。中国への転勤への抵抗感。同和に関わる人権問題。
電力会社に勤務することへの社会的な視線、現実的な賃金問題。
認知症の親をを抱える家族の介護問題。
不妊治療への偏見。
子供の防犯、交通事故などよりも、実は虐待が一番の死へと繋がる問題であるという事実。マスコミによる危機意識の誘導的な植え付け。
女性の社会進出問題。男女差別。性差により異なる母性への考え。
障害と学校教育の在り方。
・・・
覚えているだけ書き出したが、多分、まだある。
これが90分の間に次から次へと議題となって挙がってくる。

みんな色々な問題を抱えながら頑張っている。
これは本当だろう。
でも、こうしてどうにかしようなんて話し合いを始めると、互いに傷つく方向へと話が進んでしまう。
話し合えば話し合うほど、どんどんと問題が浮きあがってくる。
溜息しか出なくなるような、汚いものが感じられてしまう。
ほとほと嫌になる。でも、これから、そしてゆっくりとといった言葉でまだ先を見ていこうという人たちの姿で会議は絞められている。

PTA。
両親と先生の協議団体という訳でいいのかな。
両親を国民、先生を国みたいに置き換えれば、こんなPTA役員会が社会問題にまで発展することは不思議なことではないのかもしれない。
国民は大人と限定しよう。協議の場に立ち、意見を出す権限があるのは大人だから。
そうすると、どちらの構図でも、その協議の上に子供たちが隠れていることに気付くように思う。
何のための協議なのか。誰が良くあれと思って話し合っているのか。行動しているのか、言葉を発しているのか。
それを忘れてしまっているかのように感じる。
最後に老警備員が、古き時代にPTAがいたからこそ、飢えずに自分が育ったようなことを語る。
外には雨が降ってきたので子供のことが心配になって傘を持って来たおじいちゃんがいる。
これが本来のPTAであり、国の姿であるように感じる。

けしごむという歌。
冒頭で黒板に歌詞が書いてあるのだが、それを誰かが躊躇なく消そうとした時、一瞬、えっとなった。誰かが書いたものなのにと。
消すことは簡単だ。でも、ラストに色々と揉めて、苦境に立たされた男がまた書く。
書くことが出来る。
この感覚が、何となく、この歌から感じることや、この作品のこれからだ、ゆっくりでいいから先を見てといったところに繋がっているように思う。

観終えて、どうもしっくりこないことがある。
PTA役員は必ずというわけではないだろうが、なりたくてなっていない。
国民も、ここで生まれたからここで暮らす。もちろん、強制されてはいないし、仕方なくとまで否定的にも思ってはいないが。

先生や政治家はなりたくてなったんだろう。なりたいということは、何かをしたかったはずだ。そんなこと、ちっとも、感じられない。
あの人たちは、いったい何をしてるんだろう。こんな会議の場に顔も見せずに。同じ土俵で話そうともしないのか。報告だけ聞いて、一緒に話したことにするのか。それも、いつの間にか歪められたような報告を。
こちらは、色んな目に会いながらも、少しでも良くなればなあなんて言いながら、ケンカのような議論を組み交わしてるのに。相手も傷つくけど、こちらだって傷つくぐらいに、身を削ってるのに。
職員室とかで身内だけで話しているのか。国会の中で、見えないところで話しているのか。
それとも授業。議員としての仕事。そんなことがあるから、出て来れないのか。
そんなものは、こちらだって同じ、いやそれ以上にある。
何も出来ない、しようとしないならば、そんな立場に身を置いて欲しく無いように思うのだが。

チラシを拝見すると、女性の対話による合意形成を学ぶようなところも含まれているらしい。あまり、そういう視点では観ていなかったのだが、確かにこの会議中に登場する男では話はまとまらないかなあ。結論ありきで話すとか、権力的なものを振りかざして、相手の逃げ場を無くすことが目的にすり替わったりと、何とも幼稚だ。でも、同時に私自身が男なのですごく同調できる。こうなる。絶対にこうなる。
反面、女性は本当にずっと話す。見ていて、正直うんざりするぐらい。これではいつまで経っても結論になどたどり着かないではないかと思う。でも、どこかにきちんと導かれる。
理論武装して、理屈を積み重ねて、整然と話を進めようとしている方が、よっぽど彷徨っているような印象だ。
破壊的議論と建設的議論みたいな感じかなあ。
男は建設しているようで、本当は壊すのが楽しいという本能的欲求があるのかも。女性はその点、キーっとかなって全てをご破算にするような破壊的なところがあるような気がするが、それでも壊れてはいなくて、ずっと何かを建設し続けているのだろうか。
でも、女性は、恋愛とかの時は、一瞬でこれまでの思い出とか消し去って、違う人のところに行ってしまったりするしなあ。よく分からん・・・

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