ファンタジア・オブ・ザ・マーメイド【ムーンビームマシン】140607
2014年06月07日 HEP HALL (120分)
もうここまでくれば、ムーンビームマシンにハズレは無いと断言して構わないだろう。
人魚姫をモチーフにした、海賊と魔女と人魚たちが繰り広げる冒険ファンタジー。
いつもながらの、歌・ダンスは当たり前、これに殺陣やジャグリングなどの要素もふんだんに組み込み、最高のエンタメにまでもっていく。
この劇団にしか出来ない、ファンタジーのエンタメ作品を確立している。
もう感想と言っても、凄いとか面白いとか、感動したとかぐらいしか出てこない。
安定して、向上し続ける劇団の最高傑作を観て楽しむだけだ。
<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>
奥深い海の底にある人魚の国、グレートブルー。
そこに住む人魚、ボニーは、ある日、左手がかぎ爪の男に恋をします。
海の魔女にお願いして、人魚たちの特別な歌声である人魚のオルゴールと引き換えに人の姿に変えてもらいます。
そして、そのかぎ爪の男を訪ねるためにメイスフィールドという国に向かいます。
メイスフィールドでは、海の魔女が、意地汚い司教と手を組んで、この国を乗っ取ろうとたくらんでいました。そのために王をたぶらかし、王妃の座まで射止めています。
国を手に入れるためには絶対的な権力が必要だ。海の魔女は、人魚たちが持つベリルの瞳というものを手に入れ、人魚のオルゴールと合わせて、海の女神であるテーテュースを支配しようと考えます。
そんな悪い海の魔女からこの国を救うために、幼い王女は人魚のオルゴールを人魚に返すために逃げ出します。
人魚たちはボニーが人魚のオルゴールを海の魔女に渡してしまったため、ボニーと同じように人の姿になり、その歌声を失いました。
そして、そんな人魚たちの国を海の魔女は襲撃してきたのです。
人魚たちは、海の魔女を諌めるため、そしてボニーを連れ戻すために船でメイスフィールドへと繰り出します。
しかし、海の魔女が統率するこの国の軍力は強く、元々ちょっと暴走気味だった人魚とそのお目付け役の仲間二人が人質となってしまいます。そして、ボニーを探し出すことも出来ませんでした。
一方、メイスフィールドの酒場では、威勢のいい女主人の下、伝説の海賊3人衆が、漂流していたところを助けた男と一緒に酒を酌み交わしていました。
男曰く、アヘンの密輸をしていた時、あのグレートブルーの秘宝を見たのだとか。グレートブルーの秘宝は、海の女神テーテュースの別名です。
お宝好きな海賊たちは、早速、船へと向かいます。
そんな中、酒場に幼い王女が海の魔女の使い魔に追われて、助けを求めてやって来ます。
酒場にいた王女と同じ年頃の旅芸人は、心配する姉をよそに、王女を守るために戦います。
海の魔女の力は絶大でしたが、女主人が身を呈して、二人を逃がします。
旅芸人と王女は、海賊船にたどり着き、事情を話します。
女主人は人質として海の魔女に囚われたようです。義理と人情の心も持ち合わせている海賊たちは、この戦いに協力することを二人に約束します。
海の魔女は、抵抗する人魚を一掃するため、人魚のオルゴールを取り返すため、そして、海の女神テーテュースを支配するために、船で海へと出発します。
その船の中には、かぎ爪の男もいます。かぎ爪の男は、元々は海賊たちの仲間でしたが、アヘンで狂ってしまい、掟により追放されました。その時に左手を失い、海賊たちに逆恨みをしているのです。
だから、海賊たちと戦うことが出来るならと喜んで海の魔女に協力を誓います。
そして、ボニーはそんなひどい男なのに、愛してしまった気持ちを抑えられません。
かぎ爪の男に喜んでもらうために、人魚たちを裏切り、海賊船にスパイとして乗り込む決意をします。
こうして、海賊と人魚と魔女たちの戦いが海上で始まります。
そして、海の女神テーテュースは・・・
ストーリーは本当は明快なのですが、こうして書くとややこしくなりますね。
海賊と魔女の戦いを人魚が繋げているみたいな感じでしょうか。
モチーフとなるアンデルセン童話の人魚姫は、最後、人魚は泡になって消えてしまう悲しいラストなのでしたかね。
この作品も、やはり同じような結末をたどります。たくさんの登場人物がいますが、死ぬのはボニーだけです。このあたりは、ちょっと面白い仕掛けで、死を意識させながらも死んでなかったみたいな人物がいたりしますが。
でも、ボニーは海そのものとなって、人魚たちの下へと帰ってきました。
ボニーはきっとちょっと冒険したかっただけ。でも、その冒険に出発したがために、帰りたくても帰ることが出来なくなってしまった。そして、ようやく帰ることが出来た時は悲しい姿であった。
この悲しみを、他の登場人物が自分たちの帰るべき場所を見出すという形で昇華させているようです。
海賊たちは自由奔放に海へと冒険しますが、必ずこのメイスフィールドにはいつか帰ってきて、きつい酒場の女主人の店へと向かうのでしょう。
漂流して助けられた男はアヘンの密輸など辞めて、この国で商いをする決意をします。自分の居場所を作ることが出来ました。
旅芸人とその姉は、ずっと故郷も無く、放浪の旅を続けていましたが、王女がこれから発展させていくこの国が故郷になるでしょう。そして、もしかしたら、放浪の旅はいつの日か、王女と旅芸人が結ばれることで終わりを迎えるかも。
人魚たちは、奥深い海の底へと戻ります。閉ざされた世界ですが、その美しい歌声と、もしかしたらテンション高いやかましい声とそれを諌める声はこちらの世界にも届くはずです。
悪い海の魔女や司教はどうなったのかな。まあ、魔女はくらげの化け物らしいので、本来の海でゆらゆらと漂い続けるのかもしれません。司教は、一人では何も出来なさそうな人ですから、恥ずかしげもなくこの国にまだひっそりと住み続けるのかもしれません。まあ、こちらは神が裁いてくれるでしょう。
そんな優しい作品でしたと書きたいところですが、ここは必ず不安を煽るブラックオチを付けるのも特徴的だと思います。
今回も、多分、ここでは終わらず、一シーンあるだろうなとい思いながら観ていましたが、やはり。そう、上記していないあの人の。
何度でも帰ってくる。そこがその人の帰り場所では無いのに・・・
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