コロニー【伊藤えん魔プロデュース】140531

2014年05月31日　近鉄アート館　（130分）

愛やら誇りやら、生けとし者の美学を追及するような作品でしょうか。
大きな視点では組織のため、国のため。小さな視点では個人のため。
各々が持つ大義の中で、何かを愛し、生きる人たちの姿が描かれているようでした。

コミカルに話は展開しますが、切なく悲しい話でもあります。
でも、それが愛すること、生きることの厳しさであり、素晴らしさであり。
私たちはそんな世界の中にいることを感じさせてくれるようでした。

とにかく役者さん方、特に女優さんが美しくてかっこいい。
生きるため、愛するために戦う姿に痺れながらの観劇でした。

＜以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで＞

絶対的な権限を持つダイヤの女王に統率される強大な国。
国民は皆、女王の子供たちである。
勇敢な女性兵士長はじめ、国のために戦う多くの女性兵士たちにより、隣国を襲い、国土を拡大する。捕虜たちは生死関係なく持ち帰り、国の子供たちの食糧となる。戦士たちは、そんな子供たちが食事をした後に出す汁を飲んで、心身ともに奮い立たせる。
次期女王候補である王女様は4人。美女揃いだが、一人だけちょっと変わった、パールという名の子がいる。
王女様は、この国にいる子孫繁栄のためだけに存在する2人の男性といずれ愛を交わさなくてはいけない。どちらもイケメンではあるが、少々、お調子者であり、選択はなかなか難しいところだ。それ以上に、まだみんな、愛ということを分かっていない。特に、パールはその幼さに女王様も一番心配しているようだ。

今日もある国を襲い、勝利した。
捕虜は強そうないでたちなのに、気が弱く戦う気が全く無い男と、これまで、けっこう色々なものを食い物にしてきた妙齢の女性。
その場で抹殺するところだが、アビという、この国の民では無いのに、兵士としてやって来た謎の男の計らいで命だけは助けられる。このアビ、よそ者だし、女性兵士に紛れて男なのに、その真摯な働きが認められているみたいだ。
女王にタイマンで戦いを挑み、残念ながら敗北したという勇ましいがどこか胡散臭い男と、自らを変態と称する、気持ち悪い男が先客の牢屋に一緒に収監される。

一方、この国の近隣にある弱小国。
小さいながらようやく作り上げた国だったが、この近くに悪魔の石が存在するという情報が入る。
悪魔の石は、女王ならば必ず耳にすることらしく、この石に触れた者は、確実に死に至り、子孫繁栄を断ち切られるという恐ろしい石。
近くに住むことも危険であり、女王はじめ、王女や許嫁、優秀な文官たちはこの国を捨てて移住することにする。

ところが、そんな中、ダイヤの女王の国がこの国を襲う。
女王は覚悟を決め、王女と許嫁を逃がして、自らの命を絶つ。
逃げる途中、ダイヤの女王の国の男性と出会ってしまい、その道を阻まれる。
王女は、許嫁の手を離れ、この男と新しい国を作ると言い出す。
向かった先は、あの悪魔の石が眠る場所。
そんなことを知らない男は、その石に触れてしまう。
そして、再び、ダイヤの女王の国に戻り、4人の王女たちと愛を交わす。
・・・

女王を、国を守る兵士たち。
子孫を残すためだけに男と愛を交わし、新しい国を創る王女。
その愛に疑問を抱き、本当に男を愛することを考えるパール。
失われた国を慈しみ、汚い手段を使ってでも復讐を果たし、新たな道へと向かう弱小国の王女。
よそ者のアビが抱くパールへの純粋な愛。
生き延びるために、あらゆる手段を使って脱出を図る捕虜たち。

国家のためとか、単に個人のためとかはあるが、誰しも各々の愛を誇りに生を全うしようとしている美しい姿が描かれる。
種族の違いや、本物や偽物。
そんなもの関係なく、皆、失ってはいけない、捨ててはいけない大切なものを胸に抱いて、戦い続ける。そして、同時に愛し続ける。
自然界は、こんな厳しくも美しい世界観の中にいるのだろう。
ヒトだって、その一員なんだから、美しくあれるはず。
今、自分は愛や誇りを持って、生きているだろうか。
そんな想いを抱かせられる話でした。