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2014年6月 2日 (月)

のらん【TEAM54プロデュース】140602

2014年06月02日 ABCホール (115分)

男だらけだと、異常な圧迫感がありますねえ。
総勢30名のダンスシーンなど、ABCホールのかなり後ろの方で拝見したにも関わらず、相当な迫力を感じました。
大塩平八郎とその仲間たちの史実をベースに、遊び心豊富に、でも真剣に前を見据える素敵な男たちが描かれた話でした。
全力投球でやってやる。だって、俺たちにはやり遂げたいことがあるから。
観終えた後、そんな意気込みが舞台にまだ残って、後に繋がれていくような感じでした。

<以下、若干ネタバレしていますのでご注意ください。大阪公演は終了しましたが、8月に東京で公演があるようです。今度は関東の役者さん中心になるみたい。さらに、大阪より人数増えるのだとか。かなり圧倒されると思いますよ>

大塩平八郎を描いた話。
幕末に見られた尊王や倒幕など、国を改革するとかではなく、あくまで苦しむ民を救うことをポリシーにしていた人らしい。
奉行所の与力を務めながら、同じ奉行を含め多くの汚職や不正事件を暴く。
清廉潔白で固い人。いい加減がモットーなぐらいなところがある大阪の空気には本当は合わなかったのでは。
そして、そんなだから、徐々に腫れものを扱うような感じになってしまったのかもしれない。
奉行所を辞めて、私塾洗心洞を開く

時は天保8年。大飢饉で苦しむ民たちをよそに、奉行や豪商は米を買い占め、大阪には餓死者が溢れる。
養子であり、自分の跡継ぎとなる格之助、塾生たち、そして、何かよく分からないけど巻き込まれている大工や神官などなど。
男たちは、この大塩平八郎の下に決起し、いよいよ、あの大塩平八郎の乱が始まる。
 

大失敗。
奉行所に早朝、忍び込み、大筒を一発。寝起きドッキリさながらの作戦は、奉行を驚かせ、腹を抱えて笑うぐらいに面白くきまった。
幕府側が先回りして、進路を塞ぐために橋を壊したりしてきたが、とんちを効かせて別ルートを見出して対応した。
道中、民たちは、いいね、いいねの嵐で、30人の決起した男たちに加えて、300人を超える民たちが共に戦う決意をしてくれる。
そして、米や金品を隠す豪商の蔵に大筒を一発。
戦利品は、後ほどみんなに平等に分け与えるはずだったが、民たちは我先にと、米や金品を略奪する。大阪だからなんて言い訳はちょっと悲しいが。
向かう先の豪商の蔵でそんな状態になり、これでは賊の手伝いをする精鋭たちみたいになってしまう。
最後には、幕府側の軍に待ち伏せされ、思いっきり、銃撃される。
多くの民を失い、焦って大筒の扱いを誤り、左腕を失った仲間まで。

この有様では、もはや民たち、そして仲間たちの信頼も失ったであろう。もう、誰も付いてきてはくれまい。
乱は失敗に終わった。そう覚悟する、平八郎。
いや、これは失敗ではない。戦略だ。わざと敗走したように見せかけ、幕府側を油断させる。油断して引き上げる軍を狙うことほどたやすいことはない。これは孫子の教えでもある。
優秀なのか、純粋なのか、とにかくそんな賢い部下の一言で、仲間たちは平八郎の凄さに改めて感心し、もう一度戦う決意をする。
平八郎も本当にそんなこと考えていたのか、すっかりその気になって、諸悪の根源である奉行を暗殺することに。

大失敗。
暗殺する隙など微塵もなかったので、何もせずに戻ってきた。
その上、江戸幕府や周辺の藩にちくられたのか、幕府軍の勢力はもう何千人にまで膨れ上がる。
もはやこれまで。死を決意する平八郎。
でも、それでは、本当に全てが終わってしまう。
身を隠して、もう一度、民のために戦って欲しい。
そんな仲間たちの想いを受け、平八郎と格之助は共に、どこかに身を隠すために、逃げることになる。
格之助には妻と、生まれたばかりの子がいたが、もはや会うこともないだろうという決意を持って。
仲間たちは、幕府軍の目をくらますために、散り散りに逃げて、平八郎に全てを託す。
こうして、多くの仲間たちは捕縛され、磔、さらし首の憂き目に。

5日後、平八郎と格之助は、仲間の染物商の美吉屋の下に戻ってくる。
逃げることすらうまくいかない。
一月に渡る潜伏。
平八郎と格之助は、何か気まずい時間を過ごす。
ただ、美吉屋曰く、世はこの一月で徐々に変わってきたらしい。
朝廷が動き出した。そして、平八郎の考えは、多くの寺子屋で教えられるようになったらしい。
失敗続きではあったが、平八郎の想いは、きちんと世の民たちに浸透していたようだ。

ところが、美吉屋の女中が、幕府に二人のことを密告。
また、逃げるしかない。
でも、格之助は思う。今、自分たちがするべきこと。
それは浸透しつつある平八郎の想いを、これからも生かし続けること。
それは、自分たちが生き延びることではない。自分たちの想いさえ、生き残ってくれたらそれで世は変わり、民たちはきっと救われる。
二人は互いに刺し合い、火薬で爆死する。

二人の体は散り散りになり、誰なのかは当然分からない。
美吉屋も決して、二人がここに潜伏していたことは口を割らない。
だから、二人は生き続ける。
その後、各地で、大塩平八郎を名乗る者が現れ、民の幸せと自由のために戦う姿が・・・

といった感じの話。
大塩平八郎なんて、教科書で大掛かりな義賊みたいな感じで乱を起こしたことぐらいしか知らないですからね。
wikiで知らべたら、その生き様は色々な説があるみたいですが、上記したような話も載っていました。

歌と踊りを交えて、熱くておもろい関西で名を馳せる男優さんによって、コミカルに話は進みます。
何と憐れなみたいな感情が先行する、上手くいかなさ。何やっても失敗ばかり。
そんなお話みたいに、何でもかんでも上手くいって、歴史に名を刻むみたいなことにはなりませんよ。 上手くいかないから、みんな必死なんです。馬鹿みたいに一生懸命なんです。 でも、それが出来るのは、自分の志があり、それが自分ではなく、皆が良くあれと願うものだから。
そんな男たちの生き様が浮かび上がるようでした。

みんなの心が最高潮に達して行動に移すが、失敗してストンとどん底まで落ちる。 でも、また盛り上げて、上を目指す。 また、落ちる。
これを繰り返しながらも、諦めず、どん底の方が楽しく歌ったり踊ったりしながら、上を目指した次の話へと展開する。
この作品のそんな構成自体が、この男たちの生き方を明確に表しているようです。

何をなし得たかったのか。
ゴールが何かをなし得た自分の誇らしい姿ではなく、何かを成すという目的そのもの。
だから、その同じ想いを抱いた人が、最終的に何かをなし得てくれればいい。
そんな自分の想いを信頼し、誇りを持ち、真摯に向き合って行動する。そこに、輝く未来がいつの日か訪れる祈りを込めて。
だいぶ、お馬鹿さんな男たちばかりでしたが、そんな真剣に自分を、他人を、今を、未来を想える素敵な人たちの姿を見たような気がします。

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